GREENSLEEVESとは? わかりやすく解説

グリーンスリーブス

(GREENSLEEVES から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/13 14:02 UTC 版)

グリーンスリーブスの楽譜

グリーンスリーブス」または「グリーンスリーヴズ」(英語原題:Greensleeves)は、伝統的なイングランド民謡で、ロマネスカと呼ばれる固執低音の旋律をもつ。原曲については作者不詳となっているほか、チューン(節まわし、いわゆるメロディーの骨格)は2種類存在していた可能性があるが、どちらも不明である。

概説

起源

エリザベス朝の頃、イングランドスコットランドの国境付近の地域で生まれたといわれているが、前述の通りその起源は厳密には判っていない。記録では、1580年に、ロンドンの書籍出版業組合の記録に、この名の通俗的物語歌(EN)が、「レイディ・グリーン・スリーヴスの新北方小曲(A New Northern Dittye of the Lady Greene Sleeves)」として登録されているが、この印刷文は未だ発見されていない。またこの歌は、1584年の『掌中の悦楽』のなかで、「レイディ・グリーン・スリーヴスの新宮廷風ソネット(A New Courtly Sonnet of the Lady Green Sleeves)」として残っている。このため、以下のような未解決問題が生じている。すなわち、古く登録された「グリーンスリーヴス」の歌のチューンがそのまま今日まで流布したのか、あるいは2つの歌のチューンが別だとすれば、そのいずれが今日広く知られている曲なのか、である。現存する多数の歌詞は、今日知られているチューンに合わせて作詞されている。

この歌は16世紀半ばまで口頭伝承で受け継がれ、17世紀にはイングランドの誰もが知っている曲となった。また、リュート用の楽譜も、17世紀初頭にはロンドンで出版されている。

作曲者の伝説

My Lady Greensleeves
ダンテ・G・ロセッティ

広く流布している伝説ではあるが、証拠が確認できないものに、この曲はヘンリー8世(1491年 - 1547年)が、その恋人で後に王妃となるアン・ブーリンのため作曲したというものがある。トマス・ブーリンの末娘であったアンは、ヘンリーの誘惑を拒絶した。この拒絶が歌の歌詞のなかに織り込まれていると解釈できる(「cast me off discourteously((わが愛を)非情にも投げ捨てた)」という句が歌詞に入っている)。

この伝説は真偽不明であるが、歌詞は今日でもなお大衆の心の中で、一般にアン・ブーリンと関連付けられている。しかし実際のところ、ヘンリー8世がこの歌の作者であったということはありえないことである。なぜなら、歌はヘンリーが崩御した後でイングランドで知られるようになった詩のスタイルで書かれているからである。<真偽不明>

緑の袖の意味

ルネサンス期の服飾では、袖は身頃と別々に仕立てられたため、付け替えが可能であり、本体とは独立した一対として扱われていた[1][2]。そして、この袖を恋人同士の愛の証として交換する風習があった[3][4]。 つまり、歌詞リフレイン部の(振られた男性の手元に残る)袖は、相手女性そのものを指している[5]

また、恋愛を象徴する色の中で、緑は気まぐれな愛[6]、失恋[7]、恋心、不実な恋[8]などを表している。草木の緑が季節で色を変えるように、移ろいやすいことの暗示である[8]

解釈の一つとして、「緑の服(a green gown)」というスラングが野外での男女の戯れを指すことから、歌の中のレディ・グリーン・スリーヴスは、性的に奔放な若い女性であり、場合によっては娼婦であったとするものもある。

メロディーの旋法とバージョン

歌詞や旋律には、時代や地域ごとに様々なバージョンが存在する。イングランドの古典音楽の特徴を色濃く残すドリア旋法版(レ・ファー・ソ・ラー・シ・ラ…)と、近代西洋音楽の短音階と同様のエオリア旋法版(レ・ファー・ソ・ラー・「シ♭」・ラ…)では、前者の方が本来の古い形と考えられるが[9]、現在では両方のバージョンともよく演奏される。民謡という性質上、どのバージョンも間違いではない。

歌詞

Alas, my love, you do me wrong,
To cast me off discourteously.
For I have loved you so long,
Delighting in your company.

Chorus:
Greensleeves was all my joy
Greensleeves was my delight,
Greensleeves was my heart of gold,
And who but my lady greensleeves.

