眠る女
『いばら姫』(グリム)KHM50 いばら姫の百年の眠りがちょうど終わろうとする時、1人の王子が森へやって来る。王子が姫に接吻して、姫は目を見開く〔*『眠れる森の美女』(ペロー)では、接吻なしで王女は目覚める〕。
『黄金のろば』(アプレイウス)第6巻 冥王の妃プロセルピナ(ペルセポネ)の美を封じこめた箱を、プシュケが好奇心から開く。幽冥界の眠りが立ちのぼり、プシュケは倒れる。夫クピード(エロス)が駆けつけ、眠りを箱に封じ、背負った矢の尖端でプシュケを呼び醒ます。
『シグルドリーヴァの歌』(エッダ) オーディンにいばらで刺された乙女(ワルキューレのシグルドリーヴァ)が、鎧兜で武装した姿のまま山の上に眠り、そのまわりには火が燃えさかる。シグルズが横たわる乙女の所へ行き、彼女の鎧兜をはずす。乙女は目覚め、シグルズに名を問う〔*『ヴォルスンガ・サガ』21の類話では、眠るブリュンヒルドをシグルズが目覚めさせる〕。
『ニーベルングの指環』(ワーグナー)「ジークフリート」 ヴォータンは、娘ブリュンヒルデを岩山に眠らせて炎で包み、「真の勇者だけが彼女を目覚めさせる」と宣言する。ジークフリートが炎を乗り越えてブリュンヒルデに接吻し、目覚めさせて、2人は愛を誓い合う〔*しかし悪人ハーゲンのたくらみにより、2人の仲は裂かれる〕。
*毒りんごを食べて仮死状態になる→〔仮死〕5の『白雪姫』(グリム)KHM53。
*象牙で造った乙女の像→〔像〕1aの『変身物語』(オヴィディウス)巻10。
*魔法使いに眠らされる花嫁→〔指輪〕1cの『ルスランとリュドミラ』(グリンカ)。
『ロミオとジュリエット』(シェイクスピア)第5幕 ロミオはジュリエットの死の報を聞き、彼女が仮死状態で横たわる霊廟へ駆けつける。絶望したロミオは毒薬を飲み、ジュリエットに最後の接吻をして息絶える。その直後に、ジュリエットは42時間の眠りから覚める。ジュリエットはロミオの死体を見て事情を察し、彼の持っていた短剣を自らの胸に突きたてて死ぬ。
★3.眠る女を捨てて去る。
『マハーバーラタ』第3巻「森の巻」 ナラ王は賭に負けてすべてを失い、妃ダマヤンティとともに森をさまよう。魔王カリがナラ王の心を乱し、ナラ王は「妃は1人になれば、どこかでまた幸せを見いだすかもしれぬ」と思い、眠るダマヤンティを置き去りにする。目覚めたダマヤンティは夫を捜して森を出、叔母にあたる某国の皇太后に保護される。
★4.眠る女を犯す。
『断崖』(松本清張) 晩秋の北海道、エシキ岬。滝下邦子は投身自殺しようとして死にきれず、近くの町営宿泊センターに一夜の宿を請う。心身ともに疲れ果てた邦子は、暖かい風呂と食事を得て、昏々と眠る。センターの管理人・62歳の谷口彦太郎は、眠る邦子を犯すが、彼女はまったくそれを知らなかった。翌朝、元気を取り戻した邦子は、谷口に礼を述べて、東京へ帰って行った。半年後、邦子から「新婚の夫と一緒に、エシキ岬を再訪したい」との手紙が届く。彼女が訪れる3日前、谷口は良心の呵責にたえかねて自殺した。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第5日第5話 ターリア姫は、亜麻に混じっていたトゲで指を刺して倒れ、森の館に放置された。他国の王が狩りをしに森へやって来て、眠る姫を犯して去る。姫は眠ったまま、男女の双子を産む〔*双子が乳房の代わりに姫の指を吸った時に、ささったトゲが抜けて、姫は目覚める。後、王が森を再訪してターリア姫と双子を発見し、国へ連れ帰る〕→〔人肉食〕4c。
★5.眠る女の醜い姿。
『過去現在因果経』巻2 悉達太子は19歳の2月7日の夜、城内で、妃・耶輸陀羅(やしゅだら)や侍女たちの眠る姿を見る。皆ぐったりとだらしない格好で寝ており、鼻水・涙・涎(よだれ)などを垂らしていた。太子は「美しい肉体と見えるのは表面だけである。淫欲におぼれるのは愚かなことだ」と考え、明け方近くに城を出て、かねて念願の出家を遂げた〔*『今昔物語集』巻1-4では、女たちの寝姿は死体のごとくであり、大小便を垂れ流している者もいた、と記す〕。
寝肥(ねぶとり)(水木しげる『図説日本妖怪大全』) 昔、美女がいたが、寝ると身体が部屋中いっぱいにひろがったようになり、車がとどろくようないびきをかいた。あまりものすごいありさまなので、夫も逃げ出してしまった。「これが世に言う『寝肥』なるものだろう」と、夫は友人に語った。
『眠れる美女』(川端康成) 老人たちが客として通うある家には、全裸の処女たちが薬で眠らされている。性能力を失った老人たちは、ただ処女と添い寝するだけで、処女はけっして目覚めることはない。67歳の江口は処女に添い寝して、過去に関係した女たちを想う〔*江口が4度目にその家に行った後、1人の老人がその家で頓死する。5度目に行った時には、江口の傍らに眠る処女が死んだ〕。
★6b.娘が目覚めたとしても、相手が老人では、娘は逃げ出す。
『真理先生』(武者小路実篤)43~44 60余歳の素人画家・馬鹿一は、ふだん石ばかり描いている。ある時、有名画家・白雲のはからいで、馬鹿一は若いモデル杉子の裸体画を描く。杉子はうたた寝し、馬鹿一はその可憐な姿に、杉子を我が子のように錯覚して、額に接吻しようとする。杉子は驚いて逃げ出す〔*杉子は馬鹿一の謝罪の手紙を読み、白雲に説得されて、ふたたび馬鹿一のモデルになる〕。
『山羊またはろくでなし』(チェーホフ) 18歳ほどの若い娘が、ソファベッドでうたた寝をする。老人が入って来て、娘の手に口づけする。娘は眼を開けて老人を見る。「ああ。公爵様。ごめんなさい。眠ってしまって・・・」。公爵は言う。「今も寝ていて、夢の中にわしがいるのです。あなたは夢にわしを見てるんですよ」。娘は真に受けて眼をつぶる。「なんて私は不幸なの。夢に出て来るのは、いつも山羊かろくでなし・・・」。この独り言に公爵は心くじけて、そっと歩み去る。
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