前部付属肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 04:06 UTC 版)
アノマロカリス科/アンプレクトベルア科(1枚目)とフルディア科(2枚目)のラディオドンタ類におけるそれぞれの前部付属肢の基本外部形態。前者は顕著な節間膜と長短を繰り返した内突起、後者は内側に湾曲した5本以上の長い内突起が特徴的である。 ラディオドンタ類の代表的な特徴である触手様の器官は一般に前部付属肢(Frontal appendage)と呼ぶ。一部の文献では「claw」("爪")・「feeding appendage」("摂食用の付属肢")・「grasping appendage」("物を掴む用の付属肢")とも呼ばれ、2000年代ではメガケイラ類の大付属肢と共に「great appendage」("大付属肢")扱いともされてきたが、両者はお互いに別系統で、特にそれぞれの付属肢の相同性が疑問視される以降(後述と大付属肢#経緯も参照)、この総称は徐々にラディオドンタ類の前部付属肢に用いられなくなった。 前部付属肢はラディオドンタ類の唯一の関節肢(節足動物の関節と外骨格をもつ付属肢)であり、口の直前に左右2本をもち、十数節前後の肢節(podomere)に分かれ、上下(一部の種類は左右)に動ける。前部付属肢は基本として前後で基部1-3節でできた柄部(shaft, peduncle, base, promixal region)と、残りの十数節前後でできた捕獲用の部分(distal articulated region, claw)として区別され、腹側は多くの肢節ごとに1本もしくは1対の内突起(内葉、endite, ventral spine, inner spine)がある。ほとんどの内突起は、往々にして補助的な分岐(auxiliary spine, secondary spine)が前後もしくは前縁のみに生えている。また、先端の数節が前向きに出張った背側/外側の棘(dorsal spine, outer spine)をもつ場合もほとんどである。一部のフルディア科の種類は内側に更に一列の棘(gnathite, medial spinous outgrowth, medial spine)をもつが、これは元々対になった内突起のうち内側の列から変化したものだと考えられる。 アノマロカリス科、アンプレクトベルア科、およびそれらに類する種の前部付属肢 タミシオカリス科の前部付属肢 フルディア科の前部付属肢 カリョシントリプスの前部付属肢 前部付属肢の形態、特にその内突起は種類によって構造が異なり、それぞれの生態と系統関係を示唆する部分として重要視される(食性と下位分類を参照)。例えばアノマロカリス科は長い触手状で、アンプレクトベルア科は屈曲した柄部の直後に強大な内突起があり、フルディア科は立体的な熊手状で途中に5本以上の長いの内突起をもち、タミシオカリス科は細長い内突起に密集した分岐が並んでいる。 肢節の数・内突起の長さ・関節丘(肢節の境目の左右にある連結部)の位置・腹側の節間膜(各肢節の境目にある柔軟な表皮)の面積などの要素は、前部付属肢の可動域に大きく関与すると考えられる。肢節数が多い・内突起が短い・節間膜の面積が広いほど可動域が高く、逆の場合ほど可動域が低く、一定の形を維持していたと推測される。関節丘の位置が高いほど腹側に折り曲げる、低いほど背側に反り上げることができたと考えられる。また、前部付属肢の基部の端、すなわち頭部との連結部は往々にして不明瞭に保存されたため、この部分の表皮は柔軟で、様々な方向に動けたと考えられる。 前部付属肢は硬質の外骨格に覆われるため、ラディオドンタ類の様々な器官の中では往々にして保存状態が最も良好な部分である。そのため、ラディオドンタ類の中で、未だにほぼ前部付属肢のみによって知られる種類が多い(記載種の発見状態を参照)。
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前部付属肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 00:33 UTC 版)
口の前にある1対の前部付属肢(frontal appendages)は、甲殻類の腹部を思わせる造形をしており、分節した外骨格(肢節)に覆われた触手様の付属肢(関節肢)である。左右に扁平で、原則として14節の肢節(柄部1節と残り13節)に構成される。先に向かって細くなり、先端以外の肢節にそれぞれ1対の内突起(endite, 腹側/内側の棘 ventral spine)をもつ。これらの内突起は柄部直後の対を始めとして、先端の肢節ほど短くなりながら長短を繰り返した構造をもつ。多くの場合、内突起は前後それぞれ1本以上の分岐(auxiliary spine)をもつ。先端数節の背側(外側)は、重なり合った爪のような数本の棘(dorsal spine, outer spine)をもつ。各肢節の背側の境目は1対の関節丘(ピボット、pivot joint)に連結され、腹側の境目は三角形の節間膜(柔軟な表皮)に分けられることにより、この付属肢は全体的に広い上下可動域をもつ。 全身が知られるラディオドンタ類の中でも、本属の種の前部付属肢は体に対して最も長く、柄部を除いても体長の半分(A. canadensis)か三分の一(Anomalocaris sp. ELRC 20001)ほどである。
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前部付属肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 19:35 UTC 版)
