玩具業界
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「変身ブーム」本家の『仮面ライダー』の本格的な商品展開は、1971年(昭和46年)の夏以降であった。下項にある毎日放送主催の7月の実演ショーでは、仮面ライダー商品を景品に配る予定が「生産準備中」とのことで配布できなかったというエピソードが残っている。しかし2号ライダーが「変身ポーズ」を披露して以後、仮面ライダーの玩具商品は爆発的なヒットとなって市場を席巻し、多大な影響をもたらしていった。 当時、実写テレビ作品での玩具販売によるマーチャンダイジングでの成功例は、前回ブームの際の『ウルトラマン』(円谷特技プロ)の怪獣人形などに限られていた。スポンサーと商品化を繋ぐ発想は当時なく、これを『仮面ライダー』において、スポンサーに玩具会社バンダイを招いたのは渡邊亮徳のアイディアだった。 こうした形でバンダイが発売した『仮面ライダー』のソフビ人形は、『タイガーマスク』の同種人形に倣い、マスクが脱着可能となっていて、ここでも「変身」が強調されていた。この「着脱式のマスク」という意匠は、巨大ヒーローの『ミラーマン』(ブルマァクから発売)など別種のはずのソフビ人形にも影響を与えている。またバンダイの子会社ポピーが発売した、仮面ライダーの敵「ショッカー怪人」のミニサイズソフビ人形も、生産が追い付かないほどの大ヒットとなった。またバンダイは、マスクを始めベルトや手袋を含む、変身ヒーローの子供用着せ替え衣装一式を『変身セット』として販売。 前回ブームで人気を集めた「ウルトラ怪獣」のソフビ人形は、マルサンから引き継いだ「ブルマァク」社によって、前年の1970年(昭和45年)から「マルサン」製「ウルトラ怪獣」のソフビ人形が復刻され、再びブームとなった。ブルマァクは怪獣ブームの支援策として積極的な営業を行い、この働きかけは、『帰ってきたウルトラマン』制作の原動力ともなった。同社の怪獣のソフビ人形は、各社の子供雑誌の多くで懸賞用賞品にも使われ、ブームを煽った。一方、怪獣のソフビ人形市場においては、前回「怪獣ブーム」と大きく変わり、1972年以降、ヒーローの人形がほとんどを占め、怪獣キャラクターの人形のリリースがほとんど無くなった。 タカラによって、男の子向け着せ替え人形ともいえる「変身サイボーグ1号」が登場。リアル志向のフィギュアの草分けともされている。このタカラからは、怪獣のイラストなどをプリントしたビニール風船型のサンドバッグ玩具「パンチ・キック」もヒットシリーズとなった。 また、今井科学やバンダイ、今回ブームで新参入した万創によるプラモデル、またポピーによるリアル指向のヒーローマシンの玩具「ミニミニシリーズ(後の「ポピニカ」)」、「超合金」などが玩具市場を賑わせた。『仮面ライダー』の「単車に乗る等身大ヒーロー」の玩具意匠は、『帰ってきたウルトラマン』など巨大ヒーローにまで波及、「乗物に乗った巨大ヒーロー」といった珍妙な玩具形態をも生んでいる。 ブリヂストンサイクルは、『仮面ライダー』が乗るオートバイを模した「ドレミシリーズ」を発売、大ヒットとなり、以後、自転車業界では番組キャラクター意匠を付加した児童向け商品が一大市場となった。 1973年-1974年にはウルトラマン、仮面ライダー、バロム1、人造人間キカイダーなどが等身大の人形形態で「カプセル玩具の販売機」(百円硬貨を投入すると音声が発せられ膝にある銀色の蓋付取出し口へカプセルが落下)として登場。全国のデパート(主に階段踊り場)などへ配置された。また、遊園地やデパートに、変身ヒーローの乗り物型遊具も設置された。 また、ブーム最大のヒット商品として、ポピーが1972年(昭和47年)に発売した、『仮面ライダー』の「変身ベルト」がある。劇中の変身ベルトを模した玩具としては、タカトクトイスが先行し発売していたが、ポピーが劇中の描写に合わせ発光回転ギミックを内蔵し、「光る、回る変身ベルト」として発売、当時の価格で1500円という高額にもかかわらず、子供たちの「仮面ライダーごっこ」に欠かせないアイテムとして大ヒット。最盛時には一日の生産個数は1万個を超えた。以降同シリーズのライダー毎に発売された。一方でベルトを持っていない子供は悪の秘密結社の戦闘員か怪人役を演じる事を余儀なくされた。 結果的に、この「変身ブーム」において、低予算で制作された『仮面ライダー』は、東映初の商品化ビジネス番組として、3億円(当時)という莫大な版権収入を制作会社にもたらした。その一方で、上記したようにこれら玩具メーカーのスポンサー参加によって、ブームの過熱と並行して、番組キャラクターにその意向が反映される傾向が強くなっていく。
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