付随した問題
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退職金返納問題 田母神は退職となったものの、懲戒処分ではなかったため退職金は満額支給された。与野党やマスコミから退職金の支払いに関しては与野党から疑問の声が出ており、浜田防衛大臣は「自主返納を求める」とした。 しかし田母神は2008年11月11日の参議院外交防衛委員会での答弁の中で、退職金6000万円を返納する意志は無いと述べた。佐藤正久も自身のブログ(2008年11月11日付「国防部会、田母神論文事案で紛糾す」)で田母神のこの対応を支持している。 このため制度の不備が明らかになり、政府は退職金返納基準を懲戒免職相当に拡大することを盛り込んだ国家公務員退職手当法改正案を2009年度の通常国会で提出する意向を示した。 アパグループと田母神の癒着疑惑 懸賞主催者であるアパグループ代表・元谷外志雄と田母神は非常に親密な間柄であることが明るみに出ており、適切な関係であったのか、との疑惑が浮上している。田母神は「(主催者側から)資金提供を受けたことは無い」としているが、憲法学者の水島朝穂は前述の『東京新聞』のなかで「(極めて質の低い論文で)三百万円もの賞金をもらうのは資金援助に近い」と批判している。また、元谷の著書『報道されない近現代史』(産経新聞出版)と、田母神論文は内容に共通点が多数あるとの指摘もある(、31頁)。 2008年11月11日には民主党の要請により田母神は参考人として参議院外交防衛委員会に招致された。この委員会で2007年8月21日に元谷をF15に航空幕僚長であった田母神が許可を出して体験搭乗させていたこと、統合幕僚学校長当時の2003年、科目「国家観・歴史観」を新設し、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)の関係者である高森明勅・福地惇両名を講師に招いていたことが明らかになった 。 また懸賞の審査にあたっても、公式には覆面の審査と称して元谷は自身が採点に加わったことも公表していなかったが、アパグループが事前に論文を選出するという手続き上、審査メンバーでは唯一事前に田母神の論文と知りうる立場であり、「(8月に)論文が届いてまもなく田母神という名前に気づいた」「航空幕僚長だったのでびっくりした」と田母神の原稿を知っていたことを審査委員の花岡に語っている。 元谷は1作品に限って付けられる最高得点を田母神論文に付け、大学生の論文を含む3作品が同点で並んだ際は田母神論文を推して「学生には賞金30万円で十分」という趣旨の発言をして最優秀賞の選考から外し、他の審査委員も了承した。12月8日、東京都内であった表彰式の記者会見で元谷は、審査経過について「どだい民間会社がやる懸賞論文制度だから、私がいいと思った人に賞をあげても何らおかしくない」と語った。 また選考に出席した山本秀一秘書によれば、田母神論文は内容が過激であるとしてにいったん5点満点中「2点」をつけたが、誤ってアパの指示より1作品多い論文に点数を付けていたため、2回目の審査会の席上、点数のない「選外」に変更した。しかし他の委員が最高点をつけたため田母神論文が選出されたという。これに対し委員の一人花岡信昭は、山本秘書は「田母神論文に明らかに点数をつけていた」「この秘書は田母神氏の受賞を最終的に認め、満場一致で決まった」としており、秘書の発言を否定している。 また朝日新聞の取材によると、元谷代表は中山泰秀議員に電話し「あなたの秘書は2点から最低点ではなく、最高点に付け直したんだ。ウソをつくと選挙に落ちる。政治生命を失う」と語ったという。中山議員に審査委員を依頼した理由については「外務政務官だった肩書がほしかったからだ」と語っている。 また自衛隊によれば、現職自衛官が民間主催の懸賞論文で懸賞金を受け取っても問題のない要件として、「公平・公正な審査」が挙げられ、これを欠く場合自衛隊員倫理法等で禁止されている、利害関係者からの贈与等に当たるおそれがあるとされる。しかし最優秀賞を受賞した田母神は「金銭目当てに懸賞に応募したと思われるのは心外だ」として賞金受領は拒否し、賞状のみ受領することを表明した。 防衛省防衛監察本部は2009年11月11日に、「真の近現代史観」懸賞論文に航空自衛官97人が応募していた問題に対し「航空自衛隊が組織的に一民間企業の活動に協力したと見られても仕方なく、行政の中立20・公正性の観点で慎重に検討しておらず適切ではない」「航空幕僚監部から数多くの部隊に懸賞論文への応募を促し、第6航空団や航空救難団では組織として、あるいは職務命令により応募させたと考えられるものもある」との監察結果を公表した。 なお、田母神は2009年8月6日に広島市で日本会議の主催で開催された講演の締めで『国民が保守の言論を求めていることがわかってきました。保守の言論は左翼の言論に圧倒されないようにしなければなりません。そのためにも産経新聞と「正論」と「Will」を買って、アパホテルに泊まりチャンネル桜を見てください』と、現在もアパグループと懇意にしていることを公言している。 幹部学校誌問題 田母神が航空自衛隊幹部学校幹部会誌『鵬友』2007年5月号に、今回の論文と同趣旨の意見を発表した時は注意されなかったことについて、防衛省の中の基準が非常に曖昧であることが参議院外交防衛委員会で指摘された。浜田靖一防衛大臣は基準が明確でないことを認め、ダブルスタンダードのないようにしていきたいと答弁した。 空自の懸賞論文大量投稿問題 この懸賞には田母神以外にも複数の現職自衛官が応募している事が判明している。応募総数235人のうち97人が航空自衛官であった。そのうち田母神がかつて赴任し、また主催者が友の会会長を務める第6航空団から62人が応募していた。その背景には航空幕僚監部教育課長が5月20日に全部隊に懸賞論文の応募要領をファクスしたうえ、6月にも同人事教育部長が主要部隊に投稿を促す趣旨の手紙を郵送したことがある。そのため防衛大臣直属の監察本部は、これらの経緯や前空幕長からの指示がなかったかどうかを調査するとしている。なお、入選した13人のうち自衛隊員は田母神だけであったため、自衛隊内部では「最初から出来レースではなかったか?」という疑問の声がある。 自衛官個人の癒着調査 民主党は防衛省に対してアパグループから利益供与を受けている者がいないか、25万人の自衛隊員を対象に調査を行う事を求めた。調査対象は「隊員個人でアパのマンションに住んでいる者の有無」、「部隊によるあっせんの有無」、「アパホテルのメンバーズカードについて、あらかじめポイントが付与されたカードを受け取った者の有無」「アパグループからキャッシュバックを受け取った者の有無」「福利厚生目的以外でアパホテルを利用する際、無料宿泊券や割引券等を受領した者の有無」となっている。 防衛省は隊員の任意の上で自衛隊員、原則としてすべての隊員を対象として聞き取り調査を行っているが、2008年12月12日時点でアパグループから供与を受けた隊員は発見されていない。
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