ヨルムンガンド
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ヨルムンガンド[1](古ノルド語: Jörmungandr)は、北欧神話に登場する毒を持つ大蛇の幻獣。その名は「大いなるガンド(精霊)」[2]を意味する。ロキが巨人アングルボザとの間にもうけた[3]、またはその心臓を食べて産んだ3体(フェンリル・ヨルムンガンド・ヘル)のうちの1体。日本語訳では、ユルムンガンド、イオルムンガンドル[4]などがみられる。他の呼称としては、ミドガルズオルム(古ノルド語: Miðgarðsormur。綴りは他にMidgardsormrも)、ミズガルズの大蛇[5]、ミッドガルド大蛇[6]、ミッドガルド蛇[7]、世界蛇[8]などがある。
解説
『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』第34章によると、ヨルムンガンドら子供達が、いずれ神々の脅威になることを予見した死神オーディンが、ヨトゥンヘイムで育てられていたヨルムンガンドを連れてこさせ、ミズガルズの海に捨てた。しかし、ヨルムンガンドは海の底に横たわったまま、ミズガルズを取り巻き、さらに自分の尾をくわえるほど巨大な姿に成長した[9]。
『古エッダ』の『ヒュミルの歌』第22-24節[10]および『ギュルヴィたぶらかし』第48章[11]の伝えるところでは、雷神トールが巨人のヒュミルとともに、船で釣りに出た際にヨルムンガンドを釣り上げ、ミョルニルで殺そうとした。しかし、『ギュルヴィたぶらかし』では、船が沈むことを恐れたヒュミルが、釣り糸を切ってしまったため、海中に逃がしてしまった。『ヒュミルの歌』においても、ヨルムンガンドは頭部に一撃を受けながらも海中に逃れている。
また、『ギュルヴィたぶらかし』第46章で語られる、トールが巨人の王ウートガルザ・ロキの宮殿を訪れた際のエピソードでは、「猫を持ち上げて床から脚を離してみせよ」と言われたトールが猫の胴を高々と持ち上げたものの、床から離すことができなかった。実は猫は、ウートガルザ・ロキの幻術によって猫の姿に見えていたヨルムンガンドであった[12]。
『ギュルヴィたぶらかし』第51章[13]では、ラグナロクが到来するとき、ヨルムンガンドが海から陸に上がり、その際に大量の海水が陸を洗う様子が語られる。また同章[14]および『古エッダ』の『巫女の予言』[15]ではヨルムンガンドとトールの戦いが語られる。トールはミョルニルを3度投げつけ、ヨルムンガンドを殺害するが、ヨルムンガンドはトールに毒を吹き掛けて、トールを殺した。決着は相討ちという形で終わることになる。
脚注

- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』248頁などでみられる表記。
- ^ Tolley 1995, p. 68.
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』248頁。
- ^ 『北欧の神話伝説(II)』(松村武雄編、名著普及会〈世界神話伝説大系30〉、1980年改訂版、ISBN 978-4-89551-280-0)などにみられる表記。
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』268頁などにみられる表記。
- ^ 『アスガルドの秘密 北欧神話冒険紀行』(ヴァルター・ハンゼン著、小林俊明・金井英一訳、東海大学出版会、2004年、ISBN 978-4-486-01640-3)などにみられる表記。
- ^ 『北欧の神話 神々と巨人のたたかい』(山室静著、筑摩書房〈世界の神話 8〉、1982年、ISBN 978-4-480-32908-0)などにみられる表記。
- ^ 『虚空の神々』207頁などにみられる表記。
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』248-249頁。
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』77-78頁。
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』268-269頁。
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』266頁。
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』275頁。
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』276頁。
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』14頁。
参考文献
- V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。
- 健部伸明と怪兵隊『虚空の神々』新紀元社〈Truth in Fantasy 6〉、1990年、ISBN 978-4-915146-24-4。
- Tolley, Clive (1995). “Vǫrðr and Gandr: Helping Spirits in Norse Magic”. Arkiv för Nordisk Filologi 110: 57-75 .
関連項目
ヨルムンガルド
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「戦翼のシグルドリーヴァ」の記事における「ヨルムンガルド」の解説
アラスカのデナリ山を守る巨大なセカンダリー・ピラーで、全身は骨格状で竜のような頭部を持つ。動きは鋭敏であり、米軍潜水艦から発射された核弾頭搭載の巡航ミサイルを防いだ。
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