始めさせていただきます
別表記:始めさせて頂きます
「始めさせていただきます」とは、自分が行動を開始するにあたり「行動開始の許可を得る」という意味合いの表現によって相手への敬意を示す敬語表現である。謙譲表現に区分される。
「始めさせていただきます」という言い方そのものは、誤用というわけではない。ただし、適切に使える場面は限られる。《「始めます」を強調した尊敬・謙譲表現》のような扱いは、いうなれば濫用にあたる。
「始めさせていただきます」の文法的構造
「始めさせていただきます」という表現は、「始め(る) + させ(る) + て + いただく」と分解できる。ただし普通は「させていただく」を一個の連語として扱う。「させていただく」は、「させてもらう」に謙譲の意味を加えた言い方であり、「相手方の許しを求めて行動する」という趣旨を述べ、「相手から恩恵を得る」意を込め、それによって相手への敬意を表現する言い方である。
「させる」には「使役」の意味が含まれる。それを恭しく受け取る(=頂く)わけである。つまり、「させていただく」には「下命を拝する」というニュアンスがある。
要するに「始めさせていただく」には「自分の一存で勝手に始めるわけではない」とか「あなたの指示を受けて始めるものであります」といったニュアンスが含まれているわけである。
「始めさせていただきます」という表現は、典型的には、会議、プレゼンテーション、授業などを開始するにあたり、発表者や進行役を務める者が発する。
「始めさせていただきます」は誤用なのか、不適切な表現なのか
「始めさせていただきます」という表現そのものは、日本語の敬語表現としては正しい。適切な文脈で使用されれば誤用や不適切な表現とはされない。たとえば、フォーマルな性質のイベントで開始予定時刻に至ったことを受けて司会進行役が「それでは時間になりましたので始めさせていただきます」と述べるのは、おそらく誰にとっても適切な表現として認識される。
しかしながら「~させていただきます」は「場に不相応な過剰な敬語表現」になりやすい。たとえば自分の一存で決定できる(相手の許可を得るニュアンスを全く要しない)行動を「購入させていただきます」とか「定休日とさせていただきます」「反省させていただきます」のように表現すると、馬鹿らしく聞こえやすい。
「始めさせていただきます」の正しい表現、適切な言い換え表現
「始めさせていただきます」は、相手に十分に敬意を払い、かつ、相手の意志や事前の取り決めに従って(「開始」という)行動を取る、という場面においては、適切な表現として使える。「始めさせていただきます」が過剰な敬語表現に聞こえやすい場面では「始めます」「開始します」あるいは「開始いたします」で十分に適切といえることが多い。断定的なニュアンスを和らげたければ「始めたいと思います」「始めたく存じます」のように表現すればよい。
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