傍腫瘍性免疫性小脳失調症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/07 14:33 UTC 版)
「自己免疫性小脳失調症」の記事における「傍腫瘍性免疫性小脳失調症」の解説
詳細は「傍腫瘍性神経症候群」を参照 悪性腫瘍の0.2%に小脳症状が出現することが知られている。その歴史は1934年のGreenfieldの乳癌と肺癌を伴う「亜急性小脳変性症」の記載にさかのぼることができる。多くは亜急性に小脳性運動失調が出現し、数週から数ヶ月で進行し、徐々に小脳の萎縮を示す。小脳性運動失調が出現した時には悪性腫瘍を認めず、約1年以内に悪性腫瘍が発見されることが多い。その原因については「遠隔効果」という表現で様々な可能性が議論されてきたが1980年代以降は腫瘍と神経細胞の共通抗原の関係が注目されるようになった。1983年にはGreenleeとBrashearが卵巣腫瘍を伴う小脳失調患者において、小脳プルキンエ細胞の細胞質と反応し、さらに神経組織免疫ブロットで58kDaと34kDaに反応バンドが生じる抗体、すなわち抗Yo抗体を報告した。これ以降、免疫組織化学法の免疫ブロット法用いて様々な抗体が見出された。2004年にヨーロッパ神経学会ではこれらの抗体の生理を行いwell characterized onconeural antibodyというものが定義された。well characterized onconeural antibodyとは免疫組織化学で患者髄液・血清の染色パターンとリコンビナント蛋白を抗原とする染色パターンが同一で特異性があること、腫瘍に関連して多数の報告があること、抗体に関連して特徴的な神経症状を発症すること、腫瘍のない症例での陽性率も知られていることの5つの条件を満たす抗体である。これに属する亜急性小脳変性症の抗体は抗Yo抗体、抗Ri抗体、抗Hu抗体、抗Ma2抗体、抗CRMP-5抗体である。ヨーロッパ神経学会のガイドラインでは亜急性小脳変性症は傍腫瘍性神経症候群のclassical syndromeとして位置づけられている。したがって亜急性に小脳症状を示しかつ小脳に萎縮を示した場合は、腫瘍を発見した場合(抗神経抗体の有無を問わず)に診断される。腫瘍が発見されなかった場合でもwell characterized onconeural antibodyが認められれば診断は確定される。予後は悪性腫瘍合併のため不良のことが多い。早期の腫瘍の除去と免疫療法を行う。しかし抗原が細胞内に存在する場合は免疫療法に抵抗性の場合が多い。
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