アナログテレビジョン放送の終焉
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「NTSC」の記事における「アナログテレビジョン放送の終焉」の解説
NTSCカラー放送方式は激しい変革と急速な進化を遂げ続けている電子工業界において50年以上もの長きにわたって第一線にとどまり続け、その間も消費者の厳しい評価に応え続けてきた規格である。しかし放送通信のデジタル化は時代の趨勢であり、特に算術処理により動画データを高圧縮するMPEGを始めとした技術の実用化に伴って衛星放送はもとより地上波でも高精細度デジタル放送への移行が各国で進行中である。 アメリカではATSC(Advanced Television Standards Committee、先進型テレビ標準委員会)による標準方式が策定され、地上波放送を受信し得る13インチ以上のテレビジョン装置は全てこのATSC方式のチューナーを備えるよう義務づけている。地上波アナログ放送は2009年6月12日をもって終了しており、低所得者層向けの移行支援としてデジタル放送をNTSCベースバンド信号に変換する単機能チューナーを購入する際に使用できる40ドル分の割引クーポンを配布していた。 日本においても、電波産業会(ARIB)が規定するISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)方式への移行が予定されている。本来無料放送である民放局の番組にまでスクランブルをかけ、その解除キーであるB-CASカードをチューナーやレコーダーに挿入しないと受信できない煩雑さや件のB-CASカードを独占販売している私企業・株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズが視聴者一人一人の個人情報を把握している危険性、それらを始めとする視聴者および製品購入者にとって不利益となりうる情報がシュリンクラップ契約で覆い隠され周知されていない隠蔽体質など非難も多く実現を危ぶむ声も聞かれたが、2011年7月24日をもって被災3県以外の地上波アナログ放送は停波された。東日本大震災の被災地である岩手県・宮城県・福島県(以下被災3県)では、アナログ放送完全終了が震災の特例法により、2012年3月31日に延期されていた。被災3県以外のテレビ局では、2011年7月1日からはすべての放送時間帯で停波の告知放送に切り替わり、番組放送自体も音声のみの放送となる計画であったが、画面左下に停波告知を常時表示(CM中を除く)し、映像と音声共に7月24日正午まで放送するように変更された。低所得者層への移行支援策として、生活保護世帯および身体障害者世帯などをはじめとする、市町村民税やNHK受信料が全額免除となる世帯への単機能チューナー無料給付制度が開始されている。 またこれに伴って一部の番組で2009年度から段階的にレターボックス(サイズは「レターボックス16:9」が主であるが、NHKの番組によっては「-14:9」「-13:9」もある)での放送に移行していたが、2010年7月5日付の放送開始から全ての番組をデジタルと同様にレターボックス16:9に変更した(一部のコマーシャルは従来と同じ4:3サイズとなるものもあり)。それに先駆けて、一部の新番組(NHKなど)や日本テレビ系列の収録番組(生放送番組を除く)は同年4月からレターボックスサイズでの放送に切り替わっている。被災3県を除く44都道府県では、2011年7月24日正午にアナログ放送は地デジ移行を促す青色単一の画面に変わり番組が終了、25日0時までに被災3県を除く放送局のアナログ放送が停波した。アナログ放送終了が2012年3月31日に延期されていた被災3県については2011年7月25日以降、CM中でもアナログ終了告知テロップの表示を開始し4:3のCMもレターボックス化(上下左右の額縁放送)、2012年3月12日から「アナログ放送終了まであと○○日」と書かれたカウントダウンの表示、2012年3月31日正午にアナログ放送は地デジ移行を促す青色単一の画面に変わり通常の番組が終了、1日0時までに被災3県に於ける放送局のアナログ放送が停波し、日本全国で完全デジタル化が完了した。これで、日本のアナログテレビジョン放送は完全に廃止され、約60年の歴史に幕を閉じた。なお、日本の地上アナログテレビジョン放送で使用されていた周波数領域は今後携帯端末向けマルチメディア放送や地上デジタルラジオ放送、防災・行政無線他に使用される計画となっているほか、中波放送の混信・難聴取の対策として、FM補完中継局(通称・ワイドFM 当初は90-95MHz)に活用されている。 詳細は「2011年問題 (日本のテレビジョン放送)」を参照 世界の多くの地域で変調波によるNTSC信号の放送は終了したが、ベースバンド転送は、単一同軸ケーブルで転送可能でかつ確立した(したがって非常に安価な)技術として、防犯カメラ、車載カメラなどの短距離のSD(標準画質)動画転送手段として今でも広く利用されている。
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