生物学とライフサイクル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/25 10:15 UTC 版)
「セイヨウミツバチ」の記事における「生物学とライフサイクル」の解説
温帯においては、ミツバチは互いの体を寄せあって冬を生き残る。そして春に備えて冬の後半から女王蜂は産卵を開始する。これは日照時間の変わり目によって引き起こされると考えられている。女王蜂はただ1匹の産卵可能な雌で、他のすべてのミツバチを産む。女王蜂が雄蜂と結婚のための飛行を行うとき、あるいは彼女が新しいコロニーを作るために古いコロニーから晩年に去る場合を除き、女王蜂は滅多に蜂の巣から出ない。女王蜂は各々の卵を働きバチによって作成される六角形のセルに産卵する。およそ1週間後に、幼虫は働きバチによってそのセルに封をされて、蛹のステージが開始する。さらに1週間後、蛹は成虫となって出てくる。 最初の10日間は働きバチ(働きバチはすべて雌)は巣の手入れをして、幼虫に餌を食べさせる。この後に彼女らはセルを築き始める。16日から20日目、働きバチは、より古い働きバチから花蜜と花粉を受け取り、それを保存する。20日後に働きバチは巣の外に出て花蜜の採取などをして残りの命を全うする。真夏の健康的なハチの巣の個体数は、平均で40,000~80,000匹である。 セイヨウミツバチ成虫寿命:女王蜂1-3年(最長8年)、働き蜂・最盛期15-38日、中間期30-60日、越冬期140日、雄蜂21-32日。 ミツバチの巣の幼虫と蛹と、付着している働きバチは、しばしば巣箱の貯蜜枠ごと養蜂家間で売買される。 ミツバチは幼虫段階における栄養により分化する。いずれの幼虫も最初の3日間は両方ともローヤルゼリーが与えられる。女王蜂になる幼虫は継続してローヤルゼリーを与えられるが、働きバチになる幼虫は花粉と花蜜または薄められた蜂蜜の食生活に切り替えられる。女王蜂は比較的急速に蛹ステージに発育し、性的に完全に成熟する。幼虫から蛹のステージの間、様々な寄生生物や病原体の被害を受けやすく、中には致死的なものも多い。 女王蜂はハニカム構造の典型的な横型セルでは成長できない。女王蜂のセルは特に大きめに作られて垂直に配置され、王台と呼ばれる。働きバチは年をとった女王蜂が弱ってきていることを察知し、新旧女王蜂の取り替えセルとして知られる緊急セルを構築する。これらのセルは卵または非常に若い幼虫のセルを改築することにより作られる。ハニカム構造の巣の部材からはみ出すように盛り上がるのが特徴である。新しい女王蜂は、取り替えセルで幼虫と蛹の時期を過ごしたのち、巣の下部へ引っ越す。新女王蜂の蛹化の際、働きバチはセルを覆うか、封をする。彼女がセルから出てくる直前に、しばしば甲高い音を聞かせることがある。この音の正体は未だ完全に解明されていない。 働きバチは、繁殖しない雌である。しかしながら、若干の状況、激しいストレスの時にだけ、あるいは女王蜂の損失または怪我によって健康状態の落ちている時だけ、働きバチは無精卵を産むことがある。そしていくつかの亜種において、これらの卵は実は受精している。しかし、働きバチが不完全な雌(性的に未熟)であるときから、彼女らは雄ミツバチと交尾しない。彼女らが産むどのような受精した卵でもすべて半数体である。そして、これらの半数体卵は遺伝子上常に雄ミツバチに発育する。働きバチは、蜂の巣を建築するのに用いる蜜蝋を分泌し、巣の手入れをして、幼虫を成長させて、時に蜂の巣を守って、花蜜と花粉を探し回る。 働きバチの産卵管が変化したものを「毒針」といい、蜂の巣を守るためにこれで(敵を)刺すことが出来る。