ASMR
「ASMR」とは・「ASMR」の意味
ASMRとは、「Autonomous SensoryMeridian Response」の略で、映像や音声によって、脳が抱く心地よい感覚のことである。具体的にどういった現象であるのかは、科学的には解明されていない。映像あるいは音声で、脳がぞわぞわとした感覚を覚えたり、快感を抱いたりすることは、ひと通りASMRとして扱うことができる。そして、ASMRには個人差がある。誰かが快感を覚えるような映像や音声でも、他の人では何も感じないということは珍しくない。ASMRは、視覚的なものと聴覚的なものに分かれる。視覚的なASMRでは、専ら映像が使用される。ただ写真や絵画を見て、脳が心地よさを覚えるのは難しいため、画像だけが使用されることはまずない。ASMRで使用される映像は、非常に幅広い。代表的なものとしては、雑多に並んだ小物をきれいに整列させる映像や、精密な立体パズルを組み立てていく映像などが挙げられる。その他にも、錆びた硬貨や刃物を、光沢が出るまで研磨する映像や、ガラスが破壊されたり、粘土で作られた球体が潰されたりする映像もある。ASMRはあくまでも個人差があり、どういった映像で脳が快感を抱くかは人それぞれである。そのため、ASMR映像のバリエーションはとても豊富である。
聴覚的なASMRも、視覚的なものと同様に、種類が非常に幅広い。屋根に雨が降っている音や、風が吹く音など、自然界の音を収録したものがひとつの例である。また、食材を切ったり、油の中に投入したりする音を使ったASMR音声もある。そして、映像と音声を組み合わせてあるASMR作品も非常に多い。そういった作品は、作品を手掛けるプロから一般人まで、幅広い人が、youtubeを始めとするプラットフォームにアップロードしている。
ASMRは、映像や音声に没入した方が、快感を抱きやすい。ただ、映像の場合、どうしてもディスプレイ越しで見ることになってしまい、没入が困難である。それに対して音声の場合は、没入がしやすい。高性能なイヤホンを使用すれば、まるで耳元でその音声を聞いているような感覚になることができる。そのため、ASMRでは、視覚よりも聴覚が重視されることが多い。youtubeなどにASMRを投稿している、はとむぎなどのクリエイターは、音を重視した作品を数多く手掛けている。そのように、ASMRでは音が重要視される。よって、厳密には視覚でもASMRの体験は可能だが、ASMRといえば音声作品であり、映像は付属品という扱いになることが多い。
ASMRの音声作品の中でも数が多いのは、人の声や吐息を使用したものだ。録音環境さえあれば手軽に作成できるため、数多くの作品がアップロードされている。耳元で異性にささやかれたり、息を吐かれたりする音を聞くと、ASMRの心地よさを感じられるという人は少なくない。youtubeでも、声優など、魅力的な声を持つクリエイターが手掛けた作品が人気の音となっている。ASMRの効果としては、リラックスできることが挙げられる。イギリスの大学で実施された研究では、ASMRの体験をすることで、リラックスしたり、心拍数が下がったりしたといった結果が出ている。そして、実際にリラックスを目的として、就寝時にASMRの音声を聞く人は少なくない。
ただ、ASMR作品が、全ての人にリラックス効果を与えるとは限らない。それどころか、悪影響になってしまう恐れがある。例えば、ASMRの音声作品の中には、咀嚼音を収録したものもある。その音は、人によってはリラックス効果や、脳への良い刺激を与える可能性がある。しかし、人が何かを食べている音に、抵抗感を抱く人は大勢いる。そのような人が、咀嚼音を収録したASMR音声を聞くと、気持ち悪いと感じるだろう。その他にも、何かを破壊している映像や音声は、繊細なメンタルにはダメージを与えかねない。集合体が苦手な人は、小物を整理するASMR映像で、気持ち悪さを感じる恐れがある。
さらに、ASMR自体が合わないことも考えられる。特に音声に関しては、ASMRの快感を得るためには、イヤホンが必須である。そのイヤホンの閉塞感によって、リラックスどころではないという人もいる。したがって、ASMRは万人向けではなく、あくまでも個人がリラックスするためのツールということである。
また、ASMRは、健全な目的で使用されるとは限らない。一部では、性的な快楽を与えることを目的としたASMR作品も存在する。卑猥な言葉を発したり、官能的な言葉遣いをしたりして、聞く人を煽情する形だ。そのような使い方もできてしまうため、ASMRには規制が入ることもある。実際にyoutubeでは、ASMRを悪用しないように、未成年はASMRをメインテーマにした作品を投稿できないようになっている。そして、一部の国や地域では、ASMR自体が、低俗なものとして規制されている。ただ、ASMR自体が間違っているわけでないため、公序良俗に反しない限り、問題視されることはまずない。
「ASMR」の読み方
「ASMR」は、そのまま「エーエスエムアール」と、アルファベット読みをするのが一般的だ。中には「アスマー」や「アズマー」、「エイスマー」や「エイズマー」といった読み方をする場合もある。しかし、そういった読み方は、一般的にはあまり浸透していないため、意味が伝わらない可能性が高い。意味の伝わりやすさを重視するのであれば、「エーエスエムアール」と読んだ方が無難だろう。ただ、ASMRの作品を作っている人を指す「ASMRist」に限っては、「アスマーリスト」以外の読み方はない。「エーエスエムアーリスト」とは読まないので注意が必要である。「ASMR」の熟語・言い回し
ASMR用マイクとは
ASMRの音声を録音するためには、特別なマイクが必要となる。一般的な手持ちマイクやスタンドマイクでも、ASMR音声の録音自体は可能である。しかし、ASMR作品としては、低クオリティの仕上がりになってしまう。高クオリティのASMR作品を作るためには、バイノーラル録音ができるマイクが必要である。
バイノーラル録音とは、実際に人が聞いているかのような音声を作成するための手法である。そのバイノーラル録音では、人の耳の形をしたマイクを使用する。そして、耳の鼓膜に当たる部分に、マイクの収音部が設けられている。つまり、人が音を聞くのと同じ状態で、録音ができる。さらに、左右に収音部があり、それぞれ独立して録音を行う。そうすることで、音の発生源の位置も再現できる。バイノーラル録音用マイクで、右耳の近くで出た音は、イヤホンで聞いた際には、右耳の近くから出ているという認識となる。そうして、よりリアルな音を再現できる形だ。
したがって、没入が重要とされるASMRでは、バイノーラル録音のマイクを使用することがほぼ必須となっている。また、よりクオリティの高いバイノーラル録音をするために、ダミーヘッドマイクが使用されることもある。通常のバイノーラルマイクでは、人の耳をかたどった収音部が左右に取り付けられているだけである。それに対してダミーヘッドマイクは、人の頭部を丸々再現してある。そうすることで、鼻や後頭部などで音が反射する状況も再現でき、よりリアルな録音が可能である。
「ASMR」の語源・由来
「ASMR」は、英語表現である「autonomous sensory meridian response」を略したものである。単語の頭文字を取って、ASMRとなっている。その言葉が生まれたのは、2010年だ。それまで存在は認識されていた、脳が心地よさを覚える現象に、医療系ITエンジニアだったジェニファー・アレンがASMRという名前を付けたとされている。ジェニファー・アレンがASMRのグループやサイトを立ち上げ、世界に広がることとなった。ASMRが日本に入って来た際にも、名前はそのままであった。その理由は、ASMRに該当する日本語が存在しなかったからである。ASMRを直訳すると「自律感覚絶頂反応」となるが、長い上に意味もわかりにくいため、一般的に定着はしていない。エー‐エス‐エム‐アール【ASMR】
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