七段目:長町裏とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 七段目:長町裏の意味・解説 

七段目:長町裏(通称:泥場)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 13:56 UTC 版)

夏祭浪花鑑」の記事における「七段目:長町裏(通称泥場)」の解説

堺筋東側にある長町裏。団七駕籠追いつき義平次をなじるが、「おれはお前の愛想尽かし待っていたのじゃ」と反省の色もない。団七とっさに石を懐に入れ、「親父どん、友達ちゅうのはええもんでんなあ。わしが入牢中に頼母子講三十集めてくれましてな。今、ここにござりますねん」と嘘を言う。義平次は金を貰えると聞いて態度一変させ駕籠返すが、「アニよ、その金は?」「さあ、その金は…」「その金は?」「…その金、ここにはござりませぬわい」と金子に見せかけた石を出す。怒った平次団七打ち据え、「ようもようも、この仏のような親をだましくさったなあ」とついには団七雪駄で額を打ち傷負わせる。「ああ痛タ…おやっさん〜、何ぼ何でもこないにドクショウに打たいでもええやろが」とぼやきながら団七は額に手を当て、血がついていてびっくり。「こりゃこれ男の生き面を…」と憤る団七打ったはたいた打ったどうしたなんとした」とにらみ付ける平次。思わず刀に手をかける団七。「何じゃい、何じゃい、われはわしを切りさらすのか」「あ、いやおやっさんさようなことができまっかいな…」舅といえば親も同然我慢団七我慢重ねる。義平次は図に乗り、「これよく聞け、舅は親じゃぞよ、親を切ればな、一寸切れば一尺竹鋸引き回し三寸切れば三尺高い木の空で、逆磔じゃぞよ、さあ切れ、これで切れ」と刀をつかんで挑発する。「おやっさん、やめとくんなはれ、危ないがな」「さあ、殺せ殺しさらせ」と言い合ううち、ついには刀を取り合う揉みあいとなる。 刀の鞘が走って団七は義平次肩先を斬ってしまう。「うわあ、切りやがった、親ごろし〜」「親父どん、何いうんじゃい、ええ加減にだだけさんすな」と義平次の口を押さえたときに、団七血糊気づきもはやこれまでと、だんじり囃子聞こえる中、義平次惨殺する屍骸を池に捨て井戸水身体洗った後「悪い人でも舅は親、親父どん、堪忍してくだんせ」とだんじり群集まぎれて去っていく。 見どころ 凄惨な殺人劇だが、暗い舞台祭りだんじり灯り対比鮮やかな刺青真紅下帯の色、本水、本泥の使用など夏の季節感見事な色彩彩られ名場面で、様々な美し殺陣見得は、この狂言一番の見せ場でもある。九代目團十郎刺青入れない演出取っていた。 団七殺人に至るまでの描写丁寧に演じられる団七侠客ぶっていても所詮しがない行商人であり、しかも自分拾ってくれた恩人愛妻の父である義平次への敬意もあり、何とかしてうまく収めようとする苦心演技眼目である。特に、心ならずも嘘をついた事が発覚した時、「この金ここにはござりませぬ。」と手拭い包んだ石を出し手拭いを頭にかぶって縮こまる上方演出が、団七切羽詰まった心理をうまく表している。 舞台前の切り穴に泥を張った泥舟」が池の役割となる。義平次はここに飛び込み団七にからみ見得をしたりするので「泥場」と呼ばれる二代目延若は立ち回りには細かな演出行い浴衣脱いでかける竹垣位置まで指定したが、全く不自然さがなく、十一代目仁左衛門は「うまいなあ。」と何度も感嘆するほどであった。幕が終わると、義平次役の役者全身泥だらけで、洗い落とすのに一苦労する。 義平次は、欲に目がくらん醜悪な老人である。いかに生々しく憎くやるかで、団七引き立ち観客団七苦渋と殺人に至る経過理解できる戦前六代目大谷友右衛門中村魁車近年では三代目實川延若四代目淺尾奥山中村源左衛門四代目市川段四郎など腕のいい役者印象的だった最近は十八代目中村勘三郎が「平成中村座」でつとめた時の笹野高史好評だった。この場面で忠臣蔵三段目喧嘩場(刃傷)」の気持ちやることという口伝がある。二代目實川延若団七は、義平次との口論上下眺めて「これ、何もおまへんで。何もないさかいに……」との捨て台詞吐きつつも周囲気を遣うという演出だったが、その呼吸絶品だった。文楽では人形遣い初代吉田玉男が義平次憎々しくやればやるほど団七引き立つという理由で、義平次役を好んで演じていた。 幕切れは、祭囃子だんじり登場させ、団七一人の腰から手拭い抜き取ったのを頬被りして、みんなが去った後、「ちょうさや。ようさ」と囃子言葉震えながら言って引っ込む形が普通だが、二代目實川延若は、引っ込みの際、若い者不審そうに義平次沈んだ池を覗き込むのを、団七が「ちょうさや。ようさ」と囃子言葉遮り二人で踊りながら花道を入る演出だった。これは平成18年2006年7月大阪松竹座において、四代目坂田藤十郎復活させた。 なお原作では、徳兵衛通りかかり、団七雪駄をひらうところで幕となっていた。義平次徳兵衛が二役早替わり演出もあるが、これは無残な死に方をした役の俳優が、幕切れ美しい姿で出る歌舞伎特有の演出である。

※この「七段目:長町裏(通称:泥場)」の解説は、「夏祭浪花鑑」の解説の一部です。
「七段目:長町裏(通称:泥場)」を含む「夏祭浪花鑑」の記事については、「夏祭浪花鑑」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「七段目:長町裏」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「七段目:長町裏」の関連用語

七段目:長町裏のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



七段目:長町裏のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの夏祭浪花鑑 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS