ワインの仕込み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 02:49 UTC 版)
次いで、果汁をタンクに入れて発酵させる。これらの発酵タンクは、オーク製、エポキシ樹脂でコーティングされたセメント、ステンレス鋼またはエナメル鋼、またはエポキシ樹脂といったタイプがある。大容積のタンクの場合、一般に温度を赤ワインよりやや低い約18℃に制御する必要がある。芳香成分(アルコールの酢酸エステルおよび脂肪酸のエチルエステル)の大部分は、18℃以下に制御された果汁の上層部で発酵中に酵母によって合成される。しかしながら、果汁が澄んでいることや低温は発酵を遅らせる要因でもある。酵母にとって過酷な条件での醸造のため、十分に吟味した酵母を選択、添加することは重要である。対照的に、一部の生産者は有機栽培またはバイオダイナミック農法でブドウを栽培しており、澱成分が酵母に有害な合成化学物質を含まない良質のものであるため、それらをワイン中に含まれたままにしておくことがある。ムストの濁りは、酵母に栄養分を与え、小さなタンクや樽での発酵に好ましい影響を与えるため、低温に耐える必要はなくなる。 発酵はブドウに付着している野生酵母の働きによって自然に始まる。醸造家は、安定した品質のワインを得るためには市販の乾燥酵母を使う。辛口白ワインの場合、糖類がなくなるまで発酵を続ける。ワインは通常、澱を取り除くためにデカントされる。発酵が樽で行われる場合、温度はしばしば20℃を超え、時には25℃を超えることさえある。 発酵終了後のワインに対し、マロラクティック発酵 (FML)を行うこともある。この2回目の発酵では、2つのカルボキシル基を持つリンゴ酸を脱酸し、乳酸に変換する。この操作はワインの鋭い酸味を低減させる効果があるが、必ずしも望ましいわけではなく、いつも実施される訳ではない。温暖な地域では、をすっきりした香りのある生き生きとし爽やかなワインにするため、酸味は慎重に保持される。ブドウの発酵中に、オーク樽熟成によりワインを口に含んだ時の丸みとボリューム感は増加するが、その分ブドウ品種固有の香りは減少する。シャンパンなどでは、マロラクティック発酵により微生物学的安定性が向上する。 「マロラクティック発酵」も参照 ヴァン・ドゥー・ナチュレル(甘口の酒精強化ワイン)の場合、発酵は、糖類の一部が残った状態で止められる。これはミューテージ(英語版)(酒精強化)と呼ばれる。発酵は、二酸化硫黄 (SO2)によるワインの殺菌、急速冷却により酵母の働きを止める、非常に細かいメッシュフィルターで酵母を濾過する、またはこれらのいくつかの方法の組み合わせることで停止することができる。発酵で得られたアルコールと残留糖類との最適なバランスをとることができる酒精強化のタイミングを決める大まかな目安は、アルコール度数が10%を超えるあたりで残りの糖類をアルコール発酵させずに残すことである。より甘いデザートワインでは、発酵は過剰な糖類とアルコールによって自発的に停止する。というのも、アルコールは酵母にとっては老廃物であり、大量にあれば毒であるからである。甘口ワインの場合、ワインのアルコール度数が上がることそれ自体が、発酵を止めるのである。マロラクティック発酵は甘口ワインについては行われないが、これは添加した乳酸菌が優先的に糖類を消費してしまい、甘さとともに酸味が強いワインになってしまうからである。加えて、ワイン中の酸と糖類のバランスにより、ワインにめりはりが付く。 「還元」または「技術」と呼ばれるワイン製造技術が開発されている。オーストラリアやニュージーランドでは非常に流行っているが、この技術では非常に芳香の強い白ワインを得ようとしており、ソーヴィニヨン・ブランB、コロンバードB、リースリングBなどの香り豊かな品種では非常に興味深い結果につながるが、シャルドネBなどの品種ではさほど魅力的ではない。この方法では、醸造のすべての段階でムストやワインの予期せぬ酸化が制限される。二酸化炭素 (CO2)のような不活性ガスによりブドウを空気中の酸素から隔離し、冷却によりムスト中の酸化酵素の作用を部分的に阻害する。ブドウ中の天然酵素であるチロシナーゼと、灰色カビ由来の酵素であるラッカーゼは、酸化作用が非常に強い。ラッカーゼはブドウを選別することで排除することができる。また別の技術として、収穫からプレスの時間を短縮することによりワイン中のポリフェノールを少量に抑えることで、黄色くならず、非常に軽いワインを作る手法もある。
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