初期の車(1910年代 - 1950年)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 01:57 UTC 版)
「大統領専用車 (アメリカ合衆国)」の記事における「初期の車(1910年代 - 1950年)」の解説
タフト大統領のホワイト社製モデルM(1909年) 1909年のピアース=アローに乗るタフト大統領 ウィルソン大統領の使ったピアース=アロー車 クーリッジ大統領の使ったリンカーン・リムジン アメリカ合衆国大統領の中で初めて自動車に乗ったのはウィリアム・マッキンリー第25代大統領であるが、大統領が政府所有の自動車に乗車するようになったのは、その後任のセオドア・ルーズベルト大統領の時代になってからである。この時は、政府所有の白いスタンレー・スチーマー車が使用された。さらにルーズベルトの後任であるウィリアム・タフト大統領は、公式車としてホワイト社(White Motor Company)のモデルMスチーマーを購入・使用すると共に、これに合わせてホワイトハウスの馬小屋を自動車用ガレージに改装した。またタフトは、これとは別に公式行事用に使用するために2台のピアース=アロー(Pierce-Arrow)も発注している。 マッキンリーからタフトまで3代に渡って続いた共和党政権が終わり、次に就任したのは民主党のウッドロウ・ウィルソン大統領であったが、ウィルソン大統領以降も大統領が自動車を使用する機会は増加していった。ウィルソン大統領は馬車(horse-drawn carriages)よりも自動車を好み、ボストンの街で行われた第一次世界大戦戦勝記念パレードではキャデラックに乗車、キャデラックに乗った最初の大統領となった。さらに、ウィルソンの後任として1921年に就任したウォレン・ハーディング第29代大統領は、大統領就任式に自動車(パッカード・ツインシックス)で向かったことから、自動車で大統領就任式に向かった最初の大統領となった。 1923年に就任したカルビン・クーリッジ大統領の時代には、初めてリンカーン車が大統領専用車として納入された。この車はクーリッジ、ハーバート・フーヴァーの二代の大統領に仕えている。クーリッジはほかにも、豪華な1928年製キャデラック・タウンカーを使用した。 2011年現在のような各種の特殊装備を備えた大統領専用車が登場したのは、1938年のことである。1938年に「クイーン・メリー」と「クイーン・エリザベス」と名付けられた2台のキャデラックのコンバーチブルがアメリカ政府に納入された。当時の大型客船に因んで名付けられた全長6.55 m、重量3,470 kgのこの車は、武器収納庫、送受信兼用無線機、ヘビーデューティー仕様の発電機を備えていた。頑丈で信頼性の高いこの2台の「クイーン」は、フランクリン・ルーズベルト、ハリー・S・トルーマン、ドワイト・D・アイゼンハワーと3代の大統領に使用された。 大統領専用車として特別に製作された最初の車は、フランクリン・ルーズベルト大統領に使用された「サンシャイン・スペシャル」("Sunshine Special")と呼ばれる1939年製リンカーン V12 コンバーチブルであった。この大統領専用車は、サイレン、走行灯、送受信兼用無線機のほかに、シークレット・サービス要員が立ち乗りできるように特別に幅広いランニングボード(前後のフェンダーを繋ぐドア下にある床板)と取っ手を備えていた。しかし、1941年12月7日(現地時間,日本時間では12月8日)の真珠湾攻撃を受けて、シークレット・サービスはルーズベルト大統領の暗殺に対する懸念を強め、さらなる大統領専用車の防御装備の強化が必要と考えた。このため、翌日に開かれた上下両院合同本会議にルーズベルトが向かう際には、「サンシャイン・スペシャル」号の代役という形で、重装甲が施された1928年製キャデラック・341A タウンセダンが徴発・使用された。この徴発されたキャデラックは、「シカゴ・ギャングのボス」として知られたアル・カポネが所有していた物であり、カポネの逮捕後は財務省に没収され、「大統領の輸送」という皮肉な最後のお勤めまでは押収物保管所にしまい込まれていた物である。この車は結局、「サンシャイン・スペシャル」号が装甲板入りのドア、耐弾タイヤ、分厚い防弾ガラス、短機関銃が収納された武器庫を備える防弾・防御仕様に改造されるまで使用された。ちなみにフォード・モーター社は、この「サンシャイン・スペシャル」号を大統領府へ年間500 U.S.ドルで貸し出していた。この車は1948年まで使用され続け、2010年現在はミシガン州、ディアボーンのヘンリー・フォード博物館で常設展示されている。 また、これらの車両とは別にシークレット・サービスは、後に特製ボディの1956年、1976年、1983年製キャデラック・シリーズ75 コンバーチブルを導入し、随伴車として1990年代まで使用した。
※この「初期の車(1910年代 - 1950年)」の解説は、「大統領専用車 (アメリカ合衆国)」の解説の一部です。
「初期の車(1910年代 - 1950年)」を含む「大統領専用車 (アメリカ合衆国)」の記事については、「大統領専用車 (アメリカ合衆国)」の概要を参照ください。
- 初期の車のページへのリンク