やらせリンチ事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 20:30 UTC 版)
「アフタヌーンショー」の記事における「やらせリンチ事件」の解説
1985年8月3日の夜、東京都福生市内の多摩川河川敷で暴走族構成員ら約60人がバーベキューパーティーをしていたところ、参加していた「女番長」2人が「ヤキを入れる」として女子中学生5人に殴る蹴るといったリンチを加えたという映像の一部始終を同年8月20日に「激写!・中学女番長!!・セックス・リンチ全告白」 というテーマで放送した。 番組を元に警視庁少年二課と福生署が捜査を行い、同年10月8日までに、暴行した無職の女性2人(16、17、当時)を暴力行為容疑で、暴行を指示した石工の男性(30、当時)を暴力行為教唆容疑でそれぞれ逮捕した。参加者の証言からテレビ局の関与も疑われたが、テレビ朝日の広報部長は、映像はパーティーの情報を得て遠方から隠し撮りしたものとして、「やらせ」を否定していた。しかしテレビ朝日第一制作局に勤務するディレクターのN(33、当時)の指示でリンチが行われていたとして、Nに対して暴力行為教唆容疑で逮捕状が出された。11日には、元暴走族の無職の男性(28、当時)が暴力行為教唆容疑での逮捕者に加わった。その後の報道によれば、Nはこの男性に「リンチショーを撮影したい」と持ち掛けたことから、男性はNに石工を紹介。石工は、酔った参加者による喧嘩が起きるとして、毎年の恒例行事だったバーベキューパーティーをNに伝えていた。 Nは撮影時にも現場で指示を出しており、無職の女性に更なる暴力をけしかけていた。撮影後は石工に対し、Nから14万円の謝礼が渡されていた。なおリンチを受けた5人は事情を知らされていなかった。 14日の放送では、社長の田代喜久雄が視聴者に向けて謝罪を行い、「テレビ取材の在り方 - 暴力事件放送の反省」と題して田代、藤原弘達、田原総一朗らがコマーシャル抜きで討論を行った。同日午後に取締役の奈良井仁一が記者会見を行い、リンチがやらせであると認めた。同日に福生市議会はテレビ朝日への抗議書を全会一致で可決している。この後多くのスポンサー企業がイメージ悪化を懸念してスポンサーを降板。最終的に全社が降板し、後番組開始まで提供を見合わせた企業もあった。 15日には、リンチを受けた中学生の母親の1人が9月23日に福生署へ告訴状を提出した日の夜、日本国有鉄道(国鉄、1987年より現在のJR東日本)青梅線の踏切から電車に飛び込んで即死していた事が判明した。「死にます」というメモが残されていた事から自殺と断定されたが、家庭内でも悩んでおり、動機は不明とされた。 16日の放送では、司会の川崎が番組中に降板を表明。レポーターのばばこういちも同調した。同日には、Nも逮捕。テレビ朝日では即日、Nを懲戒解雇に処した。日本の放送局において、番組制作を巡る刑事事件で担当ディレクターが逮捕された事例は、この事件が初めてとされる。 テレビ朝日では、田代を1ヶ月、奈良井を3ヶ月、他の常勤取締役全員を1ヶ月の減給に処す とともに、当番組を即刻打ち切ることを決定。18日にノンスポンサーのまま最終回が放送された。 最終回はそれまでスポンサーのカウキャッチャーCMだった冒頭1分は控え室からスタジオに入っていく川崎の姿を映してスタートした。スタジオにはこれまで番組に携わったリポーターや文化人が集まり20年半を振り替えった。そしてエンディングで川崎は「番組は今日でおしまいですけどもテレビ朝日を是非応援して下さい。スタッフはそのために本当に努力しています。外の人間の僕が見ても痛ましいくらいに、とにかくみんな一丸になっていい番組を作るために努力しています。」と述べ、そしてスタジオに集まったスタッフに向けて涙を浮かべながら「とにかく逆境はチャンスですよ。辛い時こそ一丸になって、世間の視聴者の信用を得るために、うちに帰らずにいい番組の為に会社に報いてください。視聴者に報いてください。」と呼び掛けた。最後は「私達は終わりますけれども、次の企画は素晴らしい番組を練っておりますので是非ご期待ください。僕は今日から送り手から、観る方に変わります。」と挨拶して視聴者に別れを告げた。 なお、終了直前はアーク放送センターにスタジオが移転したが、そこからの放送も僅か3週間だった。 26日に八王子区検察庁はNに罰金10万円、石工、無職の男にそれぞれ罰金5万円の略式命令を下した。無職の女2名は家庭裁判所へ送致された。 なお、11月1日には日本国内の放送局全社に対して、当時放送行政を管轄していた郵政省から無線局免許状の再交付が実施された。同省は再交付に際して、民間放送事業者(民放)各社に「言論報道機関としての社会的責任を深く認識するように」との要望書を提出。テレビ朝日に対しては、二度と不祥事を起こさないよう厳重注意が出された。
※この「やらせリンチ事件」の解説は、「アフタヌーンショー」の解説の一部です。
「やらせリンチ事件」を含む「アフタヌーンショー」の記事については、「アフタヌーンショー」の概要を参照ください。
- やらせリンチ事件のページへのリンク