そしてどんな他の属のミツバチと(そして自身の種の女王とも)異なり、針は鋭い。一般に考えられているのとは違い、ミツバチは毒針で刺しても必ずしも死なない。これは、ミツバチが通常、人間や他の哺乳類を刺した後に死ぬという事実に基づく誤解である。針と関連した毒嚢は刺さって失った後(自切)ミツバチの体は変化する。毒針器官はいったん分離されるならば、毒を届け続けるための筋肉組織と神経節を持っている。毒針が弾力のある素材に刺さらない限り毒針のかえしが機能せずこの複合の器官(針のかえしを含む)が脊椎動物による捕食に応じて特に進化したことは推定できる。 雄ミツバチは産卵管を持たないので、当然毒針も持たない。雄ミツバチは花蜜や花粉を探し回るようなことはしない。若干の種において、雄ミツバチは蜂の巣の温度調節に貢献しているという役割を担っているということが推察される。雄ミツバチの主な目的は、新しい女王蜂を受精させることである。複数の雄ミツバチは飛行中、そこにいるどんな女王蜂とも交尾する。そして、各々の雄ミツバチは交尾の直後に死ぬ。受精のプロセスには、致命的なほど急激な努力を必要とするのである。雄ミツバチは遺伝的構造の半数体(一つの対になっていない染色体を持つ)で母である女王蜂だけの子孫である。なので彼らに本当に父はいない。本質的には、雄ミツバチは飛んでいる配偶子と何ら変わりない。温暖な気候の地域では、彼らは食料を集めるか、蜂蜜を造るか、彼ら自身の体を気をつけることが出来ない時点で、雄ミツバチは通常冬の前に巣から追い払われて、そして寒さと飢餓で死ぬ。 大部分の亜種の女王蜂の平均寿命は、3-4年である。しかし、かつて養蜂のために使われたGerman/European Black Beeの亜種において、女王蜂が最高8年生きたというレポートがある。女王蜂が精子の貯蔵を減少させるので、生命の終わり頃に彼女らはますます多くの未受精卵を生み始める。養蜂家はそれ故毎年か数年おきに、しばしば女王蜂を替えることがある。 働きバチの寿命は、冬期が長く延びた場合に1年の間所々で大幅に変動する。春期に生まれる働きバチは一生懸命働いて、ほんの数週間の寿命を終える。ところがコロニーが冬ごもりして秋に生まれる働きバチは数か月間の間中で寿命を保つ。 女王蜂は蜂の巣の活動を管理するためにフェロモンを放出する。そして働きバチもまた、変化に富むコミュニケーションのためにフェロモンを生産する。 ミツバチは花蜜を集めることによって蜂蜜を生じる。そして花蜜は複合した糖でほぼ80%の水分から構成されている澄んだ液体である。蜜を集める働きバチは花蜜を第2の胃に保管して、蜂の巣に戻る。働きバチは複合した糖をより単純なものにするために酵素を使って、およそ30分の間生の花蜜を消化する。生蜂蜜はそれから、乾かすために空の蜂の巣のセルに広げられる。そして、水分を20%未満に下げる。花蜜が処理されている間、ミツバチは翼で風を送ることで蜂の巣で蜂蜜を造る。一旦乾燥するならば、蜂の巣のセルは蜂蜜を保存するためにミツロウで封をされる。 蜂の巣の蜂が煙を見つけるとき、多くの蜂は攻撃的でなくなる。これは防衛機構であると推察される。野生のコロニーは一般に木の空洞で生活する。そしてミツバチが煙に気づくとき、彼らが山火事から避難する準備をすることは想像に難くない。そして実際そうすることで多くの食物を蓄えとして持ち運ぶ。こうするために彼らは蜂蜜に最も近い蜂蜜貯蔵セルと溝にいく。捕食からの防御が比較的重要でないときから、この形勢では、彼らはすっかり大人しい。可能な限り蓄えることは、最も重要な活動である。
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