クレジット・エンジニアリング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/02 13:59 UTC 版)
「ストラクチャード・ファイナンス」の記事における「クレジット・エンジニアリング」の解説
クレジット・エンジニアリングはその名の通り信用リスクをコントロールするための技術である。信用リスクという独特のリスクをコントロールするためのに、フィナンシャル・エンジニアリング、リーガル・エンジニアリングが巧妙に組み合わされて独自の領域を形成する信用リスクと金利・為替といった市場リスクとの最大の相違点は、これを客観的に表す指標の存否である。クレジット・エンジニアリングが成立するためには信用リスクの数値化の問題と客観化の問題が解決される必要があった。そしてこれを可能ならしめたものが、ストラクチャード・ファイナンス格付けの発展である。この客観指標を介して信用リスクを操作することが行われるようになり、クレジット・エンジニアリングの現在時点における到達点である。クレジット・エンジニアリングによって、生み出された商品や仕組みとしては、様々な証券化商品、ABCP、DPCのようなストラクチャード・ビークル、保証専業保険会社のようなストラクチャード・カンパニーがあげられる。現在のところ、大半のスキームが信用リスクを記述するツールとして米国の大手格付会社の格付けを使用している点である。この結果、この技術により創造された新たな信用力は、証券市場や、格付けが利用されるその他の市場でのみ有効性をもつようなものにならざるえない。一般的な意味で、信用リスクをコントロールしているわけではないのである。この点については、数値化・客観化の2つの問題を解決する手法がこれ以外に見いだされれば、さらなる展開が期待できる。
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クレジット・エンジニアリング
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「ストラクチャード・ファイナンス」の記事における「クレジット・エンジニアリング」の解説
フィナンシャル・エンジニアリングが市場リスクを操作する技術だとすると、クレジット・エンジニアリングは信用リスクを操作する技術だということができる。信用リスクとは、所与のものであった。格付けシングルAの企業は業績が良くなってはじめてダブルAになるのであって、人為的な技術でダブルAになるのではない。クレジット・エンジニアリングもこのようなことを可能にするわけではない。こうした企業が従来、有利な調達を行う手段としては、良い資産を担保にするということしかなかった。しかし、担保金融は調達する主体の信用リスクから独立ではない。企業が倒産すれば当然に影響を被る。アセット・ファイナンスとしての特徴をもったストラクチャード・ファイナンスにより、調達主体である企業から独立して、その企業が保有する資産の信用力に一義的に依存して資金調達を行うことができるようになった。ここから、信用力をコントロールする技術としてのクレジット・エンジニアリングが始まったのである。クレジット・エンジニアリングが可能となる為には、信用リスクにかかる数値化と客観化の2つの問題が解決される必要がある。証券市場では、格付けという工夫を通じて信用リスクの評価が参加者全員に共有されている。これが流動性の高い証券というものに付与されることによって、取引の対象となり、また、過去の客観的なデータから、付与された格付けのもつ統計的な属性を裏付けることも可能になった。格付けのシンボルの意味するところは、そのシンボルに属している具体的な債券について、不払いということから生じる統計的な確率があらかじめ定義された範囲に属しているということであり、それ以上の意味はない。 クレジット・エンジニアリングを構成する4つの要素 1.倒産隔離の技術 倒産法上の隔離 上記、倒産隔離と同じ。 組織法上の隔離 SPVやストラクチャード・カンパニーは、親会社やスポンサーと資本関係がないことが望ましい。ストラクチャード・ビークルの場合は、事業の独立性を持ち資本関係を組み込まない。ストラクチャード・カンパニーの場合は、親会社から派遣された取締役等に経営や意思決定がなされるのを回避するために工夫をする。 公法上の隔離 国際間取引の証券化では、隔離主体が倒産していないにも関わらず、政府が関与することによってキャッシュフローが止まることがあULTRAMANる(ソブリン・リスク)ソブリン・リスクは、主に国が行う投資や融資などに関するリスクに関して用いられる。