20世紀:自由主義と新正統主義
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「自由主義神学」の記事における「20世紀:自由主義と新正統主義」の解説
20世紀初頭、シュライエルマッハーの後継者である自由主義は、アドルフ・フォン・ハルナックの著作『キリスト教の本質』を得ていた。 当時の自由主義の基盤には、三つの楽観主義的要素が挙げられる。 一つ目は、宗教や倫理においては、確信をもたらす唯一の源泉は歴史であるとされていた信念があったこと。この信念の上に、自由主義の神学者達は聖書を批判的に解釈し、確固とした歴史的核に到達することを目指した。 二つ目は、経験の上に自分たちの確信を打ち立てる自然科学と同様に、宗教経験を確信の源泉としようとする志向。ただしこの宗教経験には、完全に純粋であること、限りない多様性において捉えなおすことといった条件付けがなされる。さらに、現代の知性がキリスト教の権威・聖書への服従することを軽減し、教義を軽減することへの志向を伴った。 三つ目には、キリスト教は世界の局面を変える事が出来るという確信が挙げられる。これは「社会的キリスト教」とも表現される。ただしこの潮流は社会主義の側につこうとする者も居たものの、マルクス主義とは同盟せず、階級闘争は拒否し、制度の変革・精神の変革を同時に行おうとした。 これらの要素は、文明の進歩に対する楽観主義としても特徴付けられる。しかしながらヨーロッパに大惨禍をもたらした第一次世界大戦は、文明の進歩に対する楽観を打ち砕き、自由主義神学に対するそれまでの楽観も翳りが生じることになった。 元は歴史的核に到達することを試みていたアルベルト・シュヴァイツァーが著した『イエス伝研究史』(1906年)が、歴史を確信の基盤とする方法論の「失敗確認書」のようなものであった事にもみられるように、第一次大戦前にも自由主義への翳りはあった。 しかし第一次大戦において、アドルフ・フォン・ハルナックはヴィルヘルム2世の参戦のメッセージを起草しており、多くの神学者達が(その中には自由主義者のみならず保守派も含まれていたが)93人の知識人の宣言に署名していたことが顧みられ、文明の危機だけでなく、自由主義をはじめとするキリスト教界の危機が、多くの神学者に認識されるようになった。 このような歴史的背景のもと、カール・バルトらによる新正統主義神学の潮流が生じた。 詳細は「新正統主義神学」を参照 自由主義(リベラル)と福音主義の見解の対立は、19世紀から、21世紀初頭の今日に至るまで継続している。
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