「わいせつ」容疑による逮捕と裁判
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「ろくでなし子」の記事における「「わいせつ」容疑による逮捕と裁判」の解説
クラウドファンディングとデータ配布 2013年6月18日、ろくでなし子自身の陰部を3Dスキャナーを利用して作成する「マンボート」の資金募集をクラウドファンディングで開始した。資金提供のリターンとして、ろくでなし子は自身の外陰部の3Dデータを援助者たちに渡した。100万円の資金調達は無事に達成し、進水式が2013年10月19日に行われた。これは海外の複数のメディアでも報道された。 最初の逮捕 2014年7月12日、自身の女性器を3Dプリンタ用データにし、2013年10月以降、活動資金を寄付した男性らにデータ送付の形でダウンロードさせたとして警視庁は わいせつ物頒布等の罪等の疑いでろくでなし子を逮捕した。3Dデータをわいせつ物と認定するのは全国で初の事案となる。本人は「警察がわいせつ物と認めたことに納得がいかない。私にとっては手足と一緒」と容疑を否認した。この時押収された「まん拓」は本人のもの以外に、タレントの岩井志麻子の型も押収された。突然の逮捕であったため身の回りの整理もできず、持ち込みも制限されたため、身の回り品を留置所で購入した。翌日15日、この逮捕に暴力性を感じ、思想の弾圧を危惧したとして、男性の起草者によりchange.orgにて警視庁に対し、ろくでなし子の即時釈放を求める署名活動が開始された。さらに翌日16日には目標の1万5000人の署名を達成し、署名は警視庁に送られた。逮捕された時点ではろくでなし子は罰金を払って留置所を出る予定だったが、自分の活動の否定に繋がると知って、裁判で争うことを決めた。7月15日に裁判官が勾留決定(被疑者の身柄を拘束するという決定)を出していた。弁護側はこれに対し「準抗告」という不服申立手続きをとり、これが裁判所に認められたため、釈放が決定した。2014年7月18日にろくでなし子は釈放された。 逮捕直後の反響 この事件について国内外から反応があった。ザ・ウォーターボーイズのリーダーであるマイク・スコットは、ろくでなし子の主張を支持するとして、「ROK ROK ROKUDENASHIKO」を制作、発表した。タレントの伊集院光は自身のラジオ番組にてマスメディアの「自称芸術家」という呼称をレッテル貼りとして指摘した。弁護士の伊東良徳はマスメディアの報道は警察の情報をそのまま流しているだけとしてその姿勢を批判した。また、わいせつ性は当事者の主観によって変わるものであり、一種の政治犯として扱うべきだとした。ジャーナリストの長谷川豊は1957年のチャタレー事件に言及し、当時のわいせつの定義のための3つの要件で議論していることと、そもそもの定義が破綻していることについて述べた。この逮捕は海外の複数のメディアでも取り上げられ、日本の性に対するダブルスタンダードの立場や、現代の行き過ぎたモラルについて言及された。 逮捕後の活動 ろくでなし子自身は2014年7月24日、日本外国特派員協会(外国人記者クラブ)で「MANKO」という言葉を発した。また10月18日より『週刊金曜日』にて逮捕拘留体験を描く手記漫画の短期集中連載を開始する。 再逮捕 2014年12月3日、デコまん3点を女性向けアダルトショップ店内で展示したとして、わいせつ物公然陳列の疑いで北原みのりとともに、警視庁保安課に逮捕された。ろくでなし子は作品のわいせつ性を否定した。前回の逮捕と異なり、わいせつ物公然陳列の容疑も掛けられた。ろくでなし子自身は後にこの2度目の逮捕について、自分の書いた漫画が警察を侮辱するように取られたと考えていると後に述べている。12月24日、「わいせつ物陳列」「わいせつ電磁的記録等送信頒布」「わいせつ電磁的記録記録媒体頒布」の3件で起訴された。12月26日、保釈申請が認められ、保釈金150万円で保釈された。 裁判 2015年4月15日に行われた初公判では、25枚の傍聴券に対して約200人が裁判所の前に並ぶ姿が見られた。ろくでなし子はこのことや裁判内での検事の言動、証拠品の扱いに対して、世間の関心が高いにもかかわらず裁判所が裁判を隠そうとしているという印象を受けた。検察側はろくでなし子の行為をわいせつ電磁的記録等送信頒布罪などに当たるとして、罰金80万円を求刑した。 第六回では上智大学国際教養学部学部長の林道郎が召喚された。そこでは過去に生殖器を象った芸術作品に触れながら、林による作品の芸術性についての証言が行われた。 判決 2016年5月9日に判決が下された。立体作品の陳列は無罪、3Dデータの配布はわいせつ物頒布等の罪で有罪となり、罰金40万円が課せられた。判決についてろくでなし子の弁護団の一人である山口貴士は、『愛のコリーダ』事件以来の画期的な判決として、判決を評価した。ろくでなし子は、判決には女性器そのものをわいせつと扱うことが問題とする意図がないとして、即日控訴した。 判決後の反響 脳科学者の茂木健一郎は判決を受けて、データ配布自体も表現の一部だとして芸術の扱いに関して時代の潮流と法律が合致していない可能性を指摘した。国際美術評論家連盟の有志からは、判決が不当なものであるとして5月14日に抗議声明が地方裁判所、警視庁、検察庁に宛てて提出された。8月25日には女子現代メディア文化研究会からも無罪を求める意見書が提示された。美術評論家のジョナサン・ジョーンズ(英語版)は「ガーディアン」にて判決を理にかなっていないと主張した。 控訴審 2017年4月13日、東京高裁は一審の判決を支持し、検察側、弁護側双方の控訴を棄却した。ろくでなし子は即日上告した。わいせつ物頒布とされたデコまんの配布に関しては、検察が上告しなかったため無罪が確定した。 上告審 2020年7月16日、上告審判決で、最高裁第1小法廷は被告側の上告を棄却し、罰金40万円とした一、二審判決が確定することになった。
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