もりのじょうけい〔もりのジヤウケイ〕【森の情景】
シューマン:森の情景
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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シューマン:森の情景 | Waldszenen Op.82 | 作曲年: 1848-49年 出版年: 1850年 初版出版地/出版社: Senff |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例![]() |
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1 | 第1曲 森の入り口 "Eintritt" | 1分40秒 | No Image |
2 | 第2曲 茂みのなかで獲物を待ち伏せる狩人 "Jager auf der Lauer" | 1分20秒 | No Image |
3 | 第3曲 孤独な花 "Einsame Blumen" | 1分50秒 | No Image |
4 | 第4曲 気味の悪い場所 "Verrufene Stelle" | 2分00秒 | No Image |
5 | 第5曲 親しみのある風景 "Freundliche Landschaft" | 1分00秒 | No Image |
6 | 第6曲 宿 "Herberge" | 1分50秒 | No Image |
7 | 第7曲 予言の鳥 "Vogel als Prophet" | 3分00秒 | No Image |
8 | 第8曲 狩の歌 "Jagdlied" | 2分30秒 | No Image |
9 | 第9曲 別れ "Abschied" | 3分00秒 | No Image |
作品解説
シューマンのよく知られているピアノ曲の多くは、20代に書かれたものだが、この《森の情景》は、歌曲や室内楽を多産した時期を経たのち、1848年暮れから翌年にかけて作曲された。完成までには約ひと月を要した。ピアノ作品としては実に10年ぶりの作品。
以前のピアノ作品と比べ、文学と音楽との結びつきは深みを増しているようだ。各曲はロマン派詩人たちの描いた「森」をモチーフに作曲されたと言われ、当初は各曲のモットーとして詩を添える予定であったという。しかし出版に際しては、第4曲目の<呪われた場所>にフリードリヒ・ヘッベルの詩が添えられているのみである。ドイツ・ロマン主義者の文学者、とりわけ詩人にとって、「森」とは、静寂・活気、神秘、憧憬、といった多様な趣を持つものであったようだ。
第1曲目 <森の入り口> 変ロ長調 4分の4拍子 速すぎずに
明るく始まるものの、陰と陽の対比がみられる曲。メロディーが高声、内声、低声と様々な音域で歌われる。
第2曲目 <待ち伏せる狩人> ニ短調 4分の4拍子 非常に活き活きと
<森の入り口>から一転して、激しさを貫く曲。左右の手がユニゾンとなる部分が効果的に挿入されている。
第3曲目 <もの悲しい花たち> 変ロ長調 4分の2拍子 質素に
訴えかけるかのように、メロディーが上に下に曲線を描いていく。簡素な伴奏は、このメロディーを非常に引き立てている。
第4曲目 <呪われた場所> ニ短調 4分の4拍子 非常にゆっくりと
既にふれた通り、この曲にのみ、冒頭に詩が添えられている。その内容は不気味なものである(光の届かない森の中で高く伸びた花は青白い。ただ一本赤い花も、陽の光ではなく、大地の色、人間の血を吸い込んだ赤色をしている。)。
多声的な書法がとられている。詩の内容と同様に、不気味な雰囲気を持つ曲となっている。その雰囲気は、休符を活かしたリズム、メロディー、多声的な書法など、様々なものから導き出されている。
第5曲目 <親しげな風景> 変ロ長調 4分の2拍子 速く
3連音符を多用する曲。その中に、ほんの僅かにみられる8分音符がフレーズの変化をもたらす。
第6曲目 <宿屋> 変ホ長調 4分の4拍子 中庸に
主に高声で歌われるメロディーが、時折、中音域や低音域に移り、会話を連想させる。メロディーそのものも、音形もリズムも共に、語りかけるような語尾が特徴的である。
第7曲目 <予言者としての鳥> ト短調 4分の4拍子 ゆっくりと、非常に優しく
半音を含む分散和音は、付点のリズムで上下に行き来する。曲の中ほどで、ほんのひと時、コラール風の場面がみられる。曲全体が、半音階的な音の動きに満たされている。
第8曲目 <狩りの歌> 変ホ長調 8分の6拍子 急速に、力強く
勇壮な趣に、どこか哀愁も感じられる曲。この曲も、8分の6拍子として付点4分音符の音価を3分割するところが多い中、曲の終わり近くに、2分割となる部分を効果的に配置している。
