令和元年房総半島台風によるゴルフ練習場鉄柱倒壊の無償撤去
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 22:07 UTC 版)
「フジムラ」の記事における「令和元年房総半島台風によるゴルフ練習場鉄柱倒壊の無償撤去」の解説
「市原ゴルフガーデン鉄柱倒壊事故」も参照 2019年(令和元年)9月9日の令和元年房総半島台風(台風15号)の強風で千葉県市原市のゴルフ練習場「市原ゴルフガーデン」の鉄柱が倒壊、民家16軒が損壊した。翌10日、この情報を報道で知った代表取締役会長の藤村一人は、無償での鉄柱撤去支援を思い立ったが、市原ゴルフガーデンにはネットワーク設備・通信機器の故障のため連絡が取れなかった。その後市原市役所災害対策本部へ連絡し、ゴルフ練習場から市原市役所へ鉄柱撤去の相談があった場合には、株式会社フジムラが鉄柱撤去の無償支援の意思がある旨を伝えるよう依頼したが、数日間反応はなかった。無償での鉄柱撤去を考えた背景には、フジムラは地元の江戸川区と「災害時における重機機材及びオペレーターの供給に関する協定」を締結し、区の大規模防災訓練に毎年参加しており、災害時にはすぐに出動できる体制を普段から整えているため、迅速な決断ができたものである。 9月14日に「撤去業者が決まらない」という報道を見て、市原市危機管理課へ再度連絡したところ、市の担当者間の連絡が上手くなされていなかったとのことであった。市原市危機管理課はすぐにゴルフ練習場の代理人弁護士へ連絡、株式会社フジムラの鉄柱撤去無償支援の意思を伝えた。代理人弁護士から連絡があり、9月19日・24日の協議を経て、市原ゴルフガーデンはフジムラに鉄柱撤去無償支援を依頼、まずは被災者住民へ説明会を実施することとなった。この間の9月18日・21日には、ドローン等を使用しての現地調査を実施した。 フジムラは被災者住民全世帯へ電話により説明会開催を伝えた。9月26日説明会を開催、被災住民へ鉄柱無償撤去の方針を示した。被害があった全ての世帯から同意を得た上で作業を始める方針であったが、一部同意しない住民もあった。株式会社フジムラとしては、全世帯の方からの同意がなければ工事は開始できず、当然強行するつもりも一切なかった。 10月10日、再度の被災者住民を対象にした住民説明会を開催、説明会前日の段階で7割の被災者住民より同意書が提出されていた。住民説明会において、代表取締役会長の藤村一人は出席した住民56名に対し、「私たちフジムラに任せていただいて、信頼していただいて、何としても完璧な作業をさせていただきたい。どうか信用していただき、同意の程よろしくお願い申し上げます。」と、鉄柱撤去工事に対して、同意を得られるよう説明をした。また、最終的な同意の状況による撤去工事の進め方について次のように説明をした。「同意を得たお宅と、同意の無いお宅(の間)に区画を設けて、作業は大変困難になりますが、ご同意いただいたお宅から鉄柱撤去を始めさせていただきます。」このように説明した後、大多数の住民の賛同のもと、準備工事10月15日開始・本体工事10月28日開始が決まった(説明会終了時点で、2軒の同意が得られなかった)。 代表取締役社長の藤村直人は一連の経緯について、「住民の皆さんは、作業で再び家屋が壊れたらどうなるのかと不安を抱えていた。けれど同意書にサインを貰わなければ始まらないので、撤去で生じた損壊はゴルフ練習場が掛け金を払う保険で対応することになり、納得してもらいました」「会長である私の兄が報道で被害を知って、助けになればと市役所とゴルフ練習場に撤去を申し出たんですが、最初は信じてもらえなかった。善意からとはいえ、4500万円ほどかかる作業を無償でやるなんて、私も同じ立場だったら信用できないでしょう。作業自体は大きな解体業者なら十分やれるもので、今月末には終わります」と話した。 10月15日、準備工事が開始された。また同日、全世帯が撤去工事に同意した。その模様はテレビで生中継された。代表取締役社長の藤村直人はインタビューに対し、解体撤去費用の見込金額を説明、台風の被害をテレビで見て支援を即決したことを語った。 10月28日、鉄柱撤去本体工事が開始された。防災システム研究所所長の山村武彦は出演したテレビ番組において「さすが。職人魂が動いたんだろう」と述べている。 10月30日、代表取締役社長の藤村直人は撤去作業を生中継するテレビ番組のインタビューを受け、「住民の宝物(である家屋)の屋根の上に鉄柱が乗っているということで、難易度が上がるが、慎重な作業を行っていきたい」と話した。弁護士の八代英輝氏は「一番経験のある人に任せるしかない」と話し、また総合司会の恵俊彰は「みなさんの宝物であるご自宅に鉄柱が刺さっているのですから、緊張感が伝わってくる」とコメントした。 11月7日、撤去する鉄柱13本のうち、11本目の鉄柱の撤去状況がテレビで生中継された。家屋に食い込んだ鉄柱が数分間で撤去される様子が紹介され、総合司会の恵俊彰氏は「国立競技場を解体したフジムラさんだからできた工事」と語り、また、建築エコノミスト森山高至は「株式会社フジムラは解体工事のスペシャリスト」「家屋にひっかからず、手際が良い、早い作業」と絶賛した。番組内では撤去工事について「準備段階で8割~9割が決まる」とのフジムラの考え方が紹介され、鉄柱切断の際に火災防止のために電動ノコギリが使用されたことなど、工事の詳細が紹介された。藤村直人は「被害に遭った住宅はすべて木造です。火災による二次被害を防ぐため、火花が出る切断機は使えない。時間はかかるけれども、火花の出ない切断機を使わざるを得ない状況です。ただ作業は順調に進んでいて、当初予定より1か月ほど早い11月末には終わります」と話した。 11月13日、最後となる13本目の鉄柱が撤去され、作業が完了した。当初の計画工期は、鉄柱を3~4分割に切断をして撤去する工法で、12月14日までの2ヶ月間を予定していたが、切断をせずに鉄柱をそのまま持ち上げる施工方法に変更したため、大幅に工期短縮することができた。撤去完了にあたって藤村直人は「住民が見守る中、プレッシャーがあった。二次被害もなくスムーズに終わってよかった」と話し、ある被災者住民は一連の作業について「本当に無償で丁寧にやっていただいた。言葉に表せないくらい感謝している。」と語った。13本目の撤去の模様はテレビで生中継され、総合司会の恵俊彰は「国立競技場を撤去した実績をお持ちのフジムラさんが無償で手を挙げた」と状況を説明、弁護士の八代英輝は「(鉄骨の周辺には、電線等が)知恵の輪のように絡み合っていて、神経を使う作業」と感想を述べた。またデーモン閣下は「あんなに丁寧に作業の順番を決めて進めるのは日本人ならでは。フジムラさんものすごい立派だね」と絶賛した。 2020年(令和2年)2月17日、市原市は、倒壊鉄柱を無償撤去し被害拡大を防止したとして、株式会社フジムラを表彰した。小出譲治市長は「初めて知らせを受けたとき“救いの神”が来たと思った。ありがたい限り」と功績をたたえた。
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