前部付属肢の対応関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 01:12 UTC 版)
「ラディオドンタ類」の記事における「前部付属肢の対応関係」の解説
「ラディオドンタ類#神経系」、「ラディオドンタ類#節足動物の基部系統を示唆する指標」、「キリンシア#前端の付属肢の相同性と進化」、および「メガケイラ類#大付属肢の対応関係」も参照 ラディオドンタ類の前部付属肢はどの体節と脳神経節に対応し、そして他の汎節足動物のどの頭部付属肢に相同なのかは、ラディオドンタ類の頭部構成、節足動物における系統的位置、および初期の節足動物の頭部付属肢の進化を推測するのに重要視される根拠の一つであるため、多くの議論をなされていた。2010年代中期以前では、ラディオドンタ類の脳神経節を保存した化石標本の記載はなく、神経解剖学的証拠の欠如により諸説が分かれていた。しかしその証拠をもつと思われる化石が発見された2010年代中期以降でも、2010年代後期以降の新たな発見と見解により議論が再燃しつつある。 2017年時点で広く認められる、様々な汎節足動物における前部の体節と付属肢の対応関係(フーシェンフイア類以降の右の群は全て真節足動物)。前大脳性・中大脳性・後大脳性の体節と付属肢はそれぞれ赤(P)・黄(D)・青(T)で示される。ここでのラディオドンタ類の前部付属肢は前大脳性と解釈される。 昆虫(真節足動物)の上唇(lr、赤) 有爪動物の前大脳(P)に対応する触角(ant) 体節(脳神経節) 分類群 先節(前大脳)第1体節(中大脳)第2体節(後大脳)ラディオドンタ類(前部付属肢前大脳性説) 前部付属肢 鰭 鰭 ラディオドンタ類(前部付属肢中大脳性説) ? 前部付属肢 鰭 真節足動物 上唇/ハイポストーマ 第1触角/鋏角/大付属肢など 第2触角/触肢/脚など 有爪動物 触角 顎 粘液腺 葉足動物 触角 葉足 葉足 Cong et al. 2014 の解釈(前述参照)に基づくと、前部付属肢の神経は前大脳の前方のみに対応していた。これによると、ラディオドンタ類の頭部は先節(ocular somite, 汎節足動物において眼、口と前大脳が由来する体節)のみ含め、前部付属肢は前大脳性(先節由来)で、真節足動物の上唇/ハイポストーマ、および有爪動物と葉足動物の触角に相同であることが示される。この見解は2010年代後期で広く認められるようになり、前部付属肢が眼と口より前にあること、そして近縁のケリグマケラから似たような脳神経節が発見されることもこの対応関係を支持するとされる。 他方、Moysiuk & Caron 2022 の解釈(前述参照)に基づくと、前部付属肢はむしろ真節足動物における鋏角・第1触角・大付属肢などという中大脳性(第1体節由来)の前端の付属肢に相同であることが示される。もしラディオドンタ類の前部付属肢は中大脳性/第1体節由来であれば、その頭部は癒合した先節と第1体節が含まれる。この見解は2020年をはじめとして台頭しつつあり、前部付属肢と一部の真節足動物の前端の付属肢の類似性にも示唆される(例えばキリンシアの前端の付属肢は前部付属肢に酷似し、メガケイラ類の大付属肢も分化した肢節や分岐をもつ棘が前部付属肢に似る)。また、この説を踏まえると、ラディオドンタ類の先節は付属肢的な構造をもたないようになるが、由来不明な左右の甲皮がその付属肢であるという考えもある。 上述の2説は、お互いに相容れない対立仮説とされるのが一般的である。一方、前大脳性でありつつ真節足動物の中大脳性付属肢にも相同などという、両方の一部の見解を統合した仮説もある。
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