長大編成対応車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 12:04 UTC 版)
「国鉄キハ58系気動車」の記事における「長大編成対応車」の解説
国鉄の気動車は、KE53形ジャンパ連結器2基で直流24 V電源による制御と空気圧作動の自動ブレーキを共通装備としていた。このため、長大編成を組むと電圧および空気圧の低下で、先頭運転台から後方車両までの制御の応答性・確実性に問題が生じた。長大編成を頻繁に組む本系列も当初はその例に漏れず、最大11両17エンジンまでに編成を制限されるため問題は深刻であった。 そこで1963年度以降に製造されたグループからは、以下に示す仕様変更を行った。 各車の自動ブレーキA動作弁直近に応答性能が優れる電磁給排弁を付加。 運転台のM23系ブレーキ制御弁も電磁給排弁への指令を可能としたME23B弁とし、運転台付車両はDAE1、運転台のないキロはDAE2電磁自動空気ブレーキに仕様変更。 DAEブレーキ化のために回路制御用KE67形ジャンパ連結器による引き通しを増設。また従来からの制御回路にも中継装置を設置し、引き通し線の電圧降下・制御電流の容量制限・ブレーキ作動時間の遅延に対する改良を実施。 その結果、最大15両23エンジンまで制御可能となった。当初から上記の長大編成対応で製造されたグループは新規の番号区分が行われた。 キハ58 1022 キハ28 2329 キハ58 401 - 799・1000 - 1052 キハ28 301 - 494 キロ28 101 - 204 キロ58 1 - 8 キユ25 1・2 キロ58形・キユ25形は、全車が新造時より長大編成対応であったため基本番台からの区分であり、0・800番台車についても1965年(昭和40年)から1971年(昭和46年)にかけて全車が同仕様に改造された。 そのほか車体面では客用扉下部に明り取り用小窓を新設、1965年(昭和40年)度増備車からキハ2形式は出入台に通風器増設、1966年(昭和41年)度後半増備車からはトイレの窓を小型化・長方形化する設計変更を実施した。 1等車は冷房化の過渡期に製造されたため以下に示す形態にわかれる。 キロ28形 101 - 108 非冷房車。車体構造が強制通風換気方式に対応していないため冷房化に際して屋根上に押込式通風器6基を新設。 109・110 冷房試作車。AU12形分散式冷房装置を搭載し、換気は強制通風方式としたため屋根上通風器が廃止されたが、冷房装置脇にトランジスタ蛍光灯冷却用小形通風孔が設置された。 111 - 138・145・146・153・154 冷房準備工事車。屋根高さは、111 - 138が当初AU12形取付を想定していたため従来車両と同じであるが、145・146・153・154はAU13形取付へ変更した準備工事施工となり、後述する新製冷房車と同じとなった。 139 - 144・147 - 152・155 - 204 新製時からの冷房車で自車給電用として4DQ冷房用発電装置を搭載して落成。 なお冷房関係の改造工事は以下を参照。 冷房化+4DQ電源装置搭載改造 1968年度までに非冷房車・冷房準備工事車に施工 4VK冷房用発電装置換装工事(原番号+2000 1976 - 1982年に施工) 102・103・107・112・122・125・126・128・130・137・139・140・147 - 152・158 - 163・166・167・171・173 - 175・177・182 - 184・186 - 197・201・203・204 キロ58形 山岳部に連続急勾配区間を擁し、都市部では快速線の高速高密度ダイヤで運行する中央東線急行「アルプス」運用では、速度低下対策として編成中の2エンジン搭載車の比率向上が求められたことから、1等車もDMH17Hエンジン2基搭載とした本形式が1963年に8両製造された。 形態的には同時期製造のキロ28 101 - 108をベースにした2エンジン車となる。 非冷房で落成したが、1968年度までに急行冷房化の進展でキロ28同様AU13形を搭載する改造が施工された。しかし、2エンジン車のため4DQ冷房用発電装置の搭載は不可能なことから冷房装置を稼動させるために4VK冷房用発電装置を搭載するキハ28・キロ28の2000番台車もしくはキハ65との編成組成が必要である。 全車松本機関区(→松本運転所→現・松本車両センター)に集中配置されたが、「アルプス」の165系電車化が推進された1973年に6 - 8は長野運転所(現・長野総合車両センター)に転属し、中央西線の急行「きそ」・「ちくま」や大阪 - 新潟間の急行「越後」での運用にも投入された。1975年3月10日のダイヤ改正で「アルプス」運用からの撤退と中央西線の運用が名古屋鉄道管理局に移管されたことから、1 - 4が名古屋機関区(現・名古屋車両区)、5 - 8が美濃太田機関区(現・美濃太田車両区)に転属となり、高山本線・関西本線・紀勢本線の急行列車で運用された。1978年に6 - 8の3両が常磐線荷物列車用のキニ58に改造されたが、1 - 5は1979年に廃車となり形式消滅した。
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