EDM
「EDM」とは・「EDM」の意味
「EDM」とは「エレクトロニック・ダンス・ミュージック(Electronic Dance Music)」の略であり、シンセサイザーやシーケンサーなどを使った電子音楽である。クラブや野外イベントなどで注目を集め、聴衆の高揚感を煽ることが主な目的だ。そのため、EDMはほかのポップミュージックと比べると、極端な転調やテンポの速さなどが特徴的である。EDMはじっくり聴きこむタイプの音楽ではないので、メロディーや歌詞も分かりやすさを重視して作られてきた。聴衆が演奏者と一緒に合唱できるようなコーラスも多い。日本でもEDMは有名である。人気DJやビートメイカーがEDMを制作してきたほか、AKB48やPerfume、sixtonesなどのアイドルグループも同ジャンルに挑戦してきた。
なお、ビジネスシーンで使われる「EDM」は「エレクトロニック・データ・マーケティング(Electoronic Data Marketing)」の略であり、音楽のEDMとは別物だ。エレクトロニック・データ・マーケティングとは、Eメールを利用した市場開拓の手法である。具体的には、企業がメール広告によって見込み顧客に訴求したり、メールの反応をデータベース化したりすることだ。エレクトロニック・データ・マーケティングという意味でEDMを使う機会はそれほど多くない。そのかわり、ビジネスシーンでEDMといえば、ほとんどはエレクトロニック・データ・マーケティングのことである。
EDMとは似て非なる音楽も多い。たとえば、「エレクトロニカ」はEDMと同じく、電子音楽の一種である。ただ、エレクトロニカは鑑賞用の音楽という側面が強い。オウテカやエイフェックス・ツイン、レイ・ハラカミといったエレクトロニカのアーティストたちは、必ずしも聴衆を高揚させようとはせず、作品としての完成度を大切にしてきた。彼らのアルバムやライブは非常にコンセプチュアルであり、享楽的なEDMとは大きく異なる。
気軽に楽しめるダンスミュージックという点では、EDMはエレクトロニカよりもユーロビートに近いジャンルだといえるだろう。違いを挙げるなら、ユーロビートはEDMのルーツともいえる点だ。1980~90年代に最盛期を迎えたユーロビートは、高速テンポとキャッチーなメロディーが魅力だった。ユーロビートにヒップホップやR&Bなどの要素を織り交ぜ、緩急をつけたのがEDMである。
EDMの流行は、ユーロビートが衰退した2000年代後半から2010年代までだ。2020年代に入り、EDMの勢いは以前ほどではなくなっていった。しかし、tiktokのBGMにEDMを使用する人もいて、まったく廃れてしまったわけではない。一方で、「EDMはどんな曲?分かりにくい」と考えている音楽ファンも多い。なぜなら、電子機器によるダンスミュージックというスタイル自体が一般化しすぎて、EDMが特別なジャンルではなくなったからである。逆をいえば、クラブを想定していないポップスや、アニメソングなど、さまざまなジャンルの中にEDMの精神は残っているといえるだろう。
代表アーティストや音楽としての歴史も解説!「EDM」の熟語・言い回し
EDMアーティストとは
世界的にEDMが広がったとき、中心的な役割を果たしたのがカルヴィン・ハリスとアヴィーチーだ。ハリスはスコットランド出身のDJ、トラックメイカーであり、数々のミュージシャンとコラボレーションしながら業界内での地位を築いていった。ハリスの人気を不動のものとしたのは、リアーナにフィーチャリングされた2011年のシングル「ウィ・ファウンド・ラブ」である。同曲はきらびやかなアレンジのEDMナンバーであり、クラブとラジオの両方を席巻した。「望みのない場所で私たちは愛を探していた」というコーラスの歌詞は、EDMの刹那的な享楽性を的確に表現しているとされる。
