EVSについて
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「ときめきメモリアル2」の記事における「EVSについて」の解説
EVS(Emotional Voice System、エモーショナルボイスシステム)とは、ヒロインがプレイヤーの入力した主人公の名前をコンピュータの作成した合成音声で呼びかけてくれるシステムである。本作で初めて搭載され、本作以降の『ときめきメモリアル』シリーズにも引き継がれている。 これまで主人公(プレイヤーキャラ)の名前についてはあらかじめ規定の設定を与えて入力できないようにするか、入力できても名前の部分だけ飛ばす(または代名詞に置き換える)形で音声が再生されるかどちらかの方策しか採れない作品が多かった中でこのシステムの搭載が発表されたため本作の目玉のひとつとされていた。 ただし、どのような言葉でも発音されるわけではなく、差別用語や低俗な言葉など放送禁止用語にあたる言葉などは、入力禁止対象語句として受けつけないようになっている。ある程度普遍的な名前では音声合成を行わず、予め用意された音声データを発音するものもあった。構想自体は前作『ときめきメモリアル』の時点で存在していたが、技術的な制約から当時は実現できるようなものではなかった。プロデューサーのメタルユーキの意向で本作に導入されることになったが、参考にできるような先例がなかったため開発は難航した。合成音声技術の使用例としては電話番号案内や航空会社の発券案内が存在していたが、これらは内容を明瞭に伝えることが目的であり「あ・い・う・え・お」のように区切りを入れてかまわないのに対し、娯楽であるゲームでは曖昧でろれつが回らなくてもプレイヤーが呼びかけられたと感じられればよく、方向性がまるで違ったのである。 データ作成には大量の音声が必要があり、EVSで収録全体の半分以上を占めた。基本的な発音だけではなく、言葉をつなぐ中間音を自然に仕上げるため「っぴょ」「っぎゃん」のように無意味な発音も含まれており、それらを一定のスピードやトーンで演技する声優への負担も大きく、30分以上収録を続けられた者はいなかったという。さらにデータ加工の精度はスタッフ個人の感覚に左右されるため人海戦術が通じず、キャラクター1名分の音声を完成させるのに1か月かかった。本作の音響を担当したスタジオフォーマ代表の岩田靖弘は「2001年に宇宙旅行をするとしたら、スペースシャトルで宇宙空間に1分間行くだけ。でも行けただけで嬉しい」という比喩で、EVS技術の高度さと単純に改良ができるものではないということを述べている。 EVSで作成される音声データはヒロインごとに2通りで、好感度の高まりに応じて変化する。作成データはPlayStationのメモリーカードが持つ15ブロックのうち11ブロックを占める事情から、カード1枚につき1人分が限度となっている。また仮に一度に全員の音声を再生するとPlayStation本体のメモリーの大半を消費してしまうので、1回のプレイでEVSを適用できるヒロインは1人だけになっている。 本作単体でEVSデータが収録されていたのは陽ノ下光・麻生華澄の2名のみ。プレイヤーにとっては特定のお気に入りのヒロインの音声があればよく、シナリオやグラフィックを削ってまで全ヒロイン分のデータを収録する必要はないと判断されたためである。他のヒロインのEVSデータについては後日発売されたムック形式の設定資料集『別冊ひびきのウォッチャー』の付録になったアペンドディスクを待たなければならなかった。収録データの対応は以下のようになっている。 Vol.1 2000年2月発売 ISBN 978-4757206823 - 水無月琴子、寿美幸、佐倉楓子 Vol.2 2000年3月発売 ISBN 978-4757207523 - 赤井ほむら、一文字茜、八重花桜梨 Vol.3 2000年5月発売 ISBN 978-4757700413 - 白雪美帆/真帆、伊集院メイ、野咲すみれ Vol.4 2001年4月発売 ISBN 978-4757704336 - (付属ディスクなし) 『ときめきメモリアル2 Substories Memories Ringing On』には、本編で名前を呼ぶ場面がなかった九段下舞佳、前作ヒロインの藤崎詩織・館林見晴のEVSが収録されている。ゲーム中にデータがその場で生成されるため、メモリーカードへの保存は行われない。 次回作『ときめきメモリアル3』や『ときめきメモリアル Girls' Side』ではPlayStation 2へのプラットフォームの移行に伴ってEVS2へと改良され、一度に全キャラクターの音声を再生できるようになった。『ときめきメモリアル4』の音声合成エンジンには、コナミ内部ではなくアルカディア開発の「SpeeCAN」が使用されている。
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