スリラー小説
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「ジョージェット・ヘイヤー」の記事における「スリラー小説」の解説
1931年、ヘイヤーは最初の歴史小説『征服者」を出版し、実際の歴史的事件に虚構的な記述を与えた。ヘイヤーは征服王ウィリアムの生涯を完全に調べ上げた。実際にウィリアムがイングランドを横切ったルートを旅することまでした。翌年、それまでの歴史ロマンスから劇的に離れて、最初のスリラー小説『闇の中の足跡』を出版した。この小説の出版は、唯一の子供であるリチャード・ジョージ・ルージャーの出産と時を同じくしており、リチャードのことを「最も注目すべき(実に二つとない)作品」と呼んだ。その人生の後半で出版社に『闇の中の足跡』の再版を止めるよう要請し、「この作品は私の息子と同時に出版されたのであり、...私のスリラー小説として最初のもので、摂政の登場人物ならば言ったであろうように私が増加している間に実行された。1人の夫と2人の下品な弟達皆がそれに手を触れて、私はそれを主要作品と主張していない」と言っていた。 その後の数年間、毎年ロマンス小説を1冊、スリラー小説を1冊のペースで出版した。ロマンスの方はかなりの人気が出た。通常115,000部売れたのに対し、スリラー小説の方は16,000部だった。その息子に拠れば、ヘイヤーは「ミステリーを書くことをクロスワードに取り組むようなものと見ていた。直面しなければならない人生の大変な仕事の前に知的な気晴らしをすることだった」と言っていた。ヘイヤーの夫が彼女の創作に大いに関わった。歴史ロマンスの校正刷りを読むことが多く、彼女が見過ごすかもしれない誤りを見出した。スリラー小説では共同執筆者になった。探偵小説の粗筋を提供し、登場人物 "A" と "B"の行動を物語った。その後にヘイヤーが人物と彼らの関係を創作し、粗筋の断片に生命を与えた。当時他の誰かに粗筋を依存するのは難しかった。少なくとも1回は、小説の最終章を書く前に、夫にもう一度殺人がどのように行われたかを説明してくれるよう頼んだことがあった。 その探偵小説は、批評家のアール・F・バーゲニアに拠れば「上流家庭の殺人に特化して」おり、主に、その喜劇、メロドラマ、ロマンスで知られた。喜劇は行動から出てくるのではなく、登場人物の人格や会話から生まれた。これらの小説の大半で、全てそれらが書かれた時期に一致しており、焦点がヒーローに当てられ、ヒロインの役割は小さかった。初期のミステリー小説は壮健なヒーローが登場することが多かった。ヘイヤーの夫が法廷弁護士になる終生の夢を追求し始めると、小説は主役に事務弁護士や法廷弁護士を登場させるようになった。 1935年、ヘイヤーのスリラー小説では、警視のハナサイドと上級法廷弁護士(後に検査官)のヘミングウェイという1組の探偵を登場させるようになった。この2人は、同時代のアガサ・クリスティのエルキュール・ポアロやドロシー・L・セイヤーズのピーター・ウィムジイ卿ほど人気が出ることは無かった。ヘイヤーの作中人物を登場させた小説の1つ、『ストックスでの死』は、1937年にニューヨーク市で『単なる殺人』として劇化された。この劇はミステリーというよりも喜劇に重点が置かれ、公演3晩で終演になった。 批評家のナンシー・ウィンゲイトに拠れば、ヘイヤーの探偵小説は1953年に書かれたものが最後だったが、独創性に欠ける方法、動機、人物であり、それらのうち7冊は動機として遺産相続を使っていた。小説の舞台はいつも、ロンドン、小さな村あるいはホームパーティだった。批評家のエリック・ルートリーはその登場人物のの多くを定型表現だと言った。例えば教育の無い警官、異国風スペインの踊り子、神経症患者の妻がいる教区牧師だった。ある小説では、登場人物の姓がアルファベット順にすらなっており、その順に紹介された。ウィンゲイトに拠れば、ヘイヤーの探偵小説は、同時代のものと同様に、外国人や下層階級に対してはっきりと紳士気取りがあった。中流階級の者達は粗野で愚かであることが多く、女性は信じられないほど実際的であるか判断がまずいかのどちらかであり、意地が悪くなりうるまずい言葉遣いをするのが通常だった。しかしこの紋切り型にも拘わらず、ルートリーはヘイヤーが「当時(1940年直前)の上中流階級英国女性の脆弱で皮肉っぽい会話を再生するには全く驚嘆すべき才能を」持っていたと主張している。ウィンゲイトはさらにヘイヤーのスリラー小説は「その機知と喜劇とともにうまく織りなされた筋」とも言っている。
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