天安門事件から「戦略的互恵関係」へ
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「日中関係史」の記事における「天安門事件から「戦略的互恵関係」へ」の解説
中国の北京で六四天安門事件による戒厳令が解かれ、日本も平成時代を迎えると天皇皇后が日中国交樹立20周年の1992年に歴代天皇初の中国行幸啓を行った。終戦50周年の1995年の8月には村山内閣総理大臣談話「戦後50周年の終戦記念日にあたって」が発表された。1996年、台湾では初の中華民国総統直接選挙が実施され本省人の李登輝が有力候補になると再び台湾海峡危機が懸念され、「台湾有事」も想定した 日米防衛協力のための指針 の策定を巡って日中関係がこじれたりもした。日中条約20周年を機に、江沢民総書記(国家主席)(当時)が1998年11月に中国の国家元首として初めて日本を公式訪問し、日中共同宣言が発表された。また、歴史認識を巡る問題が大きくクローズアップされ、反中や嫌中といった現象の再発と伴って中国の急速な経済発展が中国脅威論を喚起させることになった。 小泉内閣の時には再び靖国神社参拝問題などを巡って日中政治関係は険悪化して「政冷経熱」の時期を迎える。その一方で、愛国主義教育への反動として対日新思考を主張する動きが中国側で見られたが、 2005年には大規模な反日デモが発生して新たなナショナリズムが芽生えている。日本は常任理事国改革で常任理事国入りを目指しているが、中国は同じBRICSのインドの常任理事国入りには賛成しているのに対して日本に対しては拒否権を発動し、親中化したアフリカ連合諸国も反対の姿勢を見せた。 しかし、小泉の後任に就いた安倍晋三首相は初外遊先に中国を選んで大歓迎され、「第4の外交文書」として戦略的互恵関係を謳った共同プレスを発表して日中両国は関係改善し、中国の温家宝首相も訪日した。また、胡錦濤総書記(国家主席)が来日し、福田康夫首相とともに「戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明」を発表した。同年の北京オリンピックの開会式には福田首相だけでなく、かつて日中国交正常化に反対する青嵐会を結成して反中・嫌中の代表格ともされた石原慎太郎東京都知事も出席してヨーロッパに対抗した日中協力を呼びかけた。2009年には麻生太郎首相はリーマン・ショックが発生した世界金融危機を受け、「日中韓の経済はドイツ・イギリス・フランスの合計も上回る」として中韓との経済協力強化を打ち出し、日中韓首脳会談を日本で開催した。2010年の上海万国博覧会では復元された遣唐使船がかつての遣唐使と同一の航路で大阪港から上海に入港するまで関係は友好的であった。 自民党から民主党に政権交代し、2011年の野田内閣発足後は尖閣諸島問題が再燃して関係は一気に冷え込んだ。中国と日本は小さくない貿易相手国同士であり、経済的には密接に結びついていることに変わりはないものの、お互いの国民感情の面などからも政治的な日中関係は過去最悪の状態となり、2014年9月9日に公表された、特定非営利活動法人言論NPOと、中国国営の中国日報社が共同で行った世論調査では、中国の印象を「良くない」「どちらかといえば良くない」と答えた日本人は93%に上り、日本の印象を「良くない」「どちらかといえば良くない」と答えた中国人は86.8%であった。チャイナプラスワンとしてASEAN等への投資も増えている。折しも、長年進めてきた中国の軍備増強が一定水準に達したこともあり、中国側も日本に対しては強い態度で臨むことが増え、摩擦が拡大した。 2012年に民主党から政権を奪還した自民党の第2次安倍内閣は第1次安倍内閣と同様に戦略的互恵関係を日中関係の基礎と位置付けて関係改善を図りつつ、尖閣諸島を「核心的利益」とする中国に対して領土問題で妥協しない姿勢を保って日中双方が時に牽制しあった。 しかし、アメリカ合衆国で日中の対米貿易黒字を問題視するドナルド・トランプ政権が誕生した2017年から日米貿易摩擦の再燃と米中貿易戦争が起きたことにより日中は歩み寄りを見せ始め、2018年5月には習近平総書記兼国家主席と史上初の電話会談を行い、日中韓首脳会談に出席するために中国首相(国務院総理)では8年ぶりに訪日した李克強総理と安倍首相は東シナ海ガス田問題の共同開発で合意した2008年から交渉されてきた日中防衛当局間のホットライン「海空連絡メカニズム」の運用開始で一致し、他にも複数の合意文書を交わして同時に訪れた韓国の文在寅大統領との対応の差が目立ち、その歓待ぶりから「政熱経熱」とも評され、同年10月には日本の首相では7年ぶりに単独訪中した安倍首相への中国の厚遇が報じられ、安倍首相は「競争から協調へ」「お互いパートナーとして脅威にならない」「自由で公正な貿易体制の発展」の日中新時代3原則を打ち出して中国の習近平総書記や李克強首相と様々な日中協力で合意した。2019年10月には中国人民解放軍の軍艦が横須賀に親善入港し、8年ぶりかつ日本近海では初の共同訓練を自衛隊と行った。2020年4月には習近平主席(総書記)が国賓として日本を訪問する予定であったが、こちらはCOVID-19対応のため延期されている。
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