擬態 擬態の信憑性

擬態

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/19 00:25 UTC 版)

擬態の信憑性

いろんな生物を見たときに、擬態ではないかと思われる例は数多い。しかし、この問題が見かけでわかりやすく、面白くて取っつきやすいために、安易な判断がなされている場合も多い。本当にそれが擬態として作用しているのかどうかには、しっかりした観察に基づく慎重な論議が必要である。この点は、保護色警告色などについても同様であり、これまでに、後に誤りであったと判断された説は数多い。

たとえば、トリノフンダマシという、排泄されたばかりの鳥の糞に見えるクモがいる。このクモは、20世紀半ばまで、糞だと判断してよってきた昆虫を食べる、攻撃的擬態であると判断されていた。しかし、現在では、このクモは夜間に網を張ることが知られている。それでも糞に擬態している可能性は残るわけだが、実はこのクモは、多くの場合葉の裏側に止まるのである。

アリに擬態したアリグモ

同じくクモ類であるが、アリグモは、ハエトリグモ類でありながら、肉眼的にはアリにしか見えないくらい、アリによく似ている。このクモも、20世紀前半までは攻撃的擬態の代表例になっていた。アリが仲間だと思って挨拶するところを捕まえる、というのである。さらに、アリの巣に侵入してアリの蛹を担いで出るという話すら、専門書に記されていた。ところが、その後の観察から、このような話の信憑性が問題になり、むしろ、現在では野外に於いてはアリは攻撃的で強い昆虫であるので、その姿でいることで安全を図っている、つまりベイツ型擬態であるとの判断になっている。それどころか、アリが近づくと逃げる、との観察もあり、現在のクモの本では、アリグモがアリを捕まえたという確実な観察例は存在しない、とまで書かれているものがある。しかし、この記述が正しいかどうかは、また別の問題でもある(なお、アリを捕食するハエトリグモとしてアオオビハエトリがいる。前脚をあげて触角に似せているかのようなポーズをとるが、アリグモほどアリに似ていない)。

このような擬態に関する誤解は、今後とも起こり得ることとして、慎重に判断する必要がある。








擬態と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「擬態」の関連用語

検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



擬態のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの擬態 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS