スポーツ漫画の変容とは? わかりやすく解説

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スポーツ漫画の変容

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/04 14:58 UTC 版)

スポ根」の記事における「スポーツ漫画の変容」の解説

あだち充1978年から1980年にかけて『週刊少年サンデー増刊号』において野球漫画ナイン』を連載した。この作品第1話こそ熱血風の内容で始まるものの、それ以降ラブコメものへと移行従来通りライバル登場し甲子園という目標設定してはいるものの努力勝敗固執せず、登場人物触れ合い感情機微中心に描いた。あだちは従来熱血少年ものの登場人物が「努力してますとか頑張ってますとか、大声アピールする」ことや、ラブコメものの登場人物が「秘めた思い簡単に口に出す」ことに、かねてから野暮さ」を感じていたといい、「野暮イヤだよね。それを言っちゃったおしまいだろうという感覚は、落語から教わっています」と発言している。 さらに、あだちは1981年から1986年にかけて『週刊少年サンデー』において野球漫画タッチ』を連載した。この作品マイペース主人公上杉達也双子の弟・上杉和也ヒロイン浅倉南による三角関係展開され和也の死きっかけ達也がその遺志継いで全国目指すといった内容であり、スポーツ漫画および少年漫画世界少女漫画的な手法導入した作品、「野球路線と『みゆき』におけるラブコメ青春路線合体」した作品評される。 この作品では、近親者の死とその遺志を継ぐ宿命ライバルとの対決といった図式残しつつも、「生死賭けた戦い」「精神修養」といった旧来の求道者的な価値観描かれず、登場人物間の三角関係野球について深刻な局面において、明るさ軽妙さを挟むことで敬遠させる「間を外す」手法特徴となっている。作品終盤主人公夏の甲子園出場果たしヒロインからの愛を獲得最終話では甲子園における最終的な勝者となったことが暗示される中、ライバル新田明男からの新しステージで再戦申し出拒否する言葉を語らせている。夏目1991年出版した消えた魔球 熱血スポーツ漫画いかにして燃えつきたか』の中でこの場面を採り上げ「この一言熱血スポーツものコケた」と評し一連の流れ終焉見ている。さらに夏目1984年から連載され水泳漫画バタアシ金魚』(望月峯太郎)において、「(熱血努力根性必殺技などの)かつての少年スポーツヒーローの条件全て壊れてしまった」としている。 夏目同様に評論家呉智英1970年代後半から続くギャグ化、数々スポ根作品生み出した梶原一騎傷害事件スキャンダルによる漫画界からの撤退安定成長期生まれ育った読者層との価値観断絶京都精華大学教授京都国際マンガミュージアム研究員吉村和真は、根性要素打ち消した爽やかな作品群登場スポーツ界での伝統的な指導法代わる科学的理論基づいた指導法研究開発、などといった社会情勢変化によりスポ根というジャンル終焉見ている。 この時代国内スポーツ対す価値観が、それまでの「苦しさ」から「楽しさ」へと転換しようとした時期でもあるが、1981年から『週刊少年ジャンプ』連載されサッカー漫画キャプテン翼』(高橋陽一)では従来スポ根構造逆転させ、天才型の主人公根性努力支えられ精神主義基盤とするライバル達対峙する作品となった。この作品では努力特訓成果ではなくサッカー楽しさ」「自由な発想」が勝敗決定する価値基準となり、天才主人公大空翼の壁を越えられずに葛藤する努力ライバル日向小次郎特訓成果ではなく自由な発想」という作品内価値基準気付かせることで、追いつかせる描写なされた。ただし、横浜国立大学教授海老原修は「努力より才能重んじる作品人気獲得したからといって日本人思考変わってきたとは言えない。コミック読者には努力尊ぶ声も少なくなく、この呪縛から離脱することは生半ではない」と2000年代前半時点においてもスポ根影響まだまだ日本には根強いことに言及している。 1980年代中盤に入ると、さわやかな作品コミカルな作品台頭する影で、野球漫画県立海空高校野球部員山下たろーくん』(こせきこうじ)や『名門!第三野球部』(むつ利之)などの根性前面出した作品連載され一部読者支持集めた評論家米澤嘉博は両作品を「時代華やかさ取り残され地味なもの」とした上で「『タッチ』の明るさわやかなカッコよさの後に、泥臭い青春描かれ支持されたことは記憶すべきかもしれない」と評している。 一方漫画家島本和彦は「70年代梶原一騎的なスポ根からいったん脱却しラブコメ全盛」の時代や、編集者スポ根ものを希望しても、どれもうまくいかないスポ根冬の時代」を経て1989年から連載されているボクシング漫画『はじめの一歩』森川ジョージ)によってスポ根復活したという見解示している。ただし島本は、「かっこわるい奴ががむしゃらにむしゃぶりついていくというのがよくって、また小林まことキャラが隣にいるのが絶妙なバランスなんです」と評するなど、この作品前時代的スポ根踏襲したものではなく格闘漫画1・2の三四郎』や柔道漫画柔道部物語』などを手掛けた小林まことコミカルな作風上手く活かしたものだと指摘している。編集者斎藤宣彦は1980年代が「スポ根冬の時代であった点には同意示しているものの、同作については「主人公少年精進努力し、その才能見出す者や好敵手がいる」点から「60年代から続く正統派の『スポ根作品」と位置付けている。

※この「スポーツ漫画の変容」の解説は、「スポ根」の解説の一部です。
「スポーツ漫画の変容」を含む「スポ根」の記事については、「スポ根」の概要を参照ください。

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