【EC135】(いーしーいちさんご)
Eurocopter EC135.
ユーロコプターの前身であるドイツのMBB社が、Bo105の後継として開発したライトツイン型ヘリコプター。
現在は企業再編により、ユーロコプター社の製品として生産・販売されている。
MBBにおけるBo105の後継機種としては、既にBK117(日本の川崎重工と共同開発)が存在したが、Bo105に比べると大柄な機体であったため、それとは別に、MBB側単独の機体として「Bo108」の名称で開発が開始された。
BK117譲りの空力に優れた形状に加え、複合素材の多用による軽量化、グラスコックピット化や計器飛行能力の獲得などが成された。
エンジンは実績があるものの陳腐化したアリソン250を廃し、チュルボメカ・アリウスやPW206を採用することとなる。
キャビンは、当初Bo105と同程度の大きさのものが試作されていたが、製品版では市場調査の結果に基づきやや大型化し、通常の座席レイアウトでは操縦士2名のほか乗客5名が乗れる。
Bo108開発の途中でMBBはダイムラーグループに吸収されDASAとなり、さらにアエロスパシアルと合併してユーロコプターとなった。
このため、機体の名称もBo108からEC135へと変更された。
また、この合併により、アエロスパシアル社が持っているフェネストロンの技術を得ることができた。
これは、Bo105から引き続き装備される胴体後部のクラムシェルドアと相性が良く、荷物や担架を積み下ろす際の安全性が高まった。
Bo105に引き続きセールスは順調で、日本でも企業や自治体などで運用されるほか、海上自衛隊ではOH-6DAの後継となる初等練習機としての導入が決まり、TH-135の名称が付与された。
初等操縦訓練用としてはやや高級すぎる機体ではあるが、SH-60KやCH/MCH-101に備わっているFADECやグラスコックピットに早くから慣れるためには適しているとも言える。
また、現在TC-90が受け持っている計器飛行訓練の一部を代替するともされている。
軍用型は「EC635」として開発され、ポルトガル陸軍が採用を検討していたがキャンセル。
かわりにヨルダン空軍やスイス空軍、新イラク軍で採用されている。
参考リンク:http://www.eurocopter.co.jp/products/ec135.html
スペックデータ
乗員 | 1名+兵員7名 |
主ローター直径 | 10.20m |
全長 | 12.16m |
胴体幅 | 2.62m |
全高 | 3.51m |
回転円盤面積 | 81.7㎡ |
空虚重量 | 1,455kg |
最大離陸重量 | 2,910kg |
エンジン | チュルボメカ アリウス2B2(推力473kW)またはP&W・C PW206Cターボシャフト(推力498kW)×2基 |
速度 (超過禁止/巡航) | 155kt/137kt |
海面上昇率 | 468m/min |
実用上昇限度 | 6,096m |
航続距離 | 342nm |
バリエーション(民間型)
- EC135P1:初期型。エンジンはPW206B1。後期型はセンターパネル・ディスプレイシステム(CPDS)を搭載。
- EC135T1:初期型。エンジンはアリウス2B1。その他仕様はP1に準ずる。
- EC135P2:エンジンをPW206Bに変更し片発停止時(OEI)の緊急出力を向上。
- EC135T2:エンジンをアリウス2B2に変更して緊急出力を向上。
- EC135P2i:エンジンをPW206B2に変更してFADECを更新。旧称EC135P2+。
- EC135T2i:アリウス2B2を改良してFADECを更新。旧称EC135T2+。
- EC135 Hermes:ファッションブランドのエルメスと共同開発したVIP機。
P2iまたはT2iをベースに、革張りの内装や特製のランディングスキッドを備える。
バリエーション(軍用型)
- EC635:軍汎用型。オプションで空気取入口にエアフィルターを追加可能。
アウトリガーを装着すればAGM-114、HOT、70mmロケット弾、機銃などで武装可能。 - TH-135:海上自衛隊向けの練習型。EC135T2iをベースに、気象レーダーやエアフィルターを備える。
EC135T2
ユーロコプター EC 135
(EC135 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/08 02:03 UTC 版)
EC135
ユーロコプター EC 135(英語: Eurocopter EC 135)は、ユーロコプター(現エアバス・ヘリコプターズ)が生産する双発の汎用ヘリコプターである。警察、救急や輸送など多目的に使用される。計器飛行に対応しており、航法訓練にも利用できる。
