モノクロフィルム モノクロフィルムの概要

モノクロフィルム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/06 06:44 UTC 版)

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ドリス・ウルマン英語版の『労働者の手』(1925年以前)

モノクローム写真英語: Monochrome photography)は、写真に撮られた対象物の色彩を記録するのではなく、写真に生成される画像が単一の色相をもつもののことである。黒色白色との間の灰色色調を生み出す白黒写真は、すべてモノクローム写真のカテゴリに属する[4]。現行の白黒フィルムはパンクロマチックフィルムであり、可視光線のすべてを記録する[5][6]オルソクロマチックフィルムは、可視光線のうち590ナノメートル未満の波長を持つ光線を記録する[7]

モノクローム写真、とりわけ白黒写真は、カラー写真に比して、微妙かつ現実に対する解釈的な表現であり、リアルさに欠けるものであると考えられている[4]。モノクローム画像(白黒画像)は、対象物を表現として直接差し出すものではなく、現実から抽象されたものであり、灰色の陰影で色彩を表象する。色彩についての情報は含まずに明度情報のみで示すことをコンピュータ用語ではグレースケールと呼ぶ[8]

本項でおもに扱うのは現行のパンクロマチックフィルム製品の一覧とその解説である。

概要

色彩に頼らずに表現するため、題材をシンプルに伝えることができる。現在でも表現手法の一つとして用いられる他、警察など業務用分野でもよく使われている。また、現像焼き付けが比較的容易なことから、これらの処理を個人で行う愛好者も多い。1990年代後半にレトロな感覚が受け、モノクロフィルムが入った使いきりカメラ(レンズ付きフィルム)やAPSフィルム(カラー現像処理に対応したタイプ、富士フイルムより)も発売されたがすぐにブームは下火になり、現在は写真の急速なデジタル化により販売量が減りつつある。

一般にカラーフィルムと比べて保存性や粒子の細かさに優れるとされる。ネガフィルムが多数であるが、モノクロリバーサルフィルムもある。また、カラー写真のクロス現像のような独特の色あいになったりする現象が無いことから、ネガフィルムをリバーサル現像することもわりと一般的である。

カラーフィルムでは漂白の過程で銀が取り除かれるのに対して、モノクロフィルムでは銀が画像を形成する。これによってカラーフィルムでは得られない粒子感があり、これもモノクロフィルムが根強く支持される理由の一つといえる。銀粒子によるキャリエ効果があり、プリントの出来を大きく左右する。

通常のモノクロフィルムの現像焼き付けはカラーフィルムとは違う薬品や工程が必要なため、ミニラボ機しか設備していない一般の写真店では処理することができず、リバーサルフィルムの現像と同様大半が取り次ぎ集中現像所で処理されるが、現在はモノクロ現像を行う現像所が減りつつある。このような不便を掛けず手軽にモノクロを楽しむため、カラーネガフィルムと同じ方法(現像液)で現像処理ができるモノクロフィルムもあるが、カラープリントの仕上げをした際には、完全にニュートラルなグレートーンを得るのは困難である。本来比較的簡単に処理できるはずのモノクロフィルムであるが、カラーフィルムが一般化しそれに合わせた設備のみを揃える現像所が増えたために生じた逆転現象である。

最近のデジタルラボ機であればモノクロフィルムからカラー用の印画紙へプリントをすることができる場合もある。

現在のポリエステルベースのモノクロフィルムは、環境にかかわらずほとんど劣化しない強い耐久力を持つことから、機械的故障から逃れられないデジタル写真より保存性は上であるとする主張もある。

どのような波長の光に感光するかでパンクロマチックとオルソクロマチックに大別される。写真フィルム#感色性によるもの(主にモノクロフィルム)の項も参照されたい。

パンクロマチックとオルソクロマチック

パンクロマチックフィルムは可視光線のすべてに対して感度を持っている一方、オルソクロマチックは青と緑に限られ、赤に対しては感度を持たない。

ハロゲン化銀単体では紫外線や青色光にしか感度をもっておらず、1873年にドイツの科学者、ヘルマン・ヴィルヘルム・フォーゲル英語版が、色素を加えることによって感度を緑に、その後黄色・橙色までに広がる[9]ことを発見するまで、写真用感材は青にしか感度を持っていなかった。赤色3号を加えることによってオルソクロマチックフィルムが、シアン誘導体のピナシアノル (ピナクローム)[9] を加えることによってパンクロマチックフィルムが作れるようになるが、パンクロ感材の実現には、彼の死後すこし経った20世紀初頭まで待たねばならず、1906年になって写真用の感材が商業的に提供されるようになった[10]。 しかしオルソクロマチックからパンクロマチックへの移行は以下の理由により、徐々にしか起こらなかった。

  • オルソクロマチックの2 - 3倍という費用の高さ
  • 赤色灯をセーフライトとして用いられたオルソクロマチックと違って暗闇で現像を行わなければならない[11]
  • 黄色や赤への感度を持たせる処理が青や紫に対して以前よりも高い感度を与えてしまい、これの補正するためのレンズのせいで長い感光時間が要求された[12][9]



  1. ^ デジタル大辞泉『モノクロ』 - コトバンク、2011年12月10日閲覧。
  2. ^ a b デジタル大辞泉『モノクローム』 - コトバンク、2011年12月10日閲覧。
  3. ^ a b カメラマン写真用語辞典『モノクローム』 - コトバンク、2011年12月9日閲覧。
  4. ^ a b Langford, p.160.
  5. ^ Langford, p.157.
  6. ^ a b デジタル大辞泉『パンクロマチックフィルム』 - コトバンク、2011年12月10日閲覧。
  7. ^ Langford, p.158.
  8. ^ デジタル大辞泉『グレースケール』 - コトバンク、2011年12月10日閲覧。
  9. ^ a b c 大石恭史「カラー銀塩感光材料の技術革新史 第1部 分光増感 (上) 1920 年代まで」、『日本写真学会誌』第70巻第5号、日本写真学会、2007年、 296-298頁、2018年1月11日閲覧。
  10. ^ Ralph E. Jacobson; Sidney F. Ray; Geoffrey G. Attridge; Norman R. Axford. The Manual of Photography: Photographic and Digital Imaging (9th ed.). Focal Press. p. 208. ISBN 978-0-240-51574-8. 
  11. ^ Geo. F. Greenfield, (1912年10月). “Practical Panchromatism in the Studio”. Wilson's Photographic Magazine 49: 460-461. https://archive.org/stream/wilsonsphotogra05unkngoog#page/n547/mode/2up 2018年1月11日閲覧。. 
  12. ^ "Photography", The Encyclopædia Britannica, 1911, vol. 21, p. 518.
  13. ^ http://ffis.fujifilm.co.jp/information/articlein_0081.html
  14. ^ 135サイズ「ネオパン400PRESTO」および120サイズ「フジカラーPRO400」販売終了のご案内富士フイルムイメージングシステムズ株式会社、2014年3月6日閲覧。
  15. ^ コーティング設備の老朽化から生産に支障をきたし製造中止を発表、efke日本代理店かわうそ商店、2014年3月6日閲覧。


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