ところてん
「ところてん」とは、海藻を煮溶かして冷やしゼリー状にしたもののことを意味する表現である。
「ところてん」とは・「ところてん」の意味
「ところてん」とは、天草などの紅藻類を煮溶かして寒天質を抽出し、冷やしてゼリー状にしたものを糸状に切った食べ物である。半透明の涼しげな見た目から、夏の食べ物として認知されている。食べ方は、シロップをかけてデザートとして食べたり、食酢をかけてさっぱり食べたりするのが一般的である。地域によって食べ方は異なり、三杯酢や二杯酢、タレなど、色々な楽しみ方がある。ところてんの作り方
ところてんの作り方は、天草を煮溶かして濾した後、冷やして固め細く切るのが一般的である。しかし、近年は天草ではなく、寒天を原料とした「ところてん」も製造されている。天草を原料とする「ところてん」は、不純物も含まれているため少し磯臭いが、寒天を原料とする「ところてん」は不純物が含まれておらずクセのない味である。
「ところてん」の発祥
「ところてん」の発祥は日本で、奈良時代にはすでに食されていたという。ただし、一般庶民の食べ物ではなく、儀式のための食物として扱われていた。また、「ところてん」と呼ばれるようになったのは江戸時代からで、夏の風物詩として庶民に食されるようになったのも江戸時代である。
「ところてん」の栄養価
「ところてん」には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれているため、腸内環境を整えたり、腸の蠕動運動を活発にしたりなどの効能がある。カロリーも低いうえに、水分を吸収すると膨張するため、ダイエットにもぴったりの食べ物である。
ビジネス用語としての「ところてん」
ビジネスにおいては、「ところてん人事」という言葉がある。ところてんが型から押し出されるさまを比喩した言葉で、後ろから押されて進んでいく年功序列型人事という意味である。
「心太(ところてん)」
「ところてん」は漢字では「心太」と書く。なぜ「心太」が「ところてん」と読むのかというと、「ところてん」の原料である天草が、もともと「心太」と呼ばれていたからだという説がある。
「ところてん」の語源・由来
「ところてん」の語源は諸説あるが、「ところてん」の原料である天草が「心太(こころふと)」と呼ばれていたことに由来するという説が有力である。時代とともに「こころふと」が「こころてい」になり、「こころてん」に変化した後、「ところてん」になったとされている。「ところてん」の熟語・言い回し
ところてん方式とは
「ところてん方式」とは、ところてんが押し出されるように後ろから押されて進むことを意味する。物事が順番に進んでいくという意味で、意思とは関係なく物事が進むという意味でも用いられる。
ところてん式とは
「ところてん式」とは、「ところてん方式」と同様に、ところてんが押し出されるように後ろから押されて進むことを意味する。物事が勝手に進んでいく時に用いられるほか、年功序列という意味でも用いられる。
ところ天突きとは
「ところ天突き」とは、「ところてん」を細長く切るための道具である。木箱のふちに金網がついており、「ところてん」を木箱に入れて板がついた突き棒で押し出すと、糸状に切れた「ところてん」になる。
ところてんダイエットとは
「ところてんダイエット」とは、「ところてん」が低カロリーであることを利用したダイエット方法である。やり方はとても簡単で、食事の前に「ところてん」を食べるだけである。「ところてん」は低カロリーであるうえに満腹感もあるため、食事前に食べると食事量を減らすことができる。また、食物繊維が豊富で整腸作用があり、便通も良くなるため老廃物が体内にたまりにくくなる。代謝も活発になり、太りにくい体づくりもできる。
ところ‐てん【心=太/瓊=脂】
ところてん
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/09 16:53 UTC 版)
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ところてん(心太または心天、瓊脂)は、テングサやオゴノリなどの紅藻類をゆでて煮溶かし、発生した寒天質を冷まして固めた食品[1]。それを「天突き」とよばれる専用の器具を用いて、押し出しながら細い糸状(麺状)に切った形態が一般的である。
全体の98 - 99%が水分で、残りの成分のほとんどは多糖類(アガロース)である。3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースとD-ガラクトース、各1分子が結合しアガロビオース1分子を生む。アガロビオースが多数重合した高分子物資が寒天物質である[2]。ゲル状の物体であるが、ゼリーなどとは異なり表面はやや堅く感じられ、独特の口当たりがある。腸内で消化されないため栄養価はほとんどないが、食物繊維として整腸効果がある。
関東以北および中国地方以西では二杯酢あるいは三杯酢をかけた物に和辛子を添えて、関西では黒蜜をかけて単体又は果物などと共に、東海地方では箸一本で、主に三杯酢をかけた物にゴマを添えて食べるのが一般的とされる。また、醤油系のタレなどで食べる地方もある。
夏の食べ物である[1]。北海道、北東北では盆のお供え物として、また夏場のもてなし菓子、間食として自作した。テングサを煮るときにヤマブドウなどすっぱいものを一緒に煮て固めたという[3][4][5]。
ところてんを戸外で凍結乾燥させたものが寒天である。
製法

- テングサを天日に干し、洗浄する。これをテングサの色が白くなるまで数回繰り返す。この後1年程度冷暗所で保管する。
- 大きめの鍋に上記のテングサを入れ、水をテングサがつかる程度まで入れ、沸騰させる。沸騰後は弱火にて1時間程度煮る。
- 布などで濾して、不純物を取り除き、バットなどの容器に移し替える。
