第3巻: ドリームカントリー
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「サンドマン (ヴァーティゴ)」の記事における「第3巻: ドリームカントリー」の解説
独立した短編4篇からなる。第1話 Calliope にはホラーコミックの作画で名高いケリー・ジョーンズ(英語版)が「ユニバーサル・ホラー風」のアートを提供した。第2話 A Dream of a Thousand Cats は猫が主役となる物語で、引き続きジョーンズが作画を担当した。第3話 A Midsummer Night's Dream(『夏の夜の夢』)はドリームがウィリアム・シェイクスピアに表題の戯曲を書かせたというストーリーで、シリーズ最高傑作と呼ばれることもあり、1991年に世界幻想文学大賞(短編賞)を受賞した。作画を手掛けたチャールズ・ヴェス(英語版)はファンタジーやおとぎ話のジャンルを得意としており、『夏の夜の夢』の戯曲本に挿絵を描いたこともあった。第4話 Façade はシリーズの中でもやや例外的なエピソードで、通常のDCユニバースに所属するヒーローキャラクターにスポットが当てられている。ペンシラーはオリジナル作品『ディスタント・ソイル(英語版)』で知られるコリーン・ドラン(英語版)である。この巻は収録号が少ないため、第1話 Calliope のスクリプトも併せて収録された。 Calliope 作家として行き詰っていたリチャード・マドックは、老齢の作家からギリシアの女神ムーサの一柱であるカリオペを譲り受け、自宅に監禁してレイプすることで霊感を得る。カリオペは三位一体の母神メレテー、ムネーメー、アオイデーを呼び出して救いを求めるが、女神たちにその力はない。一縷の望みとして、かつてカリオペとの間に子をもうけたオネイロス(ドリーム)の名が挙げられ、彼と憎み合う関係になっていたカリオペは絶望する。やがて長年の幽閉から逃れたドリームが救出に現れ、かつての冷厳さを知っていたカリオペを驚かせる。ドリームはマドックに無限のアイディアを与えて狂気に追いやった。 「カリオペ」のプロットは刊行後2–30年経つと非常に一般的なものとなった。ウェブメディア「ストレンジ・ホライズン」は類型的なプロットを列挙する記事の中で「創作者がミューズと出会って霊感を得る。多くはミューズを監禁する」というものを挙げた。作者ニール・ゲイマンはこの記事に言及し、「カリオペ」の執筆以前に同様の物語を読んだ記憶はなく、自作がミームの源流となった可能性があると述べている。 A Dream of a Thousand Cats そのシャム猫は昔、産んだ子猫たちを飼い主に殺された。彼女は苦悶の中で眠りにつき、「夢の猫(ドリーム)」から幻視を授かる。今とは異なる現実において、猫は巨大な体躯を持ち、矮小な人間たちを支配していた。しかし、現実を形作っているのは夢だと説く予見者が人間の中に現れ、夢を通じて猫の世界を人間の世界と入れ替えたのだった。目覚めたシャム猫は伝道の旅を始め、猫たちに説く。ほんの千匹の猫があるべき現実を夢に見たならば、世界はそれに従うだろうと。聞き手の猫の多くは物語をただ楽しんだが、白い子猫は心からそれを信じた。 A Midsummer Night's Dream 1593年、ウィリアム・シェイクスピアの一座はドリームの依頼により新作『夏の夜の夢』の野外公演を行う。地上絵の巨人(英語版)が開いた扉から現れたのは、妖精国から招待された観客たちだった。その中には劇に登場するティターニア、オーベロン、ロビン・グッドフェロー(パック)らもいた。 観衆は劇を大いに楽しみ、パックも賛辞を漏らす。それは実際に起きたことではないが、にもかかわらず現実の真の反映なのだと。パックは自身を演じる役者を眠らせて代わりに舞台に上がる。一方、インド人の取り替え子を演じていたシェイクスピアの息子ハムネット(英語版)はティターニアに魅入られるが、舞台のことしか頭にない父親はそれを見過ごす。 ドリームがシェイクスピアにこの戯曲を依頼したのは、かつて地上に住んでいた妖精たちが物語を豊かにしてくれたことへの礼として、人間の間に彼らの記憶を残そうとしたためだった。終幕が近づき、妖精たちが地上に留まれる時間も尽きていく。しかしパックは去ることを拒み、『夏の夜の夢』の結びの台詞を口にしながら闇の中に消える。ハムネットは早世したことが伝えられる。 シェイクスピアは前巻の短編 Men of Good Fortune でドリームと出会った。シリーズ最終話ではもう一つの戯曲『テンペスト』が題材となる。ロビン・グッドフェローは第9巻で再登場する。 Façade レイニーはかつてスーパーヒーローだったが、体の化学組成を変える能力が制御できなくなって引退し、異様な姿を恥じて引きこもっている。旧友から食事に誘われたレイニーは、醜い素顔を隠すため鉱物質の顔面を作り出して出かけるが、それが剥がれ落ちてしまい、アパートに逃げ帰る。通りがかったデスは古い仮面を捨てるようレイニーを諭すが、彼女は死を望み、自らの不死身の能力を嘆く。根負けしたデスは明かす。宿敵アペプに対抗するため、レイニーを含む多くの人間に変身の力を授けた太陽神ラーは、実際には数千年前にすでに戦いを終えていた。しかし神話は「夢の国」に残り、人々を縛り続けるのだという。デスの勧めに従い、レイニーは沈みゆく太陽に向けて解放を願う。
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