ベニバナセンブリとは? わかりやすく解説

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ベニバナセンブリ

(ケンタウリウム・エリトラエア から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/24 20:32 UTC 版)

ベニバナセンブリ
ベニバナセンブリ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク上群 superasterids
階級なし : キク類 asterids
階級なし : asterids I
: リンドウ目 Gentianales
: リンドウ科 Gentianaceae
: ケンタウリウム属 Centaurium
: ベニバナセンブリ C. erythraea
学名
Centaurium erythraea Rafn
シノニム
  • Centaurium minus Moench
  • Centaurium umbellatum Gilib.
  • Erythraea centaurium (L.) Pers.
  • Gentiana centaurium L. など
和名
ベニバナセンブリ、センタウリウムソウ
英名
(common) centaury
亜種
  • C. e. subsp. apertum (H.Lindb.) Greuter[2][3]
  • C. e. subsp. bernardii (Maire & Sauvage) Greuter[2][3]
  • C. e. subsp. enclusense (O.Bolòs, Molin. & P.Monts.) O.Bolòs & Vigo[2][3]
  • C. e. subsp. grandiflorum (Pers.) Melderis[2][3]
  • C. e. subsp. rumelicum (Velen.) Melderis[2][3]

ベニバナセンブリまたはセンタウリウムソウ[4]センタウリー[5](学名: Centaurium erythraea)は、リンドウ科ケンタウリウム属の草本である。元々ユーラシア北アフリカにおいて広く自生していたが、他の地域にも帰化している(参照: #分布)。特徴の一つは茎基部のロゼット状に広がる葉である(参照: #特徴)。ヨーロッパでは全草を苦味健胃薬として利用する[4](参照: #薬用)。

分類

リンネ1753年の『植物の種』(ラテン語: Species Plantarum)においてベニバナセンブリを Gentiana centaurium として記載している。現行の学名 Centaurium erythraeaカール・ゴットロープ・ラフンにより1800年に記載されたものである[3][注 1]

ケンタウリウム属(Centaurium)は The Plant List (2013) では31種、Hassler (2019) では30種が認められており、ベニバナセンブリ以外にはハナハマセンブリC. tenuiflorum)やケンタウリウム・プルケルム(C. pulchellum)およびその変種コゴメセンブリ(C. p. var. altaicum; 中国語: 百金花)といったものが属している。属名はディオスコリデスがベニバナセンブリに対して用いたギリシア語 κενταύριον に基づくが、これは#民俗で触れる逸話によるものと思われる[7]。邑田 (2003) などのように「シマセンブリ属」としている資料も存在するが、そのシマセンブリは2004年発表の Taxon 53: 725 により Centaurium japonicum から Schenkia japonica に分類が変更されており[2][8]伊藤 & 井鷺 (2018:xvii) のようにSchenkia属を指して「シマセンブリ属」と呼ぶ例が見られるようになっている。

分布

ヨーロッパからコーカサス中央アジアに広く分布する[7]。Lansdown (2013) によると

ヨーロッパ:

アジア:

アフリカ:

に自生し、さらに

ヨーロッパ:

南北アメリカ:

オセアニア:

にも帰化して定着している。

久内 (1960) によれば日本にも大正時代中期に園芸植物として導入され、広島県呉市で盛んに繁殖していた[9]

乾いた草地、開けた森林地、休閑地に生える[10]

特徴

一年草あるいは多年草[9]。茎は直立して高さ60センチメートルになり4稜、中空で[9]単生または分枝し[11]、枝はほぼ直立か斜上する[9]

葉は対生し無柄[9]、茎の基部のもの(根生葉)は卵状楕円形で[10]大きく長さ3-5センチメートル、幅1-2センチメートルでロゼット状に広がる一方、茎上葉はより小さく[9]狭くなりほぼ線形[10]、基部はわずかに茎を抱く[9]

花序は盛んに分枝し、茎葉より小型の苞葉があり、密な集散花序をなす[9]。花は花序枝の先端に1個ずつつき、ほぼ無柄[9]花冠は淡紅色または白色、基部の約3分の2は筒となり、長さ8-10ミリメートル、裂片は5つ、楕円形で長さ約6ミリメートル、平開する[9]は花冠の半分より長い。雄蕊(おしべ)は先熟、5本で花冠中部に合着、花冠口部から超出し、は黄色で花柱を囲み、裂開時に強くねじれる[9]雌蕊(めしべ)は1本、子房上位で1室、花柱は長く、柱頭は平らで2岐するが、成熟前には内向きに合わさって頭状となる[9]

