第3巻「幽霊戦闘機(ゴースト・ファイター)」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 07:02 UTC 版)
「戦場ロマン・シリーズ」の記事における「第3巻「幽霊戦闘機(ゴースト・ファイター)」」の解説
初版 1980年1月15日(ISBN 978-4253063845) 幽霊戦闘機 バトル・オブ・ブリテンの最中、イギリス空軍司令部は見慣れぬ戦闘機との交戦報告を受ける。その機体はヨーロッパにはいないはずの零式艦上戦闘機だった。技術交換のため、日本からパイロットの東郷と技師の高田がドイツに来たのである。意気揚々と帰還し、零戦の航続距離の長さを誇る東郷と高田にドイツ空軍のシュナイダーが、「その航続距離の長さ、機動性の高さは、すべてパイロットの安全を犠牲にした重量軽減にある」と指摘する。高田は防弾装備を施すと重量が増えることを東郷に確認するが、東郷は「ベテランは重量増加を腕でカバーするし、新兵は防弾装備で生き延びる可能性が増えれば、そのうちベテランになる」と積極的ではないものの肯定的な反応だった。だが、その東郷が空戦で負傷。幸い軽症なことに安堵する高田に対しシュナイダーは「技術者は気楽でいい」と痛罵する。 翌日、高田と零戦がドイツ空軍基地から消えた。ドーバー海峡で高田の零戦とイギリス空軍機が空中戦をしているというのだ。東郷とシュナイダーがBf109で駆けつけ、零戦を救う。基地に降りた高田は「これで先制の一撃を受けてもだいじょうぶだ」と防弾板設置の技術仕様書を東郷に渡す。「だが、風防に一発食らった。強化ガラスの研究を……」それが、高田の最後の一言だった。 飛ぶ日に… ある漫画家が手に入れた、血のついた航空眼鏡。それは米軍爆撃機の誤爆で妻マルグリットを失ったドイツ航空兵クライマーのものだった。復讐に燃えて夜間空戦を戦い、次々と米軍機を撃墜する彼の眼前に、米航空兵が持っていた女性の写真が張り付く。その容姿がマルグリットと瓜二つなことに愕然としたクライマーは、一瞬の隙を突かれて撃たれ、ついに力尽きて夜空に消えた。そして、航空眼鏡はクライマーの怒りも無念もそれらをこめた戦いの夜も、決して語ることはないのだった。 本作はプレイコミック誌への持ち込み原稿として執筆され、(上記のような経緯で)採用どころか連載まで決定したという経緯を持つ。 砂に棲む鮫 1943年のサハラ砂漠。何が真実なのか疑わしいこの不毛な大砂漠のどこかに、連合軍の秘密補給所「カームのオアシス」があった。そこに派遣されたスパイクは、シャークマウスが描かれたP-40を駆って補給所を守るスタンレーと、彼の宿命のライバル、シュピーゲルとの、真実なのか疑わしい空戦を目撃する。 バーボン・ベア 英空母アイアン・ベアは、ドイツ戦艦ビスマルク追撃の任に着いていた。アイアン・ベアには腕は良いが酔っ払いのソードフィッシュ乗りヨイドレーがいて、そのため「バーボン・ベア」と呼ばれていた。艦長はこれを恥じ、作戦前にヨイドレーを営倉に閉じ込める。ビスマルクの熟練艦長の指揮にイギリス軍は有効な攻撃を加えられずにいた。そこへ営倉を抜け出し、バーボンの小瓶片手にヨイドレーが現れる。「戦艦も女も同じだ。尻に一発くらわせれば、腰が砕ける」と背後から雷撃を行い、自身のソードフィッシュは撃墜されながらもビスマルクの足を停めることに成功する。その後、イギリス海軍の攻撃で、ついにはビスマルクも沈む。海上を漂いながら、副操縦士は「ビスマルクって男の名前ですよ。オカマ掘ったようで……」 大元帥になった男 ある日、アメリカ軍従軍料理人と料理助手は呼び出され、立派な軍服を着せられて輸送機に乗せられる。その輸送機は撃墜され、2人はドイツ軍の捕虜になってしまう。実は料理人、アメリカ軍のある元帥に瓜二つだったのだ。料理人と助手は古城を利用したドイツ軍の補給所に捕虜として軟禁され、尋問を受けるが、何も知らない料理人のこと。兵隊たち個人個人が食べるパンの数は知っていても、戦略などについてはまったく知らない。ドイツ軍は「さすがは元帥、口が堅い」と勘違いしたまま。レジスタンス女性の手引により監禁されている部屋から逃げ出し、古城の中を巡るうちに、古城に秘匿されていた貴腐ワインの伝導パイプを見つける。料理人は、連合軍との戦闘準備で燃料補給を行う戦車隊の燃料パイプに貴腐ワインを流し込んだ。糖度の高いワインを燃料に混ぜることでエンジンを焼き付かせるのだ。目論見通り、戦車隊はしばらくして動けなくなり壊滅。その砲火はさながら夜空に咲く花火のようで、花火にワインに古城という、少々場違いな風流景色となった。 ガラスの牙 ドイツ軍航空偵察兵ヴァウは、かつては少々知られたカメラマンだった。そんなヴァウを元同僚エンゲルは「お前は戦場の地獄絵図を楽しんで撮っている」と非難し、単身マッターホルンの山岳写真を撮りに出かけるが撃墜される。エンゲルの言葉が耳から離れないヴァウは、空軍の命運を賭けた偵察飛行の帰りに山にカメラを向ける。だが、そのカメラをヴァウの頭ごとレジスタンスの狙撃が射抜くのだった。
※この「第3巻「幽霊戦闘機(ゴースト・ファイター)」」の解説は、「戦場ロマン・シリーズ」の解説の一部です。
「第3巻「幽霊戦闘機(ゴースト・ファイター)」」を含む「戦場ロマン・シリーズ」の記事については、「戦場ロマン・シリーズ」の概要を参照ください。
- 第3巻「幽霊戦闘機」のページへのリンク