仏教
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歴史
仏教宗派の伝来に関するタイムライン (紀元前450年 – 1300年) | |||||||||||||||||||
紀元前450年 | 紀元前250年 | 100年 | 500年 | 700年 | 800年 | 1200年 | |||||||||||||
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部派仏教 | 大乗仏教 | 密教 | |||||||||||||||||
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上座部仏教 |
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アリ―派 |
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カダム派 | |||||||||||||||||||
カギュ派 |
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タクポ・カギュ派 | |||||||||||||||||||
サキャ派 | |||||||||||||||||||
チョナン派 | |||||||||||||||||||
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中央アジア |
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ヘレニズム仏教 | |||||||||||||||||
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東アジア |
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中国の禅宗 |
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ベトナムの禅宗、 朝鮮の禅宗 | |||||||||||||||||||
日本の禅 | |||||||||||||||||||
天台宗/浄土教 |
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天台宗 |
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近年は異論もあるが、仏教の歴史の時代区分は、原始仏教、部派仏教、大乗仏教に三区分するのがおおかたの意見である[70]。
初期仏教(原始仏教)
仏教は、諸説あるがだいたい2500年ほど前(紀元前6世紀頃)に、インド北部ガンジス川中流域で、釈迦が提唱し成立したと考えられている(初期仏教)。当時のインドでは祭事を司る支配階級バラモンとは別に、サマナ(沙門)といわれる出身、出自を問わない自由な立場の思想家、宗教家、修行者らがおり、仏教はこの文化を出発点としている。
釈迦が死亡(仏滅)して後、直ぐに出家者集団(僧伽、サンガ)は個人個人が聞いた釈迦の言葉(仏典)を集める作業(結集)を行った[71]。これは「仏典結集」と呼ばれ、マハーカッサパ(摩訶迦葉尊者)が中心になって開かれた[71]。仏典はこの時には口誦によって伝承され、後に文字化される。釈迦の説いた法話を経・律・論と三つに大きく分類し、それぞれ心に印しているものを持ち寄り、仏教聖典の編纂会議を行った。これが第一回の仏典結集である[71]。
最も古い仏教経典集である阿含経は、初期仏教の姿が色濃く反映されている。初期仏教は、人が苦しみから脱却する方法として、あくまで自力による出家と修行を必要とするものであったが、より広く救いを求める切実な願いが原動力となって形成されていった仏教の派(の総称)が大乗仏教である。ただ、そのような大乗仏教も、初期仏教における世界観・救済観を乗り越える形で、業や空などの内実を変容・発展させていったという経過があるため、前提となっている阿含経を知ることは、大乗仏教を深く知る上でも有益と考えられている[72]。
部派仏教
仏滅後100年頃、段々と釈迦の説いた教えの解釈に、色々の異見が生じて岐れるようになってきた。その為に釈迦の説法の地であるヴァイシャーリーで、第二回の三蔵の結集を行い、釈迦の教えを再検討する作業に入った。この時、僧伽は教義の解釈によって上座部と大衆部の二つに大きく分裂する(根本分裂)。時代とともに、この二派はさらに多くの部派に分裂する(枝末分裂:しまつぶんれつ)。この時代の仏教を部派仏教と呼ぶ。部派仏教の上座部の一部は、スリランカに伝わり、さらに、タイなど東南アジアに伝わり、現在も広く残っている(南伝仏教)。