ああ、私の愛した人は何て残酷な人、
私の愛を非情にも投げ捨ててしまった。
私は長い間あなたを愛していた、
側にいるだけで幸せだった。

グリーンスリーヴスは私の喜びだった、
グリーンスリーヴスは私の楽しみだった、
グリーンスリーヴスは私の魂だった、
あなた以外に誰がいるだろうか。

なお、日本語訳詞は複数あり、岩田宏門馬直衛、三木おさむ、八木良子などによるものがある。

文学作品での言及

1602年頃に書かれた、シェイクスピアの喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』において、フォード夫人が説明なしで、「グリーンスリーヴス」のチューンに2度言及する場面があり、フォルスタッフは後に大声で叫ぶ。

Let the sky rain potatoes! Let it thunder to the tune of 'Greensleeves'!
空よ、じゃがいもの雨を降らせよ! 「グリーンスリーヴス」のチューンで雷鳴をとどろかせよ!

これらのほのめかしは、当時、この歌が一般によく知られていたことを物語っている。

派生作品

この旋律は、様々な曲の主題として用いられる。

カバー

いずれも基本的なチューンは同楽曲だが、歌詞やタイトルがアレンジされる場合がある。

その他

  • 東京書籍の6年生の音楽科の教科書に2重奏の楽譜が掲載されている。
  • 中学の器楽の教科書にアルトリコーダーで演奏する教材として記載されている。
  • 京都バス32系統の自由乗降区間では同曲のオルゴールが流れる。

関連項目

  • 御使いうたいて』 - グリーンスリーブスのチューンで歌われるクリスマス・キャロル
  • 香港中学文憑 - シンフォニア・オブ・ロンドンによって、1962年で演奏する本曲のインストゥルメンタルバージョンは、当試験と新学制(詳細は香港の教育に参照)実施前の「香港中學會考」、及び「香港高級程度會考」の中国語、英語リスニング試験録音の間奏として用られる。

脚注

  1. ^ 菅原珠子、佐々井啓『西洋服飾史』(初版)朝倉書店、1985年5月15日、64-77頁。ISBN 9784254605259 
  2. ^ 入来朋子「西洋服装史にみられる女子服の袖の構成と機能に関する一考察 : ゴシック期からルネッサンス期まで」『長野県短期大学紀要』第32号、1977年12月、33頁。 
  3. ^ Ad de Vries (1976). Dictionary of symbols and imagery (2 ed.). North-Holland. p. 429. ISBN 0720480213 
  4. ^ 茂木健『バラッドの世界/ブリティッシュ・トラッドの系譜』春秋社、1996年、46頁。 ISBN 978-4393934340 
  5. ^ 徳井淑子『服飾の中世』勁草書房、1995年、127頁。 ISBN 978-4326851348 
  6. ^ 山下主一郎/主幹 訳『イメージ・シンボル事典』(9版)大修館書店、1987年、297頁。 ISBN 978-4469012064 
  7. ^ 井上義昌 編『英米故事伝説辞典 増補版』冨山房、1972年、284頁。 ISBN 978-4572000132 
  8. ^ a b 徳井淑子『色で読む中世ヨーロッパ』講談社、2006年、118-123頁。 ISBN 978-4062583640 
  9. ^ Jazz and European Sources, Dynamics, and Contexts,ISBN-13- 978-1584658641,109頁

外部リンク

サンプル音楽


Greensleeves

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 02:08 UTC 版)

