Ballade As-Dur Op.47 CT4とは? わかりやすく解説

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ショパン:バラード第3番 変イ長調

英語表記/番号出版情報
ショパンバラード第3番 変イ長調Ballade As-Dur Op.47 CT4作曲年: 1840-41年  出版年1841年  初版出版地/出版社Schlesinger  献呈先: Pauline de Noailles

作品解説

2008年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 ショパンピアノ曲用いたスタイル観察する方法は幾通りもあるが、抒情的なものと物語的なもの、という分類がひとつ可能だろう前者の代表は《ノクターン》、《マズルカ》であり、後者典型が《バラード》と《スケルツォ》である。
 抒情的な構成において各フレーズや音型は羅列的で、その連結きわめて緩やかであるのに対し物語的な構成では、1曲の中にいわば起承転結感じることができる。なぜ明確なドラマ性が生じるかといえば、まず、和声進行明解で、とりわけドミナントトニック(転から結へ進む部分)の定型がよく守られるからである。また、動機変奏転回反復拡張などの手法を用いて発展することもあり、ヴィーン古典派ソナタのような労作はなされなくとも、複数主題複雑に組み合わされて曲が作られている。
 つまり、《バラード》、《スケルツォ》、《ボレロ》など物語構成を持つ作品では、ダイナミックドラマティックな、始まりから終わり必然をもって突き進むような音楽的時間生み出されるのであり、こうした要素鑑賞上のポイントとなっている。(蛇足ながら抒情的な作品では、わずかずつ変容しながら留まり続け戻り進みそれほど明確でない、いわば音楽的空間中に鑑賞者の耳を遊ばせることになる。)
 さて、では、各4曲が残されている《バラード》および《スケルツォ》の違いはどこにあるのか。
 これらがジャンルとしてショパン創作の中で隣接していることは、音楽見れば何より明らかである。しかも、両ジャンル形式から明確に区別することはほとんどできないように思われる。ひとつには、これがショパン固有のジャンルであるからで、それぞれ由来する思われるジャンル伝統調べて手がかり出てこない。しかし、音楽外形からは区別できなくとも、それぞれの音楽内容、いわば物語の内容はやや異なっている。
スケルツォ》はイタリア語で「冗談」を意味し従来簡明な形式で明るく軽く小規模な曲を指したベートーヴェンメヌエット代えてソナタ第3楽章取り入れた時も、やはり極めて急速でユーモア富んだ性格与えられた。ショパンの《スケルツォ》は、一見するとこうした伝統にまったく反し暗く深刻なうえに大規模である。だが、《バラード》と比べてみると、《スケルツォ》がいかにユーモア内包しているかがよく判る4つの《スケルツォにはいずれも、きわめて急速でレッジェーロ動機がひとつならず登場し随所で「合いの手」を入れている。また、各部で短いサイクル交代する音量コントラスト指定されている。
 こうした手法が《バラード》にはほとんどない。各動機、各音は前後しがらみ囚われており、逸脱許されない沈鬱主題次々と現われ、それらは鬱積し怒濤をなし、ついには破滅的な終末迎える。《スケルツォ》が軽妙な音型や滑稽なまでのコントラストでこの種のストレス解消するのとは、対照的である。
 なお、《バラード》4曲はすべて複合2拍子、《スケルツォ》は3拍子書かれており、これが唯一の外形的な特徴といえなくもない。が、《スケルツォ》は全篇通じてほとんどが2小節で1楽句作るため、やはり2拍子強烈な推進力内包している。


バラード》はショパンピアノ作品初め用いた名称で、直接的には、ポーランド詩人アダム・ミツキェヴィチバラッドインスピレーション得た、といわれている。具体的にどの詩がどの曲に当てはまるのかは諸説あるが、どれも確証得られず、俗説に留まっている。しかし、ショパンがたとえ実際にいずれかの詩をもとに作曲進めたにせよ、これほど豊かな音楽性秘めて結実した作品何かひとつ筋書き当てはめ、聴き手想像力制限することは、作曲家本意ではあるまい
 より広く視野をとるなら、1820年代ワルシャワ界隈ではバラッドなる歌曲流行しており、こうした文学上のジャンルショパン精神生活にはなじみ深いのだった考えられる加えてシューベルトバラードや、パリグランド・オペラ用いられバラード風のアリアなどもショパン大きな感銘与えた。従って、あらゆる体験集約して独自の新ジャンルバラード》が誕生したみるべきだろう。

バラード第3番は、全体に《スケルツォ》に近い性質を持つ。冒頭部ではとりわけ音域替えて反復される楽句、「紡ぎだし」の手法で変容する動機思わぬ音域突如現われる短い動機など、軽やかさと余裕満ちている。
 形式上は、序奏付きロンドである。第52小節からロンド主題が始まる。第1ルプリーズ(第66小節以降)はロンド主題変奏し、第2ルプリーズ(第116小節以降)は華麗なパッセージワークで埋められる第3ルプリーズ(第157小節以降)はやや様相異にし、第1ルプリーズで見出した動機、すなわちロンド主題変奏形に16分音符加え音量徐々に増してゆく。それはロンド主題4回目登場(第194小節)にも影響与える。主題はもはや高音から降り注ぐような軽やかさを失い低音部から這い上がろう繰り返し試みて阻まれる。しかし第213小節でようやく抜け出し冒頭旋律再現されると、華やかな走句に彩られ幕引きとなる




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