クーレース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/03 02:33 UTC 版)

クーレース[2](古希: Κούρης, Kures)はギリシア神話に登場するクレーテー島の半神たち(精霊[3])[2]。複数形はクーレーテス(古希: Κουρῆτες, Kuretes)[2]。日本語では長母音を省略してクレス、クレテスとも表記される[4]。
概要
クーレースたちの数は通常7人とされる(他にも2人、9人、100人とする説もある[5])[2]。その出自については諸説あり、ガイアないしレアーの子だとも[2]、ソーコスとコムベー、ゼウスとヘーラー、アポローンとニュンペーのダナイスの子だともいわれる[5]。ヘーシオドス風の断片によればヘカテロスという者の5人の娘から、山のニュンペーたちやサテュロスたちや、戯れ好きの踊り手の神々クーレーテスが生まれたとされている[3]。
シケリアのディオドーロスによれば彼らは森や谷間に住んでいたが、様々な文明の考案者で牧畜や養蜂、狩猟、弓矢の使用、平和な群居は皆彼らの工夫によるという[3]。彼らは野山の精で人間生活の庇護者であり、古代ローマのゲニウスの様な存在であったと考えられる[3]。ローマ時代の碑銘にも「牝牛らを護るクーレーテスに」という願文が発見されており、その信仰がクレーテー島奥地に後代まで残っていたことを示している[3]。
キュベレーの従者であるコリュバースたちや、カベイロスたち、ダクテュロスたちと混同される[6]。また、ヘカテーの部下とされることもある[3]。
神話
生まれたばかりのゼウスの守護をレアーから託され、彼らはゼウスの泣き声がクロノスの耳に入らない様にするために武装して楯を槍で打ち鳴らしながら踊ったという[2]。これは、紀元前3,000-2,000年紀に遡るミーノーア文明時代から行われていたクレーテー島の古い軍神の宗教儀式に由来する神話と考えられ、同島ではゼウス・クーロス (Zeus Kuros) の祭礼の際に、若者たちが武装して楯を打ち叩きつつ踊り回る習わしがあったとされ、クーレースの語源も「若者」を意味するクーロス (kuros) と考えられる[2]。この武装の踊りは豊作を妨げる魔物を祓う意味合いが強かったと思われ、クーレーテスはゼウス・クーロス配下の野山の豊饒の精だったと考えられる[3]。
彼らはまた、レートーが出産する際にも武具を鳴り響かせてヘーラーに気付かれない様にしたといわれる[2]。
彼らは予言の力を持ち、ミーノースにその子グラウコスの蘇生法を教えたとされる[5]。
彼らをソーコスとコムベーの子とする場合、乱暴な父に追われて故郷のエウボイアを出て母と共にクレーテー島からプリュギアに行き、そこでディオニューソスを育てて、アッティカに移り、ケクロプス王の援助でソーコスに復讐した後、エウボイアに帰ったという話が伝わっている[5]。ただし、このクーレースたちは上述の精霊であるクーレースとは別であるともされる[3]。
また、彼らはゼウスとイーオーの子であるエパポスをヘーラーの命により行方不明にしたため、怒ったゼウスの雷霆により撃ち殺されたという[5]。この話は、ディオニューソス(ザグレウス)がヘーラーの企みにより差し向けられたティーターン神族に襲われ殺された話と関連があるとされる[7][注釈 1]。
その他のクーレース
アイトーリアの民族でカリュドーン人と敵対し、アイトーロスにより追い払われた[5]。上述のクーレースと同一視されることもある[5]。
脚注
注釈
出典
参考文献
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