低気圧 爆弾低気圧(猛烈低気圧)

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低気圧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/31 04:39 UTC 版)

爆弾低気圧(猛烈低気圧)

爆弾低気圧 ("bomb" cyclone[4][5]) とは、急速に発達し、熱帯低気圧(台風)並みの暴風雨、または暴風雪をもたらす温帯低気圧を指す俗語。1980年にMITの気象学者フレデリック・サンダース (Frederick Sanders) らが存在を提唱[6]して以降、様々な気象学者がその定義や解析を試みているが、「12時間以上[注 1]にわたって中心気圧が1時間あたり1hPa以上低下した温帯低気圧」を指すことが多い。熱帯低気圧の急発達は一般的なため、爆弾低気圧とは呼ばない。

高緯度であるほど発生頻度が高い傾向にあるため、高緯度ほどコリオリの力の増大により同じ気圧傾度でも地衡風の風速が弱いことを考慮して、時間あたりの低下気圧に (sinφ/sin60°) を掛けて緯度補正を行う定義も用いられることがある(φ=緯度)。たとえば北緯40度線(日本でいえば秋田県男鹿市)の上空での場合、24hPa×sin(40°)/sin(60°)=約17.8hPaの気圧が24時間以内に低下した場合に爆弾低気圧と呼ばれるようになる。但し日本の気象庁は予報用語の中で「使用を控える用語」と分類し[7]、「急速に発達する(した)低気圧」などと言い換える[8]としている。また、NHKでは、前記のほか「猛烈に発達する(した)低気圧」などと表現する事もある。読売新聞は2013年1月に「爆弾低気圧」を「猛烈低気圧」に言い換える事を記載した[9]

冷たく乾燥した大陸性気団と暖かく湿った海洋性気団が衝突する大陸辺縁部の、特に東岸で、冬季に多くみられる現象。日本海(特に佐渡沖周辺と秋田沖周辺)や三陸沖、千島列島アリューシャン列島南方、アメリカカナダの東海岸などで多く観測される[10]。冬季の対流圏上層で傾圧(気圧傾度)が非常に大きい地域の風下(東方)、また顕著な暖流の流域にあることから、これらが発達に関与していると考えられている[11]

日本付近では10月から1月頃の冬の嵐の時期、2月から3月の春一番の時期が最も多く、4月中旬から5月中旬までのメイストームの時期にもみられる。日本海低気圧が日本海から北日本を通過する際に急速に発達し、三陸沖でさらに猛烈に発達する例が多い[12]。アメリカ・カナダでも同様に、冬季にノーイースターと呼ばれる嵐はしばしば爆弾低気圧である。

派生現象

爆弾低気圧は非常に発達することから強風に伴い高波[13]を発生させるほか、地震波のP波,S波も発生させる[14]


注釈

  1. ^ 主に12時間や24時間が用いられる。

出典

  1. ^ デジタル台風:アジア太平洋地上天気図 [2014110806]
  2. ^ 台風、ハリケーン、タイフーン、サイクロンの違いとは
  3. ^ 気象研究所技術報告 第14号 1985 第2章 (PDF)
  4. ^ Bomb cyclones ravage northwestern Atlantic Jack Williams、USATODAY、2005年5月20日
  5. ^ bomb Glossary of Meteorology、アメリカ気象学会、2012年4月22日閲覧。
  6. ^ Sanders, F. and Gyakum, J. R. (1980). “Synoptic-Dynamic Climatology of the "Bomb"”. Monthly Weather Review 108 (10): 1589-1606. doi:10.1175/1520-0493(1980)108<1589:SDCOT>2.0.CO;2. 
  7. ^ 予報用語について 気象庁
  8. ^ 気圧配置 気圧・高気圧・低気圧に関する用語 気象庁
  9. ^ 爆弾低気圧は“禁止語”ですか。”. 読売新聞. 2013年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月25日閲覧。
  10. ^ 中村尚、三瓶岳昭、「寒候期における極東域の低気圧活動の特徴(2004年度秋季大会シンポジウム「極東域の温帯低気圧」の報告)」 天気 52(10), 760-763, 2005-10-31, NAID 110002535450
  11. ^ 爆弾低気圧(ボンブ) 気象用語集 Archived 2011年2月25日, at the Wayback Machine.
  12. ^ 日本近海の爆弾低気圧活動と大規模循環場との相互作用 吉池聡樹、川村隆一、第6回「異常気象と長期変動」研究集会講演要旨、富山大学気象学・気候力学分野(川村研究室)
  13. ^ 猿渡亜由未、渡部靖憲、「日本海上の爆弾低気圧に起因する高波の発達機構」土木学会論文集B2(海岸工学) 71(2), I_1537-I_1542, 2015, NAID 130005109384
  14. ^ 西田究、高木涼太、「大西洋の爆弾低気圧によって励起された脈動実体波」 (PDF) 東京大学地震研究所


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