アメリカ合衆国の政教分離とは? わかりやすく解説

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アメリカ合衆国の政教分離

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 00:01 UTC 版)

政教分離原則」の記事における「アメリカ合衆国の政教分離」の解説

合衆国における政教分離形成過程については「アメリカ合衆国における政教分離の歴史」を参照 「:en:Accommodationism」も参照 アメリカ合衆国憲法修正第1条国教樹立禁じている。憲法修正第1条における政教分離原則目的は、市民宗教的自由の保護であるため、宗教の自由活動私的公的領域において保障される。そのため、特定の宗教政治に関わっても政教分離違反にならず、フランス比べて宗教機能する場がかなり広い。 フランスでは政治宗教厳格に分離される(Separation of Religion and Politics)のに対してアメリカでは政府特定の宗教団体との分離(Separation of Church and State)である。アメリカにおいては国家特定の教会教派のために公金使ったり、特定の教会教派信者への優遇措置違憲なのであり、多様な教会的伝統が国家形成積極的に参与できるよう、特定の教派突出した政治権力行使できない枠組み用意するという点に重点置かれている。 アメリカではキリスト教的伝統は尊重されアメリカ公的領域において一定の役割を果たすことは伝統的に是認されている。アメリカ合衆国ドルの紙幣コインには"IN GOD WE TRUST(我々は神を信じる)"の文言刻まれ印刷されているし、アメリカ合衆国議会には宣教師専属している。 また、証言アメリカ合衆国大統領などの公職就任の際に、宣誓もしくは確約 (Affirmation) が求められるが、このうち宣誓は神に対す誓いであり、神に言及しない確約クエーカーなどの宣誓禁ずる教派信徒のために用意されたものであるロバート・ニーリー・ベラーによればアメリカには、教会明確に分化された高度に制度化された「市民宗教」が、アメリカ人の生活の枠組み宗教的次元付与しており、アメリカ最大公約数的な宗教アメリカ公的領域一定の役割を果たすことが伝統的に是認されている。 この市民宗教では、アメリカは神がイスラエルの民に与えると約束した約束の地「イスラエル」アメリカ人は「選ばれ人々(選民)」、独立革命は「出エジプト」、独立宣言憲法は「聖典」、ワシントンは「モーセ」、南北戦争リンカーンの死はキリストの死と再生結び付けられており、「世界光明」であるアメリカ世界規模拡大することが目指される。 森孝一はベラーの「市民宗教」を「見えざる国教」意訳し、巡礼父祖ピルグリム・ファーザーズ)のキリスト教と、建国父祖(ファウンディング・ファーザーズ)の啓蒙思想とが結合したものがアメリカ「見えざる国教」とする。独立宣言では、 all Men are created equal, that they are endowed by their Creator with certain unalienable Rightsすべての人間は神によって平等に造られ一定の譲り渡すことのできない権利与えられている. — 独立宣言,1776.森孝一訳 と明記されるが、森孝一は「すべての人間は平等である」と非宗教的に表現することもできたが、キリスト教的な表現になったのは当時大半人々にとって自然であったからで、この状況21世紀現在でも変わらずアメリカ人口90%がユダヤ・キリスト教的伝統の宗教信仰している。 2001年アメリカ同時多発テロ事件発生して3日後の9月14日にはワシントン大聖堂追悼礼拝実施された。ワシントン大聖堂イングランド国教会系統聖公会所属する教会であり、森孝一は政教分離の原則犯して国家統合優先させたい意図があったとしている。追悼礼拝ではイスラーム聖職者ユダヤ教聖職者招かれバクスター大聖堂牧師は「アブラハムムハンマド、そして私たちの主であるイエス・キリスト父なる神」と呼びかけユダヤ教キリスト教イスラム教3つのセム的一神教(アブラハムの宗教)が同じ一つの神を信仰する兄弟であるというメッセージこめられた。ブッシュ大統領は、アメリカへの攻撃は、創造主アメリカ与えた自由と平等」という理想への攻撃であり、この理想すべての人類希望である、と演説語った司法では、合衆国最高裁判所1961年のTorcaso v. Watkins訴訟連邦・州政府において宗教に関する質問検査査察などを違憲とした。1971年レモン対カーツマン事件では、国家ゆるされる宗教的行為条件として、政府行為適法世俗的な目的をもつこと、宗教助長または抑制しないこと、政府と宗教過度の関係をもたらさないことの3要件判示した。 2002年の「星条旗対す宣誓」の中の「one Nation under God(神の下にある一つ国家)」という言葉対す無神論者による訴訟において、サンフランシスコ第9連邦控訴裁判所違憲判決したが、連邦議会圧倒的多数反対決議し世論調査では89%がこの言葉を残すべきであると答えた最高裁2005年にマクリアリィ郡 v.アメリカ自由人権協会訴訟で、公共の場における他の宗教文書なしの聖書のみ展示違憲判示した。同年刑務所における無神論者服役議論できる集会についてのCutter v. Wilkinson無神論宗教同等保護されるべき法益であると判示した。 マーティ、ピラード、リンダーによれば現在のアメリカでは大統領超越的な価値基準から国家国民行為評価するリンカーンのような預言者型」から、国家自体究極基準となり大統領国民国家賛美求める「司祭型」へ移行してきた。コールズは「預言者型」に「リベラルな市民宗教」を、「司祭型」に「保守的な市民宗教」が対応しているとする一方で蓮見博昭市民宗教保守リベラル分裂して国民統合のための装置として機能しなくなった指摘している。 公立学校宗教性帯びた教育をすることに対して連邦最高裁厳格であり、進化論教育禁じ州法創造論教育義務づける州法英語版)が違憲判断された。これを受け、一部の親が子どもを宗教系の学校通わせる動きがある。

※この「アメリカ合衆国の政教分離」の解説は、「政教分離原則」の解説の一部です。
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