頑丈な前部付属肢(frontal appendage)は鋏に似た形で、体に対して明らかに短い(柄部を除いては体長の約5分の1しかない)。柄部は太い3節で、残りの捕獲用の部分は12節(先端の爪を肢節と考えた場合は13節)に構成され、両者の間は反り上げるようにやや屈曲する。柄部直後の肢節は、よく発達した内突起(endite)が腹側から長大に突き出し(長さは前部付属肢長の3分の1以上)、鋏のように先端の肢節と嚙み合わせる構造をなしている。それ以降の肢節は著しく短縮して明瞭な節間膜に分かれ、各肢節にある1対の内突起は左右非対称(内側の方が長い)になっており、単純で分岐(auxiliary spine)はない。内突起は長短を繰り返しながら前方ほど短くなるが、5番目の内突起は例外的に3番目のものより長い。先端の数節は、猛禽類の爪に似た数本の棘がある。
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前部付属肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 18:56 UTC 版)
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前部付属肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/05 15:41 UTC 版)
熊手に似た1対の短い前部付属肢(frontal appendage)は口の直前、頭部の前端付近に付属したと考えられる。前6節の肢節のうち最初の1節は単調な柄部で、残り5節の腹側にある5本の内突起(endite)はとても長く、およそ20-25本の長い分岐(auxiliary spine)がそれぞれの前縁で均一に配置される。分岐の先端はフルディアやカンブロラスターに見られるような逆向きの鉤の有無は不明。内突起とその分岐は先端ほど内側に向けて湾曲したため、前部付属肢を口の前で左右合わせて、物を掴める籠のような立体構造を形成したと考えられる。残りの先端の肢節は3本の長い棘のみによって知られるが、これはカンブロラスターに見られるような、第7-10肢節由来の内突起や棘であったと考えられる。 このような前部付属肢はカンブロラスターのものとはほぼ区別が付かないほどよく似て、明確の相違点は内突起の分岐の長さのみである(ティタノコリスの場合は内突起幅の4倍以上で長く、カンブロラスターの場合は内突起幅の2-3倍で比較的短い)。
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前部付属肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/05 15:30 UTC 版)
口の前方にある1対の前部付属肢(frontal appendage)は短い熊手状で、柄部直後5節の肢節は、腹側に5本の発達したブレード状の内突起(endite)をもつ。これらの内突起の前縁は、長さが不均一で頑丈な分岐(auxiliary spine)が並んでおり、それぞれの分岐の先端は鉤状に曲がり返す。内突起は内側に向かって湾曲したため、左右の前部付属肢を合わせると、物を囲める籠のような構造になると考えられる。柄部は前に傾いて突き出した針状の内突起が1本ある。残り先端数節の肢節は退化的で、そのうち基部2節は目立たないブレード状の内突起があり、先端の肢節は上向きに湾曲した1本の爪である。
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前部付属肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/05 15:37 UTC 版)
正面にある1対の前部付属肢(frontal appendage)は、十数節に分れ、柄部(1-2節)と捕獲用の部分(9-11節)の間がやや上向きに屈曲する。腹側の内突起(endite)のうち、柄部直後の肢節にある方は強大で、刃のように前後の幅が広く、前縁の付け根に沿って6-7本の鋸歯状の分岐(auxiliary spine)が密生している。この内突起の長さ、および残りの肢節の数と内突起の形は種によって異なる。最終数節の背側は前に突き出した棘(dorsal spine)をもつ。
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前部付属肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 02:49 UTC 版)
熊手に似た頑丈な前部付属肢(frontal appendage)は口の直前、頭部の先端付近に備わる。十数節(通常では11節とされるが、先端の爪と境目を肢節と認めた場合は13節)の肢節に分かれ、第2-6肢節の腹側は、内側に湾曲した、前縁に大小の分岐(auxiliary spine)が生えた5本のブレード状の内突起(endite)がある。背側/外側に一列の短い棘(dorsal/outer spine)が走り、先端ほど爪のように強大に湾曲する。P. nathorsti の場合はその他にも、内側に更に一列の棘(gnathite, medial spinous outgrowth)と、最初の肢節は前に傾いた目立たない内突起をもつことが分かる。
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