えき‐びょう〔‐ビヤウ〕【疫病】
やく‐びょう〔‐ビヤウ〕【疫病】
疫病
疫病
疫病
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/29 02:29 UTC 版)
疫病(えきびょう、やくびょう)とは、集団発生する伝染病・流行のこと。
概要
日本の歴史上、疫病として流行したと考えられているものに、痘瘡(天然痘)・麻疹(はしか)・赤痢・コレラ・インフルエンザ・癩・結核・梅毒・コロナウイルスなどがあげられる。こうした病気は元々特定の地域の風土病であったが、文明・文化・社会の発展と異世界との交流拡大による人や文物の往来に伴い、これまで同種の病が存在しなかった地域にも伝播し、中には世界的に流行するようになったと考えられている。例えば、コレラは日本では19世紀に初めて発症したとされ、それ以前には存在しなかったとされている。
『日本書紀』には崇神天皇の時代に疾疫が流行し人口の半数が失われてていたこと[1]と亀卜と沐浴斎戒を経て神託を得て大物主大神を祭ることで疫病が止み民が栄えたこと[2]が記され、『倭名類聚抄』には“疫”の字の意味について「民が皆病むなり」とある。
前近代においては疫病の原因として、荒振る神・疫神(疫病神)・疫鬼・怨霊の仕業とか仏罰・神罰によるものであるという超自然的なものに原因を求める考え方が一般的であり、平安時代ごろから全国で疫病の終息の願う加持祈祷や各種祭礼(鎮花祭・道饗祭・四角四境祭・鬼気祭・疫神祭・御霊会など)が行われていた[3]。現代でも疫病に関わる民俗・風習が各地に残っている。
一方、漢方医学の分野では天地の気の乱れや陰陽不順による邪気・寒気・悪気が毛穴や口鼻を通じて体内に侵入して生じると考えられ、鍼灸や薬によって体内の陰陽のバランスを回復させることに主眼が置かれていた。疫病の原因がはっきりとするのは19世紀後期(日本では幕末から明治)に細菌学が進歩した後のことであったが、江戸時代には病気が病人から伝染することが漢方医の間でも知られており、香月牛山の『国字医叢』の中にも中国大陸から今まで知られていなかった病気が日本に伝わってきたことや病が伝染するものであることが記されている。
政治的には朝廷が典薬寮の勘申を受けた太政官符や幕府医官の意見を受けた江戸幕府の御触書(時疫御触書)を出して、薬療・食療による治療が奨励された。
明治政府が内務省・厚生省を中心として公衆衛生の強化を図ったことで疫病の流行が減少し、神事なども行われなくなった[3]。
人類のグローバルな活動で病原体が拡散し続けていることから、疫病は今も人類への脅威であり続けているといえる。
病原体の発見
感染症のうち細菌が引き起こすものについては、19世紀後半から20世紀初頭にかけての時期に病原菌の多くが発見されている[4]。
病名 | 発見年 | 病原菌発見者 |
---|---|---|
ハンセン病 | 1875年 | アルマウェル・ハンセン(ノルウェー) |
マラリア | 1880年 | シャルル・ルイ・アルフォンス・ラヴラン(フランス) |
腸チフス | 1880年 | カール・エーベルト(ドイツ) |
結核 | 1882年 | ロベルト・コッホ(ドイツ) |
コレラ | 1883年 | ロベルト・コッホ(ドイツ) |
破傷風 | 1884年 | 北里柴三郎(日本)、アルトゥール・ニコライエル(ドイツ) |
ブルセラ症 | 1887年 | デビッド・ブルース(イギリス) |
ペスト | 1894年 | 北里柴三郎(日本)、アレクサンドル・イェルサン(フランス) |
赤痢 | 1898年 | 志賀潔(日本) |
梅毒 | 1905年 | フリッツ・シャウディン(ドイツ) |
百日咳 | 1906年 | ジュール・ボルデ(フランス) |
発疹チフス | 1909年 | シャルル・ジュール・アンリ・ニコル(フランス) |
一方、ウイルスについては理解が遅れ、存在は知られるようになったのは19世紀末から、その正体が明らかになるのは20世紀中葉になってからである。新型インフルエンザやCOVID-19のように新たに出現する疫病(新興感染症)も存在し、これからも発見が続くものと考えられる。
脚注
参考文献
- 杉田暉道「疫病」(『国史大辞典 2』(吉川弘文館、1980年) ISBN 978-4-642-00502-9)
- 立川昭二「疫病」(『日本史大事典 1』(平凡社、1992年) ISBN 978-4-582-13101-7)
- 新村拓「疫病」(『日本歴史大事典 1』(小学館、2001年) ISBN 978-4-095-23001-6)
- 蔵持不三也『ペストの文化誌-ヨーロッパの民衆と疫病-』朝日新聞社<朝日選書>、1995年8月。ISBN 4-02-259633-3
関連項目
疫病 (Rat Plague)
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「Dishonored」の記事における「疫病 (Rat Plague)」の解説
パンディシアンウシネズミによって媒介された、極めて強い感染力をもつ不治の病。物語が開始した時点においては、エリクサーの定期接種による予防は可能だが治療は不可能という状態である。現実世界のペスト(特に腺ペスト)をモデルとしている。疫病に冒された建物は"Red Cross"と呼ばれる赤い独特の印が付けられる。Red Crossは「又」の字の三角部分を塗りつぶしたような形状をしている。
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疫病
「疫病」の例文・使い方・用例・文例
- 疫病にかかる
- 睡眠時無呼吸はいくつかの疫病と強い関連性を持っている。
- 疫病神を追い払う。
- 世界的な美術品窃盗という疫病が美術館をからにしてしまった。
- 古代では疫病でたくさんの人が死んだ。
- 疫病管理局の報告では、罹患率は10パーセントだった。
- 疫病が発生した。
- たいてい、飢饉になると疫病も発生する。
- その疫病で現在までに100人もの人が亡くなった。
- その疫病が流行して何千人もの人々が死んだ。
- ロンドンの大疫病 《1664‐1665 年》.
- 猛威をふるう疫病.
- 疫病は昔は神の怒りだと考えられていた.
- 疫病はその地域に局限されていた.
- その疫病で数千の人々が倒れた.
- ただでさえ不景気なのに疫病が流行して人々を苦しめた.
- 洪水の後に続いて疫病が発生した.
- 疫病は昔は人間の罪に対する天罰だと考えられた.
- あれ以来災難続きで, とんだ疫病神にとりつかれてしまったものだ.
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