バリア型クローディン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 08:33 UTC 版)
クローディン5 血液脳関門は脳を守るバリアであり脳実質を囲む毛細血管内皮細胞のタイトジャンクションが重要な役割を担う。脳血管内皮細胞にはクローディン5の発現が特に多い。クローディン5以外にはクローディン12などの発現がみられる。クローディン5のノックアウトマウス(ホモ接合体)は生後1日以内で致死となる。電子顕微鏡で形態評価を行うとクローディン5のノックアウトマウスにもタイトジャンクションストランド形成が確認され、脳血管のネットワークや組織構築は維持された。しかし小分子のトレーサーの通過は正常型マウスと大きく異なった。正常マウスは分子量443D、742D、1900Dのいずれも通過しなかった。しかしクローディン5ノックアウトマウスでは分子量443D、742Dのトレーサーは通過した。クローディン5のノックアウトマウス(ホモ接合体)の血液脳関門は分子量およそ800Dまでは通過するがそれより大きな分子は透過しない分子篩のような作用をしていると考えられた。クローディン5のノックアウトを行うと小分子の透過性のみ亢進するため、クローディン5の制御によって小分子の薬物輸送や水の透過性制御による脳浮腫の治療などが行える可能性がある。 Cambellらはマウスにクローディン5を標的とするsiRNAを全身投与し一時的にin vivoでクローディン5の発現を抑制してBBBの透過性を上げることに成功している。このノックダウン効果は1週間未満で終息する。クローディン5とオクルディンを標的とするsiRNAをマウスに共投与し、脳微小血管内皮細胞で両者をノックダウンすると約3~5kDa程度の分子が血液脳関門を通過する報告がある。一方、脳微小血管内皮にクローディン5を薬剤誘導性にノックダウンできるマウスを作成し、成熟マウスでクローディン5の持続的なノックダウンを行った場合、2~6週間以内にマウスが統合失調症様の症状を示し死亡する。恒常的に1kDa以下の低分子が脳内に流入し続けると脳内環境が破綻し致命的な脳内炎症が生じることが示唆される。またクローディン5の変異は統合失調症と関連している。 クローディン7と大腸炎 クローディン7の腸管上皮細胞特異的ノックアウトマウスは大腸炎のモデルマウスである。 クローディン18と胃炎 クローディン18はプロトンバリアを構成すると考えられている。クローディン18のノックアウトマウス(ホモ接合体)は胃の壁細胞が成熟し胃酸分泌をはじめる生後4日目から胃炎の症状がみられる。同時に壁細胞やその分化した主細胞の減少がみられる。
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