Greensleeves (平原綾香の曲)」の記事における「Greensleeves」の解説

本作イングランドで最も古くクリスマス・キャロルとしても親しまれ400年以上にわたって歌い継がれてきた民謡に、平原が独自の日本語歌詞付け大切な人想う切なく強く温かい愛を込めたラヴ・ソングとして仕上げたものとなっている。 楽曲について 平原本作について以下のように語っている。この曲は以前からずっと気になっていた曲なんです子供の頃から好きな曲で、電話保留音にもこの曲が使われていたりと私にとっては身近なとなっていましたね。誰もが知る曲なんですが、とても不思議なオーラ放つ曲だなとも思っていまして、興味湧きまして今回、この曲を選び出しましたメロディーについて 以下のように語っている。「Greensleeves」はイングランドで最も古くからある民謡で、クラシックが生まれ以前よりも古くからあった曲なんですよ。作曲者誰かが分からない。けど、それが逆に納得できるような気がするですよ。ある時点誰かが作曲したではなく歴史刻まれていく中で、自然に生まれた、人の手加えられていないメロディー思えたんですね。聴いてみて思い浮かんだのは、人がまだ足を踏み入れていない深い森それこそ妖精住んでいそうなですね。そこに吹いている風と木漏れ陽とか、人の手では到底作り得ない大自然作り出した風景感じましたね。そう言う感覚自分自身置き換えると、まだ自分でも触れた事のない未知感情秘めたるもの、触れたいけど触れたないような、知りたいけど知りたくないような心の深層部分にあるそんな感覚と繋がるような感じがしますね。それを受けてこの奥の深いメロディーの上究極の愛に満ちた言葉綴りたいと思いましたね。 原曲の歌詞、および作詞について 以下のように語っている。実を言うと今回カヴァー初めてこの曲に歌詞着いていた事を知ったんです。小学校の頃にリコーダー習った曲でしたし、ずっとメロディーとしての印象でしかなかったんですよ。今回色々と勉強兼ねて原曲の歌詞初め読んだんですけど許されない恋描いた歌であると知って驚きました同時にその歌詞見てすごく泣けましたね。想い伝え告白にも、祈りにも感じたし、聴こえた歌でしたね。それを受けてカヴァーするに当たって、私がこの曲から受けたインスピレーション大切にしたいもの、祈り告白の歌、それをテーマにした歌詞書いていこうと思いましたね。 歌詞の発想と掘り下げについて 以下のように語っている。先程も、言ったことなんですメロディー何物にも変えがたい究極とも言えるメロディーのように感じまして、私としてもそれに相応しいと思う愛を伝えるための究極愛の歌詞を乗せようと思いましたね。出発点としたのは、最後の歌詞の一行にある『あなたを愛しています』と言う部分そうなんです。最後の所に全てにおいて何を言わんとしたいのか、って所が一番重要なポイントなりましたね。それがあの一行だったんです。歌詞最後に持っていきましたが、全体の中で一番最初に思い浮かんだ歌詞ですね。 曲の雰囲気を掴むために行ったデモ・レコーディングの段階ではまだ歌詞がない状態で、私自身"綾香語"と呼んでいる日本語とも英語ともつかないような言葉用いりながら自由自在に歌うんですが、その時出てきたのがあの一文だったんです。『愛してます』って恋愛関係だけに留まらず親子間でも家族に対して伝えるし、自分相手それだけ幸せにしてくれるし、温かくもしてくれる魔法のような言葉にも思えて最後フレーズメロディーには絶対に使いたい言葉だと思ったんですよねどんな景色や物を見ても、常に大切に思う人を思う。目にする全ての物の中に愛する人がいる感覚ってきっとどんな方に理解して貰え事だ思いますね。 平原綾香がイメージした物語について 以下のように語っている。私は常日頃から、聴いてくれる皆さん心に寄り添うような歌詞書いていきたい思って書いてるので、特にこれといったイメージ持たないようにしていますね。その分聴く全て想い想い捉えられる思っていますね。ある人には誰か想い告げ愛の告白、またある人には別れてしまった恋人への想いだったり、もしかしたら、亡くなった人を想っているのかもしれないクリスマス時期自分一人だけど、楽しそう語らい寄り添い合う恋人同士見ても、家族見ても、見て何を目にするにしても、どこかである人を思っている。目に見える景色中に愛する人がいると言う感覚ってきっと誰しも持ち得るものだと思う分、きっと理解して貰え事だ思いますね。 作詞のタイミング 以下のように語っている。そうですね。この曲をやってみよう思い立ってからまず勉強することから始まるんですね。その曲の成り立ちから背景などを調べた上で楽曲イメージと、詞のイメージ固まってからアレンジ構想練っていきまして、それら全て終わってから総仕上げとして、歌詞書き上げていくと言う感じでしたね。 サウンドのイメージについて 以下のように語っている。真っ先思い浮かんだのは、やはり大森林イメージありましたね。妖精住んでいそうな雰囲気かだったり。木々生い茂っていて太陽光遮られて、昼間でも薄明るい場所がある、そんなイメージありましたね。そのイメージから、あまり音を厚くせず、ストリングス控え目にした上で民族楽器取り入れて昔を思い起こさせるような懐かしさ溢れサウンド意識しました。 用いられた楽器について 以下のように語っている。そうですね。まず、パンパイプという管楽器からになりますね。葦のなどを束ねた楽器長さ違い音階作ってます。構造的にパイプオルガンと同じ構造をしていますね。後はアイルランド縦笛ティン・ホイッスルと言う楽器用いてますね。 ストリングスに関しては、普通のバイオリン違って民族音楽使われるフィドルと言う楽器があってそれの音色意識したような感じ弾いて貰ってます。後はこの曲は森林イメージの他に星のイメージもあって、それを表現するためにシンバル用いていますね。この曲は季節時間帯これと言って特定しにくい不思議な魅力があるんですよね。この辺りもこのメロディーが持つ力がそのような魅力放っているのだと思いますね。やはり、400年以上に渡って歌い継がれていて、時代国境越えて伝わってきている曲と言うのは不思議な魅力や力があるんですよね。

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