開発

EC 135の開発は、ユーロコプター社が構成される前に遡る。メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム(MBB)社で1980年代半ばにBo 108の名称で開発が開始されている[1]。それまでのMBB Bo 105と比較し、機内容量も拡大されている[1]。
2基のアリソン250-C20R/1ターボシャフトエンジンを備えた技術実証機('V1')は、1988年10月17日に初飛行し、2番目のBo 108 ('V2')は、1991年6月第5週に完成した。V2は、2基のチュルボメカ アリウス TM319-1Bを備えていた。この両機は、従来型のテールローターを採用した。
その後、MBBとアエロスパシアルのヘリコプター部門が合併してユーロコプター社になるのにあわせ、1992年末、テールローターにフェネストロンが採用された。これは従来のヘリコプターとは違ってヴァーチカルフィン内に回転翼が収められており、接触事故の危険性は減った。安全で静かなテールローターシステムと広々とした室内空間とが組み合わされる事により、EC 135は航空医療用途に普及した。
2機の試作機が生産され、1994年2月15日から4月16日にアリウス2B とプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社のPW206B(en)エンジンが試験された結果、古くて非力なアリソン 250エンジンは不採用となった。3機目のヘリコプターは1994年11月28日に完成した。
2014年には、テイルローター部分の設計を一新し、水平尾翼の位置を変更、メインローターブレードを低騒音のブルーエッジに交換したとみられる改良型が確認された[2][3]。
エアバス・ヘリコプターズへの社名変更に伴い、現在はH135と改称されている[4]。
運用

EC 135は、1995年1月にラスベガスのヘリエキスポでデビューした。1600飛行時間を達成したあと、1996年6月16日にヨーロッパのJAAの型式証明を、7月31日にはアメリカ連邦航空局(FAA)の型式証明を受けた。翌8月1日には機体の引渡しが始まり、ドイツ救急飛行隊に2機が納入された。
1999年6月のパリ航空ショーでは量産100号機がバイエルン州警察に引き渡された。この時点では全世界合計で3万飛行時間を越えていた。
2008年には650機以上が生産され、総飛行時間は100万時間に達している。
派生型
- EC 135 P
- プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW206B(621軸馬力)を搭載するモデル。後期型はセンターパネル・ディスプレイシステム(CPDS)を搭載する。最大離陸重量は当初2,631kgだったが、後のモデルで2,721kgに、その後さらに2,835kgへと増加された。
- EC 135 T1
- チュルボメカ アリウス2B1/2B1A/2B1A1(583軸馬力)を搭載するモデル。その他の仕様はP1に準ずる。
- EC 135 P2
- 片発停止時(OEI)出力を向上させたPW206B(621軸馬力)を搭載するモデル。P1の後継として2001年8月に生産が開始された。
- EC 135 T2
- 片発停止時(OEI)出力を向上させたアリウス2B2(652軸馬力)を搭載するモデル。T1の後継として2002年8月に生産が開始された。
- EC 135 P2+
- FADECを更新したPW206B2(667軸馬力)を搭載するモデル。最大離陸重量が2,910kgになり、オーバーホール間隔が延長されている。生産はドイツとスペインで行われている。
- EC 135 T2+
- FADECを更新したアリウス2B2(634軸馬力)を搭載するモデル。その他の仕様はP2+に準ずる。海上自衛隊がTH-135の呼称で、練習機として15機導入した[5]。
- EC 135 P2i
- P2+の販売名称を変更したモデル。
- EC 135 T2i
- T2+の販売名称を変更したモデル。
- EC 135 P3
- FADECを更新したPW206B3(708軸馬力)を搭載するモデル。最大離陸重量は2,980kgに増加した。2014年より市場導入。
- EC 135 T3
- FADECを更新したアリウス2B2プラス(660軸馬力)を搭載するモデル。それ以外の仕様はP3に準ずる。
- EC 635(en)
- EC 135の軍用モデル。内装を簡素化し、より多彩な装備や武装を搭載可能にした。ヨルダン、イラク、スイスが採用。現在はH135Mと改称されている。
