政治利用・報道・今後の課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 09:00 UTC 版)
「コピアポ鉱山落盤事故」の記事における「政治利用・報道・今後の課題」の解説
10月1日段階で、ピニェラ大統領の支持率は56 %と、作業員救出が始まる前の46 %から上昇した。ゴルボルネ鉱業相の支持率は78 %に達した。 生存を知らせるメモが見つかった際はすぐに現場に駆けつけて歓喜の表情をテレビに見せ、作業員に子どもが生まれた際に病院に駆けつけテレビカメラの前で乳児にキス、救助された一人一人と抱擁、病院に現れ「サッカーの試合で彼らと対決したい。勝ったら大統領宮殿に招待、負けたら鉱山に逆戻りさせる」と発言するなどたびたびカメラの前に姿を現すピニェラ大統領に対して、閉じ込められた作業員の家族の一部や外国メディアから、ピニェラ大統領が救出作業を政治利用しているとの批判が出た。 当初は「クリスマス・イブ前後」とされていた救出予定日が徐々に「11月」「10月下旬」と早まり、大統領の欧州訪問予定日直前に調整したのではないかとの声が出た。9月19日には5回目の現地視察を行った日と同日に3本目の縦穴掘削工事が始まったことから、一部の家族は「視察に合わせるため、工事が遅らされた」と指摘、それに対して担当大臣は「大統領は事故当初から作業員の救出に全力を挙げてきた」など反論したが、救出開始は大統領が来るのにあわせて調整していたことを認めた。また「救出の時を作業員や家族、国民と共有することは私にとって大変重要」と述べて15日の訪欧予定日を17日に延期した。救出現場でボリビアのエボ・モラレス大統領と並んでいる映像が報道された。 10月16日、英国入りしたピニェラ大統領は炭鉱事故が相次ぐ中国などを念頭に「支援できるならぜひ力になりたい」と述べ、作業員救出のノウハウを各国に提供していく姿勢を示した。 救出された1人の妻は「政治家は成果を誇示したがる。みんなを助けてくれさえすればいい」と不満を語った。 日本国内のインターネット報道の見出しとしては以下のようなものが見られた。「チリ大統領、奇跡に「便乗」?支持率急上昇」(読売新聞)、「欧州では無名の大統領が奇跡の救出をしたたかに利用」、「事故を政権浮揚に利用? チリ大統領に冷たい視線も」(スポーツニッポン)、「主人公は大統領?=チリ鉱山事故」(時事通信社)。 一方、作業員の発言の中には「救出されると分かったとき、中で起きたことは決して口外しないと全員で誓った」「鉱山で起きたことは鉱山に置いてきた」と報道から一定の距離を置こうとするものもある。また、救出作業員に「有名人としてではなく、鉱山作業員として扱われたかった」と言った者もいた。 フアン・ソマビアILO事務局長は救出作業継続中の13日に発表した声明で「ILOの事務局長としても、チリ人としても世界の人々とともに賛辞を贈りたい。鉱夫の落ち着き、勇気、組織力、命を愛する気持ち、国内外官民問わずに貢献したすべての人々の粘り強さ、技能、効率性、鉱夫らの家族と国家全体が示した連帯、信じる気持ちに敬意を表する。ピニェラ大統領、政府、チリ国民に賛辞を表する。経済的、技術的、人的な力が逆境を勝利に変えたのかもしれない。鉱夫の家族の連帯と全国民の信頼が不可能を可能にしたように見える。救助から学んだことは大きい。しかし、われわれは事故が安全措置が不十分であったことに起因する点を忘れてはならない。世界の労働力の約1 %が従事する鉱業が全産業の8 %の死亡災害を起こしている。労働災害は毎日約6300人の犠牲者を出し、年間合計では230万人以上に達する。労働災害は年間3億3700万件にのぼり、鉱業その他の劣悪な労働条件の改善に向けて課題は山積している」と述べた。 サンホセ鉱山の運営会社の資産は政府によって凍結され、賃金や失業手当が給付されるめどは立っていない。作業員の多くは長期間の過酷な鉱山労働で難聴や呼吸器の障害を抱えているとされる。同鉱山は閉山される見通しで補償もおぼつかない中、生還者以外の作業員約300人による救済を求める抗議活動が続いた。地域紙の記者は「今回の事故は鉱山のずさんな運営の実態を世界に訴える機会だったが、英雄物語の陰に隠れてしまった」と話した。政府系の全国紙は、一連の抗議活動をほとんど報じていないという。 なお、この落盤事故の生存者にボリビア人もいたことがきっかけで、長年関係が良くなかったチリとボリビアの関係が改善する可能性が高まっている。 2013年5月、事故当時現場監督だったウルスアが、鉱山で働く作業員の安全確保、労働環境の改善を目的とする財団「アタカマ33財団」を設立した。
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