大正小額政府紙幣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/11 09:01 UTC 版)
1917年(大正6年)10月30日の勅令第203号「小額紙幣ノ形式」で紙幣の様式が定められており、五十銭券、二十銭券、十銭券の3券種が発行されている。主な仕様は下記の通り。 大日本帝國政府紙幣 額面 五拾錢(50銭)、貳拾錢(20銭)、拾錢(10銭) 表面 菊花紋章、発行年 裏面 彩紋模様、偽造罰則文言 印章 〈表面〉大蔵大臣 〈裏面〉なし 銘板 大日本帝國政府印刷局製造 記番号仕様記番号色 赤色[通し番号なし(組番号のみ)] 記番号構成 〈記号〉組番号:「{」+数字1 - 3桁+「}」 〈番号〉通し番号なし 記年号大正6年 - 大正11年[五十銭券] 大正6年 - 大正8年[二十銭券] 大正6年 - 大正10年[十銭券] 寸法 縦65mm、横103mm(縦2寸1分5厘、横3寸4分)[五十銭券] 縦58mm、横92mm(縦1寸9分4厘、横3寸0分4厘)[二十銭券] 縦54mm、横86mm(縦1寸8分、横2寸8分6厘)[十銭券] 製造実績製造期間 1917年(大正6年) - 1922年(大正11年)[五十銭券] 1917年(大正6年) - 1919年(大正8年)[二十銭券] 1917年(大正6年) - 1922年(大正11年)[十銭券] 記号(組番号)範囲 五十銭券大正6年銘:1 - 40 大正7年銘:41 - 138 大正8年銘:139 - 250 大正9年銘:251 - 343 大正10年銘:344 - 413 大正11年銘:414 - 474 二十銭券大正6年銘:1 - 10 大正7年銘:11 - 50 大正8年銘:51 - 55 十銭券大正6年銘:1 - 7 大正7年銘:8 - 132 大正8年銘:133 - 268 大正9年銘:269 - 378 大正10年銘:379 - 469 製造枚数 683,930,048枚(3億4196万5024円分)[五十銭券] 55,000,048枚(1100万0009円60銭分)[二十銭券] 685,350,048枚(6853万5004円80銭分)[十銭券] 発行開始日1917年(大正6年)11月8日[五十銭券]・[二十銭券] 1917年(大正6年)12月6日[十銭券](告示上:1917年(大正6年)11月8日) 通用停止日 1948年(昭和23年)8月31日 発行終了 失効券 大正時代まで日本では五十銭、二十銭、十銭の各硬貨は銀貨で発行されていた。しかし第一次世界大戦で日本は欧州戦線から遠く離れていたこともあり戦争特需で大幅な貿易黒字をもたらされた反面、価格高騰による戦時インフレが発生した。そのため銀価格が急騰し、銀貨の額面を超える価格になったため、銀貨が鋳潰される危機に陥った。当初は、銀貨の発行継続のために銀の含有量を減らした銀貨(八咫烏銀貨)を発行することを検討したが、さらに銀価格が高騰したため、ついに銀貨発行が停止した。銀貨の発行が困難になったことにより、補助通貨の不足を補う為に政府紙幣が発行された。 図案は明治時代に発行された改造紙幣の低額面のそれを流用したもので、明治時代の改造紙幣の銭単位の券種は五十銭券と二十銭券のみで十銭券はなかったが、この大正小額政府紙幣では二十銭券の図案を元にして十銭券の図案が作られた。文字の書体や模様の印刷色などが変更され、券面右側の改造紙幣で大蔵卿印に相当する場所に額面金額のアラビア数字が入り、券面左側に大蔵大臣印が入るなど、一部デザインが変更になったほか、硬貨と同じく発行年が記入されている。なお記年号は上記の通りである。 表面中央の菊花紋章の周囲には右側に桂、左側に樫、下側に勲章の菊花章があしらわれているが、これは流用元の改造紙幣と同様の図柄である。3券種いずれも、偽造罰則文言は「此紙幣ヲ贋造シ或ハ贋造ト知テ通用スル者ハ國法ニ處スベシ」(現代語訳:この紙幣を偽造し、あるいは偽造と知って使用する者は法律により処罰される)と印刷されている。 透かしは縦線条である。 使用色数は、3券種とも表面3色(内訳は主模様1色、地模様1色、印章・記番号1色)、裏面1色となっている。 名目上硬貨の代用として発行されたことから、各券種とも従前の銀貨と同じく法貨としての強制通用力は10円まで(五十銭紙幣は20枚、二十銭紙幣は50枚、十銭紙幣は100枚)とされた。 1919年(大正8年)末の政府紙幣の流通額は1億4530万円であった。発行に際し政府は大戦終結後1年までしか発行できないという制約を取り決めたが、1919年(大正8年)の大戦終結後もしばらくは補助通貨の不足が続いた為に発行継続され、1922年(大正11年)まで政府紙幣が発行された。戦争終結により銀価格が落ち着いた為に銀貨の発行が再開されたものの、十銭硬貨は白銅(ニッケルと銅の合金)素材に変更され、五十銭硬貨は小型化し(小型鳳凰五十銭銀貨)、二十銭硬貨は発行されなくなった(貨幣法により二十銭銀貨が小型鳳凰五十銭銀貨と同様の図案で小型化されたものが制定されていたが試作のみに終わった)。 小額紙幣整理法により、1948年(昭和23年)8月31日限りで通用禁止。
※この「大正小額政府紙幣」の解説は、「小額政府紙幣」の解説の一部です。
「大正小額政府紙幣」を含む「小額政府紙幣」の記事については、「小額政府紙幣」の概要を参照ください。
- 大正小額政府紙幣のページへのリンク