マゾヒズム マゾヒズムの概要

マゾヒズム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/09 13:56 UTC 版)

マゾヒズム

なお、マゾヒズムという発音・表記はドイツ語英語の混淆したものと推測される。発音は、英語ではマソキズム、ドイツ語(Masochismus)ではマゾヒスムスに近い。

語源

毛皮を着た愛人のファニーにひざまずくマゾッホ

毛皮を着たヴィーナス』(Venus im Pelz)など自伝的な作品で、身体的精神的苦痛を性的快楽と捉える嗜好を表現したオーストリアの作家ザッヘル=マゾッホの名前に由来してこう呼ばれる。1886年に著書「性の心理学」でマゾヒズムの概念を提唱したのは、クラフト=エビングである(当時、マゾッホは存命であった)。性的な倒錯として定義されたが、後に、被虐的な傾向一般をマゾヒズム(Masochism)と言うようになり、性的嗜好のマゾヒズムは、「性的マゾヒズム(Sexual Masochism)」とも言い分けて区別することがある。

マゾヒスト

マゾヒズムの嗜好を持つ人を「マゾヒスト」と呼ぶ。俗語で「マゾ」と呼ぶ(用例「マゾ男」など)が、単に「マゾ」と略すと、マゾヒストとマゾヒズムの両方の意味がある。被虐性淫乱症とも呼ぶが、これは変態性欲の通俗概念などと同様、多分に差別的な呼称である。

ひとりの人間がサディズムとマゾヒズムを合わせ持っている場合はサドマゾヒストと言われる。略として、サドマゾとも言う。

マゾヒズムとは何か

マゾヒズムは個人の自我の心理的な安定機制と深く関係している。これに対し、他者から苦痛や加虐を与えられて単に喜ぶだけの心理はマゾヒズムではないとする考えがある。しかし、性的な状況においてこのような機制が働けば、性的快感や性的興奮に繋がるのであって、それは即ち性的マゾヒズムであり、自虐的な心理傾向を、性的嗜好としてのマゾヒズムと区別する方が寧ろおかしい。このような区別の背景には、マゾヒズムを先天的気質あるいは人格の基底的趨向とする見方があるが、この考えは実証されていない[要出典]

ある種類のマゾヒズムは精神障害として、性的倒錯に規定されている。このことより差別性が生まれることがある。また、世間一般で、マゾヒストは変態だ、異常だという偏見も存在する。しかし、性的嗜好における異常か正常かという問題は難しい(参照:正常と異常性における健康)。

精神障害としてのマゾヒズム

性的マゾヒズム障害
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
精神医学
ICD-10 F65.5
ICD-9-CM 302.83
MeSH D008398
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DSM-5では他者からの身体的、もしくは心理的な苦痛を受けること、もしくはそれを空想することに性的興奮を反復的に感じ、それが臨床的に意味のある苦痛、または、社会的、学業的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている場合性的マゾヒズム障害の診断を付けることができる[1]

心理社会的苦痛を本人が明言せず、かつそれによって個人的な目的の追求に支障がない場合性的マゾヒズム障害の診断を付けることはできない。よって後述のBDSMは本人に心理社会的問題は発生していないので診断基準は満たさない。

窒息性愛を伴うものがあり、死亡事故につながる危険性もあるとされる。

異性装などほかのパラフィリアとの鑑別が必要で、併発も報告されている。

ICD-9では性的マゾヒズムが独立した診断名として存在したが最新のICD-10では、多くの患者はサディズムとマゾヒズム両方に性的興奮を感じるとしてサドマゾヒズムの診断名が用いられる。


  1. ^ 高橋三郎、大野裕、染矢俊幸、神庭重信、尾崎紀夫、三村將、村井佼哉「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」『医学書院』、日本精神神経学会、2014年、 688-690頁。
  2. ^ 松本人志 『松本人志の怒り 赤版』 集英社、2008年。
  3. ^ 企画:安達元一 製作著作:BeeTVホールマン、「ムチで叩いたり縛りあげて欲しい!! と彼女に言ってみた!!」(dTVによる公式動画リンク、再生1分54秒頃)オンナの噂研究所 第156話。2016年5月17日閲覧。
  4. ^ 森下小太郎「『家畜人ヤプー』の覆面作家東京高裁倉田卓次判事」(『諸君!1982年11月号)


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