20世紀第4半世紀における金融技術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/02 13:59 UTC 版)
「ストラクチャード・ファイナンス」の記事における「20世紀第4半世紀における金融技術」の解説
金融商品や金融にかかるスキームを仕組む技術として、金融技術というものが明確に認識されるようになった。性格上分類するとリーガル・エンジニアリング、フィナンシャル・エンジニアリング、クレジット・エンジニアリングに大きく分けることができる。 リーガル・エンジニアリング リーガル・エンジニアリングは、「技術」ということばの金属的な響きとは裏腹に、主として法律や会計・税務といった制度をうまく金融スキームに活用する技術を主たる要素としている。リスクを回避するための財務制限条項の工夫や制度金融の有効活用、税メリット等、さまざまな大技、小技を駆使して全体のスキームを作り上げる技術をいう。金融スキームである以上、キャッシュフローモデルをスプレッド・シートを用いて構築するというような作業が必要になる。高度な数学の知識が要求されるようなものではなく、むしろ、背後にあるさまざまな約定や税務等を踏まえて、すべての要素を過不足なくモデルに組み込むという実務面での知識・経験や技量が必要なものだということがいえる。 フィナンシャル・エンジニアリング もともと金融工学は、生命保険を中心とした保険数理の世界には古くから存在していたが、このような技術が実務的に銀行や証券の世界に持ち込まれたのは、オプション理論が普及した1980年後半からではないかと思われる。この技術を支える根幹の部分は、高度な確率論・統計学であり、これに現実の市場の動きを結びつける様々な数学的・技術的工夫が組み合わさって金融におけるエンジニアリング、すなわちフィナンシャル・エンジニアリングを形作っている。これによって生み出された具体的な商品の代表が、スワップションに代表されるデリバティブや、このポジションをヘッジするためのダイナミック・ヘッジの理論、さらにこれを金融機関の市場リスクに管理に応用したALM(Asset Liability Management)やVAR(Valu at Risk)に関するモデルだということができる。 クレジット・エンジニアリング クレジット・エンジニアリングはその名の通り信用リスクをコントロールするための技術である。信用リスクという独特のリスクをコントロールするためのに、フィナンシャル・エンジニアリング、リーガル・エンジニアリングが巧妙に組み合わされて独自の領域を形成する信用リスクと金利・為替といった市場リスクとの最大の相違点は、これを客観的に表す指標の存否である。クレジット・エンジニアリングが成立するためには信用リスクの数値化の問題と客観化の問題が解決される必要があった。そしてこれを可能ならしめたものが、ストラクチャード・ファイナンス格付けの発展である。この客観指標を介して信用リスクを操作することが行われるようになり、クレジット・エンジニアリングの現在時点における到達点である。クレジット・エンジニアリングによって、生み出された商品や仕組みとしては、様々な証券化商品、ABCP、DPCのようなストラクチャード・ビークル、保証専業保険会社のようなストラクチャード・カンパニーがあげられる。現在のところ、大半のスキームが信用リスクを記述するツールとして米国の大手格付会社の格付けを使用している点である。この結果、この技術により創造された新たな信用力は、証券市場や、格付けが利用されるその他の市場でのみ有効性をもつようなものにならざるえない。一般的な意味で、信用リスクをコントロールしているわけではないのである。この点については、数値化・客観化の2つの問題を解決する手法がこれ以外に見いだされれば、さらなる展開が期待できる。
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