アヴィーチーはスウェーデン出身のトラックメイカーであり、10代のころから音楽活動を開始していた。電子音楽に夢中だったアヴィーチーはソフトを使った楽曲制作にのめりこんでいく。アヴィーチーは別名義でのシングル「ブロマンス」を2010年にヒットさせてから、欧米を代表するEDMアーティストの1人となった。彼の楽曲は華やかでありながら、牧歌的なメロディーラインを持っており、非常に個性的な構造を持っていた。2013年のシングル「レベルス」は世界中のチャートで1位を獲得し、生涯にリリースした3枚のスタジオアルバムはいずれも大きな成功を収めている。
人気絶頂の2018年4月20日、アヴィーチーは死亡が報道された。わずか28歳だった。晩年のアヴィーチーは健康状態に不安を抱えていたものの、死因は不明のままである。死後もアヴィーチーの楽曲はリリースされており、EDM業界における存在感は失われなかった。
ハリスやアヴィーチーに次ぐEDMの人気アクトには、ゼッドもいる。ゼッドはロシア生まれ、ドイツ育ちのアーティストだ。2009年ごろから電子音楽を志し始めたゼッドは、2012年のアルバム「クラリティ」と同名のリードシングルが大絶賛を受ける。もともとロックバンドに所属していたゼッドは、EDMに激しいメロディーを取り入れた。また、音楽的素養の豊かさを生かし、ヒップホップやクラシック、ダブステップにも接近している。ゼッドはEDMの可能性を広げた重要なクリエイターだといえるだろう。
ゼッドはプロデュースやリミックスの能力の高さでも知られている。レディ・ガガやアリアナ・グランデ、安室奈美恵などの大物がゼッドに楽曲のリミックスを依頼しており、いずれも大きな注目を集めた。そのほかの海外EDMアーティストでは、デヴィッド・ゲッタ やマシュメロ、アラン・ウォーカー、アレッソなどが人気だ。
日本においても、EDMは熱心なファンを持つ音楽ジャンルである。国内の代表的なアーティストには、KSUKE、SHINTARO、Yamatoなどが挙げられる。EDMを専門的に制作してきたわけではないものの、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅのプロデューサーである中田ヤスタカもEDM調のトラックを数多く制作してきた。これらの日本人アーティストは海外での知名度もあり、イベントやフェスにも招待されている存在である。
音楽EDMとは
EDMを音楽の正式なジャンルとして認識し、理論や歴史を正確に語ろうとするとき、「音楽EDM」という呼び方をすることがある。わざわざ「音楽EDM」という呼び方をするのは、EDMに対する批判的な意見も少なくないからだ。EDMはあくまでもイベントやフェスティバルで、聴衆の享楽性に奉仕する楽曲である。そのため、純粋な音楽ジャンルというよりも、盛り上げ方のスタイルや若者文化の一部分だと評する傾向もあった。さらに、EDMがヒップホップやロック、エレクトロニカに比べ、深いメッセージ性をともなっていないことも批判の根拠になっていた。
しかし2010年代以降、ゼッドやメデオンといったアーティストはほかのジャンルと交流をしながら、EDMの音楽性を深く掘り下げていく。カルヴィン・ハリスは2017年のアルバム「ファンク・ウェーヴ・バウンシズVol.1」で新進気鋭のヒップホップ・アーティストとコラボレーションし、最高傑作との反響を呼ぶ。彼らの活躍を受けて、音楽リスナーの中でもEDMの魅力を再認識する風潮は高まった。
音楽EDMの再評価において、重要な役割を果たしたアーティストがアリアナ・グランデである。幼少時より芸能活動を行っていたアリアナ・グランデは、アイドル的な人気でのみ語られていたシンガーだった。しかし、2014年のアルバム「マイ・エヴリシング」でアリアナ・グランデは力強いパフォーマーへとイメージチェンジを成功させる。アルバムの人気トラック「ブレイク・フリー」はグランデの代表曲になり、EDMでも深いメッセージを表現できる証明となった。
イー‐ディー‐エム【EDM】
読み方:いーでぃーえむ
《electronic dance music》シンセサイザーなど電子楽器を多用したダンス音楽。エレクトロニックダンスミュージック。
イー‐ディー‐エム【EDM】
読み方:いーでぃーえむ
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