- 容器に移し替えた後、3時間程度、自然に放熱させ、固める(冷蔵庫では失敗しやすい)。
- 天突きで突いて(無ければ包丁などで細長く切って)完成。
海藻を煮て濾すとところてん液が得られるが、これが寒天ゾルである[6]。室温で冷却すると寒天ゲルを得る[6]。
歴史
海草を煮たスープを放置したところ偶然にできた産物と考えられ、かなりの歴史があると思われる。海藻を煮て固める手法は南アジアから南洋に広く分布していることから、ルーツはインドネシアなどの南洋と考えられる[7]。テングサ及びトコロテンを指す agar はマレー語が語源である[7]。 中村によると、日本には遣唐使によってもたらされた[7]。 古くは正倉院の書物中に心天と記されていることから奈良時代にはすでにこころてんまたはところてんと呼ばれていたようである。 もともとは「凝海藻」と表記し「こるもは」と読ませた[8][9]。「こる」とは「凝る」すなわち固まるの意味であり、「もは」とは藻葉であり、藻の異称である[10]。 日本の文書に心太の読み方が初めて現れるのは、平安初期の『和名類聚抄』である。以下に引用する:[11]
【大凝菜 本朝式 凝海藻 古留毛波 俗用心太二字、云古古呂布止】 (現代語訳:中国語で「大凝菜」と書き、日本の公式文書では凝海藻と書く。読み方は「こるもは」だが、俗に「心太」の二字を用い、こころふとと読む。)
もともとは万葉仮名四字で古留毛波と書くのが制式だが、その煩雑さが嫌われて心太と書いたものであろう[11]。これが見た目の字面に引っ張られてココロフトと読まれるようになった[11]。 室町時代の歌集にココロフトとココロテイが両方出てくるものが見られ、このことからココロテイはココロフテエから転訛したものである[12]。
儀式としてのところてん
奈良時代、正倉院の木簡に記されている記録では御食国と呼ばれる地域からテングサを宮中に送った記録がある。節料として納められ、当時宮中における節気行事などに使用されていたことがうかがえる。
江戸時代のところてん
江戸時代には庶民の間食として好まれ、砂糖もしくは醤油をかけて食べられた。基本的にところてん売りによって売られた。ところてん売りの天秤棒は透かし格子にすることで涼感を演出した。値段は寛永通宝一文(現在の価格で25~40円)であった。 江戸のところてん売りは口上と曲芸を見せて売る「曲突き」を行うものもあった。曲亭馬琴の「近世流行商人狂哥絵図」には、天秤棒を担いだところてん売りが突き棒を背中に回してところてんを空中高く突き出し下で受け止めて客に出す図が描かれている。[13]
二十番 曲突心太売 サァ突きますぞ突きますぞ、音羽の滝の糸桜、ちらちら落つる星くだり、それ天上まで突き上げて、やんわり受け持ち、滑るは尻餅、しだれ柳にしだれ梅、さすも揃ふてきれぬを賞玩、アイアイ只今あげますあげます[13]
俳句
ところてんに関連する派生語・作品等
派生語
- ところてん式(昇進など)
- ところてんを天突きにより麺状に加工する際、次の塊により前の塊を押し出すことから、席の数などが決まっている場合に、後から入ってきたものに押し出されて、既に在ったものが自然と前へ進む様子を「ところてん式」と表現する。技術用語では「サイズが固定のFIFOの振る舞い」が相当する。
- 用例としては、かつて大相撲で、「大関の数は最大でも五人」(ただし、2012年5月場所、大相撲史上初めて六人の大関が在籍した例がある)という慣例があったことから、大関が五人いる状態で新大関が誕生したら「大関の誰かを横綱へ同時に昇進させないと六大関になってしまうから、(成績は満点とはいえないが)押し出されて新横綱になった」という揶揄の意味で、「ところてん式に横綱・大関同時昇進」といったように使われる。この例の場合は揶揄だが、この語に必ずしもそういった価値判断が含まれるわけではない。
ところてんをモチーフとしたキャラクター
- ところ天の助(ボボボーボ・ボーボボ)
- えらぶくん(ことばのパズル もじぴったん)
関連項目
外部リンク
- ^ a b 中村幸平『"新版 日本料理語源集"』旭屋出版、2004年、478-479頁。ISBN 4-7511-0423-3。""。「""」
- ^ "松橋鐵治郎"『"寒天・ところてん読本"』"社団法人農山漁村文化協会"、2008年、30頁。ISBN 978-4-540-07187-4。
- ^ 「聞き書 北海道の食事」,日本の食生活全集(1),社団法人農山漁村文化協会,p.181-182
- ^ 「聞き書 青森の食事」,日本の食生活全集(2),社団法人農山漁村文化協会,昭和61年8月,p.32
- ^ 「聞き書 秋田の食事」,日本の食生活全集(3),社団法人農山漁村文化協会,p.264-265
- ^ a b "松橋鐵治郎"『"寒天・ところてん読本"』"社団法人農山漁村文化協会"、2008年、38-39頁。ISBN 978-4-540-07187-4。
- ^ a b c "中村弘行"『"寒天"』"法政大学出版局"〈"ものと人間の文化史190"〉、2023年、7頁。
- ^ "清水桂一編"『"たべもの語源辞典"』"東京堂出版"、1980年、168頁。
- ^ 『"日本料理由来辞典"』 "中"、"同朋舎"、190頁。
- ^ "佐伯梅友、馬淵和夫著"『"講談社 古語辞典"』"講談社"、1969年、875頁。
- ^ a b c "中村弘行"『"寒天"』"法政大学出版局"〈"ものと人間の文化史190"〉、2023年、12-13頁。
- ^ "中村弘行"『"寒天"』"法政大学出版局"〈"ものと人間の文化史190"〉、2023年、16-18頁。
- ^ a b 国立国会図書館デジタルコレクション所蔵「近世流行商人狂哥絵図」15コマ、天保六年
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