現在と、未来への課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 01:10 UTC 版)
「日本の鉄道史」の記事における「現在と、未来への課題」の解説
JR発足後、JR各社は次第に独自の経営方針を見せ始め、バブル景気によって当初サービスの向上が図られ、民営化の成果が出たと評価された。しかしながら、バブル崩壊による大規模なリストラとともに次第にサービスは簡素化され、現在に至るまで、新幹線食堂車の廃止をはじめとする供食サービスの縮小、寝台列車の削減、ローカル路線の廃止など、サービス水準は低下しているとの声もある。 日本では膨大な旅客運輸需要がある一方、貨物運輸はそのほとんどがトラックによって担われ、モーダルシフトが叫ばれる一方、トラック業界の貨物の鉄道へのシフトはなかなか進んでいない。 また、福知山線脱線事故でクローズアップされたように、運用面の都合や効率を過度に追求した結果、合理化に伴う人員整理で、安全意識や人材育成が著しく等閑にされていたのではないか、との指摘もある。事実、新卒採用がなかった時期(余剰人員が問題になった1980年代 )があるなど経営改善に偏重しすぎた面も見受けられた。これは、JRに先んじて合理化を行っている、私鉄各社にも同様に問題の種はあり、利益と引き換えに安全性を犠牲にするようなことはあってはならない。日本の鉄道は、依然安全性やダイヤ面で世界トップレベルであるとはいえ、その信頼性が揺らぐような事態は看過することができない。 しかしながら、安全への設備投資には莫大な費用がかかるうえに大抵の場合でその費用対効果は大きくないことが多く、都市部路線に限ってはJRや大手私鉄がホームドアや新型ATSなどの安全装置導入を推進する一方で、採算性の問題から設備投資はおろか老朽化した設備の検査すら覚束ないローカル線(銚子電気鉄道など)がある。 また、国鉄・JRから切り離された第三セクター型地方路線の問題とは別に、バブルの過渡期に、大都市で多く計画、開業する、国鉄・JRと関係しない形で発足した第三セクター型新都市交通の赤字問題も深刻である。楽観的な需要見込みにより建設されたが、予想ほど輸送需要が伸びず、未だ採算の目処すら立っていない路線も多く、通勤路線として建設されたものの廃止された新交通システム(桃花台新交通桃花台線)もある。 失敗例の一方、ゆりかもめ、つくばエクスプレス線のように、数少ないながら採算に成功しつつある第三セクターの新線もあり、計画と需要の見定めさえできれば、決して鉄道輸送自体が陳腐化したわけではない。ただ、全国的には日本の人口減少や脱公共事業の流れ、そして根本的な財政悪化の影響で、各地の計画線の多くは計画撤回、もしくは変更が検討され、鉄道新線建設は減少傾向にある。 なお、新幹線については、JR側が採算で難色を示している部分もあるにもかかわらず、経済効果を期待した地方の請願など政治上の都合で推進されている事情もあり(所謂「我田引鉄」)、鉄道全般の問題点とはやや趣が異なる。新幹線、整備新幹線を参照されたい。 いずれにせよ、20世紀の日本が、世界でも類を見ないほど鉄道と共に発展してきたのは事実である。広域交通が日本においては鉄道会社が不動産事業や住宅開発が行われ(良質な住宅供給に成功した地域もあるが鉄道会社の意図を超えた開発が行われ無秩序なスプロール化につながった例も少なくない)、あるいは小売・流通業を手がけて消費文化を作り出したこと、全国紙のような広域メディアの発行を可能にしたことなど、社会のあり方が鉄道と密接に結びついている例は多い。
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