このソブリンリスクが高まることで、金融市場における国際的な信用が下がり、国債や政府機関債などのランクの格下げや債務不履行に陥る危険性がある。 2.信用リスク定量化の技術 リスク量の考え方 貸し倒れにかかる信用リスクの計算方法は、「貸し倒れが発生する確率(倒産確率)×貸し倒れによる損害率(1-回収可能率)」となり、次に流動性にかかるリスクの考え方は、今後、期日までに発生するキャッシュの支払いと、受け取りの差を(ネット・キャッシュフロー)を原則として、期限までの毎日計算し、マイナスの支払いとの受け取りの差に必要な金額を表していく。 キャッシュフロー型、 対象資産から生じるキャッシュ・イン・フローの正味現在価値(ネット・プレゼント・ヴァリュー)と最終商品にかかるキャッシュ・アウト・フローの額が当初に一致すれば、対象資産から予定通りのキャッシュフローが生じてくれば、最終商品の不払いが出ることはなく、この場合、必要な信用・流動性補填は延滞と貸し倒れの発生から生じるキャッシュ・イン・フローの不足分を補填できる金額になる。 マーケット・バリュー型 キャッシュフロー型とは反対に、最終商品にかかる将来のキャッシュ・アウト・フローの正味現在価値を超えていることを常時確認することによって、高い信用力を確保しようとすること。独立して、最終商品にかかる金額の支払いをするだけの十分な流動性が確保されているかを確認する必要がある。 アクチュアリアル型 信用リスクを統計的に把握することが可能な資産をアクチュアリアル型といい。資産の数の目安は300程度と言われている。対象資産が属している母集団の過去5年程度の貸し倒れ率や延滞率から、今後の状況を推測して必要な額を計算する。 特定資産型 商業不動産担保貸し付けのように個別の資産の個性が強く、1件当たりの金額も大きいことから統計処理が困難なものを特定資産型という。原則として原資産1件1件の格付け、無い場合は想定格付けを与えて、それぞれの格付けに応じた倒産確率を前提に全体の信用リスクを分析する。 ワーストケース・シナリオ分析 アクチュアリアル型に加えて、大恐慌のような極端に経済状況が悪化する場合を想定して損害の額をカバーできるような仕組み方法。 VaR(バリュー・アット・リスク) マーケット・バリュー型については、デリバティブの資産または負債をほかの資産・負債と同様に評価する必要がある。ところが、デリバティブは貸付債権や売掛債権のような実体資産と異なり、金利・為替やボラティリティ(金融商品価格の予想変動率のこと)の変化によって正味現在価値が大きく変化するため、限界的な金利・為替の動きに対して資産・負債の正味現在価値がどの程度変化をするのかをリスクを組み入れた計算をする必要がある。 3.補填の技術 信用補填(全部保証、一部保証、優先・劣後スキーム、第三者担保、超過担保、自己資本、リスクのセルアウト) 信用補填・流動補填の金額が決まったら、どうやって実際にカバーするかを決める。 流動性補填(バックアップ・ライン、資産からのキャッシュフロー、資産の換価性) 簡単に短期資金を調達確保する流動性を人工的に創造するのは容易ではく、結局、高い流動性がある銀行等からバック・アップしてもらうか、資産からのキャッシュフローを利用するか、資産の換価価値を利用する。 4.仕組み分析の技術 ウィークリンク 直訳すると「弱いほうへ連動する」という意味になる。証券化では対象資産の内容だけではなく、対象資産から生じるキャッシュフローの源泉が何なのか。そして関与するプレイヤーのコミングリングリスク(債券に関するリスクのひとつで、債権を保有していた企業が回収した資産証券化商品のキャッシュフローが、他の資産のものと混同(commingle)されて、一般債券として見なされるリスクのこと)をどのようにカバーするかがポイントになる。 証券化する仕組みの中で、原債券から投資家にいたる資金の流れに関与するすべての機関・企業のなかで、もっとも信用力が弱い機関・企業の格付けが、証券化全体の格付けの上限になってしまう、そのような信用力に劣る部分のことになる。 税務リスク クーポン支払いに源泉徴収税が課せられていない等のリスク 規制リスク 例えば、国際間取引の証券化で対象とした債券が、外国為替管理法上海外に譲渡できない等のリスク
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