それからまたしばらくして、紀元前約3世紀の半ば頃に、アショーカ王は「法(ダルマ)」に基づく統治を志向し[73]、帝国各地に法大官を置き、西方のエジプト[74]やギリシア、南方のスリランカにも法の使節を遣わした[75]。アショーカ王は仏教に帰依していたため、その「法」とは仏法から出たものだっただろうと推測される[76]。南方仏教の伝承によると、その治世下では、アショーカ王の仏教の師とされるモッガリプッタ・ティッサが中心となって第三回の結集がパータリプトラ(華氏城)で行われた[77]。また、モッガリプッタ・ティッサが音頭をとって、仏教教団から9つの地方に伝道師が派遣されたという[78]。この頃に文字が使われ出し、それまでの口伝を基に出来たのが文字で書かれた経典・典籍である。文字としては主にブラフミー文字から派生した様々ないわゆるインド系文字で表記された。言語としては、大乗経典においては仏教混交梵語(m:en:Buddhist Hybrid Sanskrit)と呼ばれる言語やサンスクリット語が、主に南方に伝わった上座部経典においてはパーリ語が用いられた。パーリ語はセイロンを中心としている。そこで仏典がサンスクリットやそれに近い言語で書かれたものとパーリ語で書かれたものとが出てきた。このサンスクリットの頃の仏典の日本語訳は、南条文雄、中村元をはじめ、多くの人々によって取り組まれてきている。
大乗仏教
紀元前3世紀、インド初の統一国家となったマウリヤ朝の最盛期を築いたアショーカ王の時代、その保護の下でインド全域に広がった仏教は、やがて西北インドから中央アジアを経由して、紀元1世紀には中国の中原地方まで伝播した[79]。そして、こうした流れの中、紀元前後に、単に生死を脱した阿羅漢ではなく、一切智智を備えた仏となって、積極的に一切の衆生を済度する教え「大乗仏教」が起こり、急速に広まっていった。中央アジアを経て中国、さらに朝鮮、日本、ベトナムへと伝わった仏教は、「北伝仏教」と呼ばれるが、大乗仏教と同義ではなく、西北インドや西域諸国では部派仏教も盛んで、中国にもその経典が伝えられた[79]。
7世紀ごろベンガル地方で、ヒンドゥー教の神秘主義の一潮流であるタントラ教と深い関係を持った密教が盛んになった。この密教は、様々な土地の習俗や宗教を包含しながら、それらを仏を中心とした世界観の中に統一し、すべてを高度に象徴化して独自の修行体系を完成し、秘密の儀式によって究竟の境地に達することができ仏となること(即身成仏)ができるとする。密教は、インドからチベット・ブータンへ、さらに中国・ベトナム・朝鮮半島・日本にも伝わって、土地の習俗を包含しながら、それぞれの変容を繰り返している。また、大乗仏教では時代が下ると仏法が衰退することがしきりに説かれ(末法思想)、末法には古い仏教では救済できないとして様々な新しい教えが生まれた。
8世紀よりチベットは僧伽の設立や仏典の翻訳を国家事業として大々的に推進、同時期にインドに存在していた仏教の諸潮流を、数十年の短期間で一挙に導入した(チベット仏教)。その後チベット人僧侶の布教によって、チベット仏教はモンゴルや南シベリアにまで拡大していった。
仏教の教えは、インドにおいては上記のごとく段階を踏んで発展したが、近隣諸国においては、それらの全体をまとめて仏説として受け取ることとなった。中国および中国経由で仏教を導入した諸国においては、教相判釈により仏の極意の所在を特定の教典に求めて所依としたり、特定の行(禅宗、密教など)のみを実践するという方向が指向されたのに対し、チベット仏教では初期仏教から密教にいたる様々な教えを一つの体系のもとに統合するという方向が指向された。
現代
21世紀において仏教を国教または国教に準じた地位としているのはタイ・スリランカ・カンボジア・ラオス・ブータンである。現在の仏教は、かつて多くの仏教国が栄えたシルクロードが単なる遺跡を残すのみとなったことに象徴されるように、大部分の仏教国は滅亡・改宗・政教分離し、一応は世界三大宗教の一つでありながら仏教を主要な宗教にしている国は少なく人口ではヒンドゥー教より少ない。
発祥国のインドにおいては7世紀に唐の義浄が訪れた時点ですでに仏教が廃れており、ヒンドゥー教やイスラムとの争いもあり一度滅亡している(インドにおける仏教の衰退)。20世紀、アンベードガルにより、1927年から1934年にかけて仏教復興及び反カースト制度運動が起こり、20万あるいは50万人の民衆が仏教徒へと改宗した。2011年段階で0.8%(870万人)が仏教徒となっている[80]。アンベードカルの遺志を継ぐ日本人僧・佐々井秀嶺により運動が続けられており、毎年10月には大改宗式を行っているほか、ブッダガヤの大菩提寺の奪還運動や世界遺産への登録、仏教遺跡の発掘なども行われている。
古くは、ヒンドゥー教や大乗仏教を信奉してきた東南アジアの王朝では、次第にスリランカを起点とした上座部仏教が、その地位に取って代わるようになり、タイ等では現在まで広く根付いている。しかし、中央アジアの大部分と東南アジアの一部はヒンドゥー教、次いでイスラム教へと移行したほか、西欧の侵攻と植民地化を受けて伝統文化自体が大きく破壊されている地域が多い。アフガニスタンでタリバーンにより石窟が爆破されたのが象徴的な事件である。