- H135 ジュノー(Juno)
- イギリス軍の国防ヘリコプター飛行学校(en)に訓練用として採用された機体の名称。
-
EC 135 T1
-
グラスゴーシティ空港でのボンドヘリコプターが運用するEC 135 T2
-
北海道警察ぎんれい2号
-
東北エアサービスのEC 135 P2+
-
海上自衛隊のTH-135(EC 135 T2+)
-
スイス空軍のEC 635
運用国
軍用
ガボン - 2024年時点で、ガボン空軍が1機のH135を保有[6]。
ヨルダン - 2024年時点で、ヨルダン空軍が11機のH135Mを保有[7]。
モロッコ - 2024年時点で、モロッコ空軍が6機のH135Mを保有[8]。
日本 - 2015年時点で、海上自衛隊が練習機として15機のTH-135を保有[9]。
タイ - タイ王国空軍の練習ヘリコプターとして2020年に6機のH135を発注し、2021年から受領開始[10]。タイ王国空軍では「タイプ13」と呼ばれている[10]。
スペック(EC135 P2+/T2+)

出典: Eurocopter web site[11], Eurocopter EC135 2008 Tech Data book
諸元
- 乗員: 1名
- 定員: 最大7名または2名と患者2名
- 全長: 10.20m (33ft6in)
- 全高: 3.51m (11ft6in)
- ローター直径: 10.20m (33ft6in)
- 空虚重量: 1,455kg (3,208lb)
- 有効搭載量: 1,455kg (3,208lb)
- 最大離陸重量: 2,910kg (6,415lb)
- 動力: チュルボメカ アリウス2B2 または プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW206B ターボシャフト、アリウス 473kW/PW206 498kW (634/667軸馬力) × 2
性能
- 超過禁止速度: 259km/h=M0.21 (140knots, 161mph)
- 巡航速度: 254km/h=M0.21 (137knots, 158mph)
- 航続距離: 635km (342nm, 393mi)
- 実用上昇限度: 3,045m (10,000ft)
- 上昇率: 1,500ft/min (7.62m/s)
脚注
出典
- ^ a b 世界航空機年鑑 2007-2008 酣燈社 P310 ISBN 978-4873572703
- ^ Airbus Helicopters заподозрили в модернизации вертолета EC135
- ^ Airbus Helicopter Using German Expertise To Update Product Line
- ^ エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン株式会社 ニュース 製品名の変更について 2015年03月11日
- ^ “エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン、海上自衛隊へTH-135 2機を納入”. エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン (2015年12月16日). 2018年9月17日閲覧。
- ^ IISS 2024, p. 493.
- ^ IISS 2024, pp. 365.
- ^ IISS 2024, pp. 375–376.
- ^ “海上自衛隊、TH-135全15機の配備を完了 鹿屋航空基地で記念式典”. FlyTeam. (2015年12月5日) 2025年4月9日閲覧。
- ^ a b Alessandra Giovanzanti (2021年10月6日). “Royal Thai Air Force begins receiving H135 training helicopters”. janes.com. 2025年7月8日閲覧。
- ^ “EC135 Technical Data”. Eurocopter. 2009年7月24日閲覧。
参考文献
- The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) (英語). The Military Balance 2024. Routledge. ISBN 978-1-032-78004-7
関連項目
外部リンク
- EC135のページへのリンク