スリラー小説家・扇情小説家として
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「ルイーザ・メイ・オルコット」の記事における「スリラー小説家・扇情小説家として」の解説
オルコットはA・M・バーナード名義や匿名を中心に、外国を舞台にしたような大人の男女のサスペンスあふれる愛憎ドラマや、ロマンチックな愛を説得力を持って書き、また、愛、魔性、狂気、復讐、殺人、麻薬、犯罪、スパイ活動、異なる人種間の結婚、革命、結婚生活における権力闘争など、彼女の少女向け小説からは想像できないようなことが書かれている。道徳的な家庭小説に対し、スリラー小説・扇情小説は、自分の好きなように生きた女性たちが、社会から転落し深い後悔の中死ぬという結末が多く、女性の身勝手な行動を戒める訓話的な面があった。これらは勧善懲悪で、道徳の約束事が保証されたジャンルであり、そこで道徳に縛られない悪人を自由に描くことは、オルコットにとって発散になっていたと考えられている。オルコットは必ずしもジャンルの約束事に従っておらず、『仮面の陰に あるいは女の力』では、悪女とも言えるヒロインが破滅する展開にはなっていない。30代には、これらの作品で家族の生活費を稼いでいた。雑誌連載の仕事を通して、読者が思わず一気読みして、続きが楽しみになるような話を作る技術を身につけていった。 これらの中には、『愛の果ての物語』(当時は出版されず)や『ポーリーンの激情と罰』があり、一部は邦訳されている。彼女のスリラー小説の主人公は、巧妙で執念深い女性がヒロインであることが多く、復讐と情念、暴力と流血の物語が描かれた。意志の強い女性の波乱万丈の物語も書かれた。こうしたヒロインは、コリンズやブラッドン(フェミニストの登場人物も書いている)の本のように、強く、賢く、そして毅然としている。女らしさを自分の利益のために利用することを辞さない強い女性キャラクターを創り出し、その登場人物の多くは、ルールを破り、社会が与えた役割にうまく合致しない人たちだった。オルコットのテーマは、女性の権利や階級的不平等など、当時注目されていた問題に触れることが多かった。彼女の作品の中には、女装した人が登場するものもあった。 当時出版社は女性の作家には男性の作家とは別の役割を期待しており、もし女性として本名でこれらの作品を出版すれば、おそらくオルコットの人間性は疑われたと思われる。センセーショナルな小説全てでオルコット名義が避けられたわけではなく、男性主人公ではなく、情熱的で怒りに満ちた女性が描かれるときに、匿名または筆名を使っていた可能性が指摘されている。 オルコットは最初ジュブナイル小説家として、のちにフェミニズム小説家として扱われたが、平石貴樹によると、そうした特定の切り口から離れ、フェミニスト的側面と政治的反動のバランスも含めた、彼女のスリラー小説全体が「どのような内的動機を抱えていたのか」の綿密な検討作業はまだ十分行われていない。
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