東アジアでは三武一宗の廃仏をはじめとして儒教、道教、神道等と対立することが多々あり、中世・近世の儒教(朱子学)重視政策、近代の欧化主義や共産主義等との対立の中で衰退に向かった。日本では寺請制度と廃仏毀釈、戦後のアメリカナイゼーション・合理主義化等で勢いを失い、社会に与える影響は葬式や観光などに限られるものとなったが、熱心な信仰者や研究対象としている学者は根強く存在する。中でも創価学会は公明党として政権与党となっているものの政教分離の観点からはたびたび議論される。大韓民国ではもともと李氏朝鮮の儒教政策により仏教が追いやられており、さらにキリスト教の勢力拡大が著しく、キリスト教徒による排仏運動が起きている。中国・チベット・北朝鮮・モンゴルでは共産化によって宗教が弾圧されている。ただしモンゴルでは民主化によりチベット仏教が復権しているほか、中国では改革開放以降復興の動きもみられる。ベトナムでは共産党政権により宗教の冷遇はされているものの、仏教がベトナム戦争勝利に大きな役割を果たしたこともあって組織的な弾圧は受けることなく、一定の地位を保っている。
各地域の仏教については以下を参照。
- 紀元前5世紀頃 - インドで仏教が開かれる(インドの仏教)
- 紀元前3世紀 - セイロン島(スリランカ)に伝わる(スリランカの仏教)
- 紀元後1世紀 - 中国に伝わる(中国の仏教)
- 4世紀 - 朝鮮半島に伝わる(朝鮮の仏教)
- 6世紀 - 日本に伝わる(日本の仏教)[81]
- 7世紀前半 - チベットに伝わる(チベット仏教)
- 11世紀 - ビルマに伝わる(東南アジアの仏教)
- 13世紀 - タイ王国に伝わる(タイの仏教)
- 13〜16世紀 - モンゴルに伝わる(チベット仏教)
- 15世紀末 - カトマンズ渓谷で仏教が中興される(ネワール仏教)[82]
- 17世紀 - カスピ海北岸に伝わる(チベット仏教)
- 18世紀 - 南シベリアに伝わる(チベット仏教)
注釈
- ^ 例えばユダヤ教はタルムードが日本語に全訳されていないなどの不備を持つが、仏教ではそのようなことはなく、仏典のほぼすべてが日本語訳されており研究点数も多い。
- ^ 原始仏典『サンユッタ・ニカーヤー』第1巻では、弟子が釈迦にむかって「君、ゴータマさんよ」と気さくに呼びかけるのが定型句となっており、釈迦の神格化は見られない (植木2019[16]p.59)。
原始仏典『スッタニパータ』第927偈で、釈迦は迷信を否定し、呪法や夢占い、手相や顔相など相の占い、星占い、鳥や動物の声による占い、呪術的な懐妊術や医術を信奉することを仏教徒に禁じた(植木2019[16]p.88)。
また歴史に実在した釈迦は徹底した平等主義者であり、原始仏典『スッタニパータ』第608偈-第611偈は人間は本質的に平等であると説く(植木2019[16]pp.143-144)。
釈迦は女性や在家信者も弟子として出家信者と同等に扱い、教えを説いた。原始仏典『テーリー・ガーター』に出てくるアノーパマーという在家の女性は、釈迦の教えを聞いて阿羅漢の一つ手前のステージ「不還果」まで到った (植木2019[16]p.149)。
植木雅俊『仏教、本当の教え』[17]第1章でも、同様の考証が展開されている。 - ^ 武田宏道, 「無我の論証 ―『倶舎論』破我品の研究―」 龍谷大学 学位論文 乙第53号, 2007年, hdl:10519/102 参照。仏教は実体的な我(アートマン, आतमन्)を論理的に否定する。それは、「常住であるなら、変化しない。それゆえに人が行為をしても、それの変化は認められないから、行為が無意味となってしまう」という理由である。これは後に大乗仏教の龍樹による『根本中頌』(中論)の第24章にも概ね伝承された考え方である。五蘊を離れて「我」が存在しない理由は以下の通りである。まず、目の見えない人には、目の見える人が見るようには、外界の対象が見えない。それは、目という感覚器官の働きが有るか、無いかの違いによる。普通は認識することはできないが、目という感覚器官が存在するであろう、ということが推理によって知られる訳である。しかし「我」にはそのようなことはない。ゆえに「我」は存在しない。
- ^ これについて、日本の仏教各宗派に対してアンケート調査が行われたことがあり、結果は存在を認める宗派、肯定も否定もしない宗派、否定する宗派の割合がそれぞれ同程度で、見解が全く相違した。
- ^ 経典『中部』(マッジマ・ニカーヤ)第63経「小マールンキャ経」(Cūḷa-Māluṅkyaputta Sutta)によって、仏教は霊魂の有無を形而上学説としてみなし、これを扱わなかった(無記)とする説もあるが、ここで問題にされているのは、「身体と命の同異」と「生死を乗り越えたもの(如来)の死後」であって、霊魂の有無ではない。
- ^ 「小乗」という呼び名は大乗仏教からの一方的な蔑称であること、また大乗勃興当時のその批判対象は説一切有部が中心であったことが知られてきたため、南伝仏教の実際が知られてきた近年ではむやみに使用されることはなくなってきている。大乗経典群が指している「小乗」の語は当時の部派仏教を指したものであって、大乗仏教が北伝を開始した時点でその蔑視の対象はすでに滅んでいた。したがって存続中の何らかの宗派・学派に対して小乗の語を当てるのは誤用であり、蔑称であるためカテゴライズとしても適切な言葉ではない。
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