第9曲目 <別れ> 変ロ長調 4分の4拍子 速すぎずに
順次進行と跳躍進行とを織りあわせたメロディーに、和音が添えられたシンプルなつくりとなっている。しかし、そのような中にも、内声や和声が「ものを想う」味わいを醸し出している。この曲集全体は、主音の第3音を高音に配置し、「幻影」のような響きを残して幕を閉じる。
森の情景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/17 17:14 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動『森の情景』作品82 | |
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ドイツ語: Waldszenen, op.82 | |
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ジャンル | ピアノ独奏曲集 |
作曲者 | ロベルト・シューマン |
『森の情景』(もりのじょうけい、Waldszenen)作品82は、ロベルト・シューマンが作曲した全9曲からなるピアノ独奏曲集。
ロマン主義においては森林が重要な要素のひとつであるが(ドイツの森)、シューマンのピアノ曲で森を題材にしたものはこの作品のみである[2]。西原稔は作曲にあたってのヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフからの影響を指摘している[2]。
曲の構成
各曲が変種調(変記号の調性)を主調にしているのが特徴であり、作曲当時は各曲に短い詩が載せられていたが、出版に際して第4曲以外の詩が除かれた。予定されていた詩はそれぞれ、第1曲と第9曲がグスタフ・プファリウスの『森の歌』(Waldlieder)、第2曲と第8曲がハインリヒ・ラウベの『狩の文集』(Jagdbrevier)、第7曲はアイヒェンドルフの『詩集』から「薄明」(Zwielicht, 「リーダークライス」作品39の第10曲に用いられた)、からの抜粋である[3]。
- 森の入口 (Eintritt)
- 待ち伏せる狩人 (Jäger auf der lauer)
- 寂しい花 (Einsame Blumen)
- 2/4拍子、変ロ長調。
- 「単純に(Einfach)」と指示された曲。タイトルの「Blumen」は複数形であることから、対話風の書法を織り込んだ優雅な趣をもっている。冒頭の中心動機は他の曲でも用いられ、曲集の核となる[1]。
- 気味の悪い場所 (Verrufene Stelle)
- 4/4拍子、ニ短調。
- 「かなりゆっくりと(Ziemlich langsam)」と指示されたこの曲の冒頭部分には、ドイツの詩人フリードリヒ・ヘッベルの詩が掲げられており、曲は晩年のシューマンの怪異さと暗さを示す典型的なものといえる。
- なつかしい風景 (Freundliche Landschaft)
- 2/4拍子、変ロ長調。
- 「急速に(Schnell)」と指示された三部形式の曲。
- 宿屋 (Herberge)
- 4/4拍子、変ホ長調。
- 「モデラート(Mässig)」と指示された三部形式の曲。
- 予言の鳥 (Vogel als Prophet)
- 4/4拍子、ト短調。
- 「ゆるやかに、きわめて柔かに(Langsam, sehr zart)」と指示されており、全曲中最も有名な曲。
- 狩の歌 (Jagdlied)
- 6/8拍子、変ホ長調。
- 「急速に、力強く(Rasch kräftig)」と指示された三部形式の曲。この曲集の中で唯一複合拍子で書かれている。
- 別れ (Abschied)
- 4/4拍子、変ロ長調。
- 「急がずに(Nicht schnell)」と指示された長い結尾を持つ三部形式の曲。「別れ」というタイトルだが、森を去って元の場所へ帰ることであり、感傷味や淋しさをみせない。
出典
参考文献
外部リンク
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- 森の情景 - ピティナ・ピアノ曲事典
- 森の情景の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト。PDFとして無料で入手可能。
- Ausführliche Erläuterungen zu den Waldszenen (PDF; 262 kB)
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固有名詞の分類
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