カノニカル・ファイブとは? わかりやすく解説

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カノニカル・ファイブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 00:29 UTC 版)

切り裂きジャック」の記事における「カノニカル・ファイブ」の解説

切り裂きジャック犠牲者として挙げられる5人(カノニカル・ファイブ)は、メアリー・アン・ニコルズアニー・チャップマンエリザベス・ストライドキャサリン・エドウッズメアリー・ジェーン・ケリーである。 1888年8月31日金曜日午前3時40分頃、ホワイトチャペルのバックズ・ロウ(現在のダーワード・ストリート)でメアリー・アン・ニコルズ遺体発見された。生きているニコルズ最後に目撃されたのは、遺体発見の約1時間前に、ホワイトチャペル・ロード方面歩いている彼女を、スピタルフィールズのスロール・ストリートにある共同下宿寝泊まりしていたエミリー・ホランド夫人目撃したというものであった被害者の喉は2つの深い切り傷切断されており、そのうち1つ椎骨までの組織を完全に切断していた。膣には2回の刺し傷見られ下腹部には深くザラザラした傷で一部裂けており、腸がはみ出していた。腹部両側にも同じナイフによっていくつかの切り込み入っていた。これらの傷はいずれ下向き突き刺すようにして負わされていた。 それから約1週間後9月8日土曜日午前6時頃、スピタルフィールズのハンバリー・ストリート29番地の裏庭の出入り口階段付近で、アニー・チャップマン遺体発見された。ニコルズ場合同様に喉は2つの深い切創があった。腹部は完全に切り開かれており、胃の一部が左肩の上置かれ、また切除された皮膚と肉の一部小腸右肩の上置かれていた。チャップマン検死では、子宮膀胱膣の一部切除されていることがわかったチャップマン死因審問では、エリザベス・ロングが、午前5時半頃にチャップマン茶色鹿撃ち帽と暗い色のオーバーコート着た黒髪の男一緒にハンバリー・ストリート29番地の外に立っているのを見た証言したエリザベスによれば、男はチャップマンに「どう?(Will you?)」と聞き、彼女が「いいわ(Yes)」と答えていたという。 エリザベス・ストライドキャサリン・エドウッズは、9月29日土曜から30日日曜にかけて殺害された。ストライド遺体は、30日午前1時頃、ワイトチャペルのバーナー・ストリート(現在のヘンリック・ストリート)の外れにあるダットフィールズ・ヤードで発見された。首に6インチ切り傷があり、死因は左頸動脈気管切断で、そのまま切創は右顎の下で止まっていた。彼女の身体にはそれ以外損傷がなかったため、これがジャックよるものなのか、または犯行途中で中断したのかは不明である。後に29日深夜にバーナー・ストリートの近くストライドが男と一緒にいるのを見たという複数目撃証言警察寄せられたが、それぞれの証言異なっていた。ある者は連れの男は色白であったと言い、またある者は色黒だったと言い別の者はみすぼらしい服を着ていたと言い、しかし、身なり良かったという証言もあった。 エドウッズの遺体発見は、ストライド遺体発見45分後にシティのマイター・スクエア(英語版)で発見された。彼女の喉は切り裂かれ腹部には深く長いギザギザ裂傷見られ、腸は彼女の右肩かけられていた。左の腎臓子宮大部分取り除かれていた上、彼女の顔鼻の切除、頬の切創、さらにそれぞれのまぶたが4分の1インチ5分の1インチそれぞれ切り裂かれ、醜い相貌となっていた 。頬には三角形切り込みがあり、その頂点はエドウッズの目を指していた。また、その後の調査の中で、彼女の衣服の中から右耳の耳介耳たぶ一部発見された。検死した検死医は、これらの切断について「少なくとも5分はかかったとみられる」と見解述べた。 ジョセフ・ラウェンデ(英語版)という地元タバコセールスマンは、殺人事件があったとみられる直前2人友人と共に広場通りかかった際、みすぼらしい外見白髪の男一緒にいる、エドウッズと思われる女性目撃した証言している。しかし、ラウェンデの仲間からは同じ目撃情報得られなかった。