整数 順序構造

整数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/05 10:01 UTC 版)

順序構造

Z における通常の大小関係

… < −3 < −2 < −1 < 0 < 1 < 2 < 3 < …

は、上にも下にも有界でない全順序関係であり、

  1. a < b かつ c < d ならば a + c < b + d,
  2. a < b かつ 0 < c ならば ac < bc

が成り立つという意味で Z の環構造と両立し、Z順序環となる。0 より大きな元は「正」、0より小さな元は「負」である。正の整数全体 N は、任意の整数 x に対し x または −xN に属するという意味で Z賦値環である。

厳密な構成

格子点と整数との対応

自然数の全体 N は減法について閉じていないが、上ではそれを補完するものとして負の整数を導入し、整数の全体 Z を構成した。それと本質的には変わらないが、よく知られる方法[3]としてここでは、減法を陽に持ち出さずに、自然数の加法と乗法のみから同値関係や商集合といった道具を使って、整数がきちんと厳密に構成できることを記しておく。[note 3]

まず、直積集合 N2 = N × N = {(a, b) | a, b は自然数} を考えよう[note 4]N2同値関係 ∼ を

(a, b) ∼ (c, d) ⇔ a + d = b + c

と定義することができる。ここで、N2 を同値関係 ∼ で類別した集合(商集合)N2/∼ を考える。これは、互いに同値なもの全体の集合(同値類)を元とするような集合であり、直観的には互いに同値であるようなものを同一視する操作である。(a, b) ∈ N2 の属する同値類を [a, b] ∈ N2/R と表すことにする。つまり、[a, b] は

[a, b] = {(c, d) ∈ N2 | (a, b) ∼ (c, d)}

となる集合である。同値類を [a, b] のように表したとき、(a, b) をこの同値類の代表元と呼ぶ。代表元は同値なものでありさえすれば他のものに取り替えることができる[note 4]。商集合 N2/∼ に加法 + と乗法 × を

[a, b] + [c, d] = [a + c, b + d]
[a, b] × [c, d] = [ac + bd, ad + bc]

と定義すると、これらは代表元の取り方によらずに、同値類同士の演算としてうまく定義されていることが確かめられる[note 4]

このとき、[a, b] + [m, m] = [a + m, b + m] = [a, b] だから、R = {(m, m) | mN} は N2/∼ の加法に関する単位元である。また、自然数 m に対して [m + 1, 1] を対応させる写像は単射

[m + 1, 1] + [n + 1, 1] = [m + n + 2, 2] = [(m + n) + 1, 1],
[m + 1, 1] × [n + 1, 1] = [(m + 1)(n + 1) + 1, (m + 1) + (n + 1)] = [mn + 1, 1]

を満たす(準同型)ので NN2/∼ に演算まで込めて埋め込める。記号の濫用ではあるが、自然数 m を埋め込んだ先と同一視して m = [m + 1, 1] と書くことにし、これを(正の)整数 m と呼ぼう。

同様の埋め込みは、自然数 m に対して [1, m + 1] を対応させることでも得られるが和と積は

[1, m + 1] + [1, n + 1] = [1, (m + n) + 1],
[1, m + 1] × [1, n + 1] = [1 + (m + 1)(n + 1), (m + 1) + (n + 1)] = [mn + 1, 1]

になる。自然数 m に対し、新たな記号 −m を [1, m + 1] を表すものとして導入し、これを負の整数 −m と呼ぼう。負の整数同士の積が正の整数になっていることが確認できる。

このとき、m + (−m) = [m + 1, 1] + [1, m + 1] = [m + 2, m + 2] = R だから、負の整数 −m = [1, m + 1] は N2/∼ においてはちょうど、正の整数 m = [m + 1, 1] の加法に関する逆元になっている。R をあらためて 0 と書くことにして、N2/∼ = {m, 0, −m | mN} を整数全体の集合とよび、あらためて Z と書くことにしよう。

このようにして整数の全体 Z が厳密に定義されたが、なお定義に従えば Z において結合法則や分配法則などの環の公理が満たされることがきちんと証明できる。

一般化




注釈

  1. ^ 接頭辞「有理(的)」(rational) はそもそも「整数比」であるという意味なので、この呼称は自己循環的にもみえる。しかし、有理整数と呼ぶ場合の「有理」は「有理数の中で」という程度の意味の単なる符牒であって、「整数比」という本来の意味合いに拘るのは徒労である。
  2. ^ 古典的な逆理として「−1 < 1 のとき、これらの二数の逆数は元とは大きさが逆になるが、−1 の逆数は −1 で 1 の逆数は 1 だから、従って −1 > 1 が成り立つ」というものがある。この逆理は「二つの数の逆数はもとの数とは大きさが逆になる」という文の不完全さによるもので、これは「同符号の二数の逆数はもとの数とは大きさが逆になる」と明確化されるべきである。
  3. ^ 以下の構成では、自然数には 0 を含まないという立場で記述しており、したがって自然数に 0 を含んでも含まなくてもどちらでも構わないことも注意していただきたい。
  4. ^ a b c かなり技巧的な作業のように見えるが、自然数を二つの自然数の差として (a, b) = ab というつもりで書いてあるものとして読んで差し支えない。差が一定の自然数の組は無数にあるので、実際には [a, b] = ab と考えるべきだが、そう考えることに整合性があることを確かめるのが、多少抽象的であるが、途中で同値関係で割ったり、同値類の間に演算を導入したりする部分である。

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