利用

全草が薬用となる。

薬用

全草が非常に苦く[4]、同じリンドウ科のゲンチアナGentiana lutea)にも含まれるセコイリドイド類の複数種の苦味成分を有し[5]加水分解によりエリスロセンタウリン(erythrocentaurine)を生ずる苦味配糖体アルカロイドのゲンチアニン(gentianine)を含む[4][注 2]。含有成分は3,500倍希釈でも検出することが可能である[5]

欧州医薬品庁の薬草医薬品委員会(: Committee on Herbal Medicinal Products)はベニバナセンブリが消化胃腸の不調、一時的な食欲不振に有効であるとしており、乾燥させて細かくしたものや地上部を粉末にしたものが用いられる[13]。具体的には胃液の分泌を促進させ食物を分解しやすくする、食欲を刺激し、胆汁の産生を増加させるという効果があるが数週間以上服用を続ける必要があり、含有成分が消化器上部に反射作用を刺激するよう、ゆっくりすすって服用する[5]

園芸

ベニバナセンブリは園芸用に栽培もされている。排水性のよい砂質の土壌に植えるのが適切である[7][11]。肥えた土地では草丈が高くなり、猛烈な勢いで繁茂するとされる[4]。花期は6-10月である[4]

民俗

アプレイウス (Pseudo-Apuleiusにより描かれたベニバナセンブリ(6世紀)

ギリシア神話では半人半馬の種族ケンタウロスの賢者であるケイローンが弟子のヘラクレスに誤って射られた毒矢による致命傷を薬草で治癒しようとした[14]が、この逸話がギリシア語κενταύριον や属名の Centaurium[7]、英名 common centaury の由来とされる[4]

諸言語における呼称

脚注

注釈

  1. ^ 植物の学名ではトートニム(属名=種小名となること)が認められていないため、Centaurium 属に移動された時点で最初の種小名 centaurium を使うことができなくなる[6]。このためリンネが最初に与えた種小名が変更されている。
  2. ^ エリスロセンタウリンやゲンチアニンは同じリンドウ科のセンブリSwertia japonica)に含まれる苦味配糖体スウェルチアマリン(swertiamarin)を酵素加水分解することによって得られる[12]

出典

  1. ^ a b Lansdown (2013).
  2. ^ a b c d e f Hassler (2019).
  3. ^ a b c d e f The Plant List (2013).
  4. ^ a b c d e f g 岡田 (2002).
  5. ^ a b c d シェヴァリエ (2000).
  6. ^ 国際藻類・菌類・植物命名規約 深圳規約第23.4節
  7. ^ a b c d e 佐野・塚本 (1988).
  8. ^ 米倉・梶田 (2003-).
  9. ^ a b c d e f g h i j k l 邑田 (2003).
  10. ^ a b c 林・古里 (1986).
  11. ^ a b ブリッケル (2003).
  12. ^ 藤井幹雄 ほか「スウェルチアマリンの酵素加水分解によるゲンチアニンオキシドの選択的合成
  13. ^ Herbal medicine: summary for the public Centaury Centaurium erythraea Rafn. s.l., herba”. European Medicines Agency (2016年2月2日). 2019年3月28日閲覧。
  14. ^ Tobyn, Denham & Whitelegg (2011:137).
  15. ^ a b Τεσσερομμάτη (2016:272).
  16. ^ Łuczaj (2008:65).
  17. ^ Jankevičienė (1980:60).

参考文献

英語:

日本語:

  • 伊藤, 元己井鷺, 裕司『新しい植物分類体系 APGでみる日本の植物』文一総合出版、2018年。ISBN 978-4-8299-6530-6 
  • 岡田稔 新訂監修『原色牧野和漢薬草大圖鑑』北隆館、2002年、402頁。
  • 佐野泰、塚本洋太郎「ケンタウリウム〔属〕」 『園芸植物大事典2』小学館、1988年、233-4頁。ISBN 4-09-305102-X
  • アンドリュー・シェヴァリエ 著、難波恒雄 監訳『世界薬用植物百科事典』誠文堂新光社、2000年、204頁。ISBN 4-416-40001-2(原書: The Encyclopedia of Medicinal Plants, 1996.)
  • 林弥栄、古里和夫 監修『原色世界植物大圖鑑』北隆館、1986年、33頁。
  • クリストファー・ブリッケル 編集責任、横井政人 監訳『A-Z 園芸植物百科事典』誠文堂新光社、2003年、245頁。ISBN 4-416-40300-3
  • 邑田仁「リンドウ科 GENTIANACEAE」 清水建美 編『日本の帰化植物』平凡社、2003年、156頁。
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-).「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info (2019年3月29日).

リトアニア語:

ラテン語:

ポーランド語:

ギリシャ語:

関連文献

日本語:

デンマーク語:

関連項目




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