この同夜に起こった2件の殺人は「ダブル・イベント」と呼ばれ知られるようになったホワイトチャペルのゴールストン・ストリートにある長屋入り口にて、午前2時55分にエドウッズの血まみれエプロン一部発見された。このエプロン真上にあたる壁にはチョークで「The Juwes are The men That Will Not Blamed for nothing.」と書かれていた。この落書きは後に「ゴールストン・ストリートの落書き」と名付けられ知られているものである。このメッセージ一連の殺人事件犯人特定のユダヤ人もしくはユダヤ人全般あるよう読めた。しかし、これは犯人がわざとエプロン残して書いたものなのか、それとも事件はまったく関係がないもの(あるいは便乗した愉快犯的なもの)なのかは不明である。このような落書きホワイトチャペルではありふれたものであった。ただ、警視総監英語版)のチャールズ・ウォーレン英語版)は、これが反ユダヤ主義者たちの暴動引き起こすことを懸念し夜明け前落書きを消すように命じた11月9日金曜日午前10時45分、スピタルフィールズのドーセット・ストリートの外れにあるミラーズ・コート13番地の一室で、この部屋住人であるメアリー・ジェーン・ケリー遺体発見された。彼女の身体広範囲渡って損壊され内臓取り除かれた状態でベッドの上横たわっていた。その顔は「見分けつかないほど切り刻まれて」おり、喉の切創背骨にまで至り腹部にはほとんど内臓残っていなかった。子宮腎臓片方乳房は頭の下に置かれその他の臓器ベッド足元に腹部大腿部はベッドサイドテーブルに置かれていた。心臓だけが犯行現場から消えていた。 カノニカル・ファイブと呼ばれる5つケース特徴は、いずれも月末から1週間後週末あるいはそれに近い日の夜に犯行が行われている。一連の殺人事件における遺体損壊だんだんと酷くなっていったストライド件の犯行中断した可能性がある)。最初ニコルズはどの臓器欠損していなかった。次のチャップマン子宮膀胱膣の一部摘出されていた。4番目のエドウッズは子宮と左の腎臓切除され、顔が切り取られていた。最後ケリー遺体は、顔は「四方八方から切り刻まれ」、首元の傷は骨にまで達し心臓だけがこの犯行現場から持ち去られていた。 歴史的に見て、この5つ殺人事件同一犯による犯行とみて、また他の事件排除する考えは、当時の記録由来する1894年ロンドン警視庁警部補犯罪捜査局(英語版)(CID)の捜査主任であったメルヴィル・マクノートン(英語版)卿は「ホワイトチャペル殺人鬼犠牲者は5人だった。そう、5人だけであった(the Whitechapel murderer had 5 victims?& 5 victims only)」という報告書書いた同様に1888年11月10日監察医のトマス・ボンド(英語版)がCID捜査主任であるロバート・アンダーソン英語版)に宛てた手紙中でも、カノニカル・ファイブの件は共通的なものと言及されていた。 研究者中には、これら事件の何件かは間違いなく同一犯だが、一部はこの犯人とは無関係別の殺人犯よるもの主張する者もいる。スチュワート・エヴァンス(Stewart P. Evans)とドナルド・ランベロー(英語版)は、カノニカル・ファイブは「切り裂きジャック神話俗説)」であり、3つの事件ニコルズチャップマン、エドウッズ)は同一犯と断定できるが、ストライドケリーは同じ犯人よるもの確証がないと指摘している。逆にカノニカル・ファイブにタブラムの件を加えた6件を同一犯とみなしている者もいる。病理医ジョージ・バグスター・フィリップス(英語版)の助手であるパーシー・クラーク医師は、殺人事件のうち同一犯は3件だけであり、それ以外は「心神耗弱者による模倣犯罪」だと指摘している。マクノートン卿が捜査加わったのは事件翌年であり、彼の記録には容疑者についての重大な事実誤認含まれている。

※この「カノニカル・ファイブ」の解説は、「切り裂きジャック」の解説の一部です。
「カノニカル・ファイブ」を含む「切り裂きジャック」の記事については、「切り裂きジャック」の概要を参照ください。

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