せん‐ペスト【腺ペスト】
腺ペスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/13 13:07 UTC 版)
腺ペスト | |
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腺ペストに感染した人の大腿上部にある横房。 | |
概要 | |
診療科 | 感染症 |
症状 | 発熱、頭痛、嘔吐、腫れたリンパ節[1][2] |
発症時期 | 暴露後1〜7日[1] |
原因 | ノミによって広がったエルシニアペスト[1] |
診断法 | 血液、痰、またはリンパ節の細菌を見つける[1] |
治療 | ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、ドキシサイクリンなどの抗生物質[3][4] |
頻度 | 年間650症例が報告された[1] |
死亡数・率 | 治療による死亡率10%[3] |
分類および外部参照情報 |
腺ペスト (センペスト、英語: bubonic plague) は、3種類あるペストの1種であり、ペスト菌によって発病する[1]。ヒトペストの80-90%を占める[5]。
解説
傷口や粘膜から感染し、ペスト菌に曝露してから1日~7日後に40℃程度の発熱症状や頭痛、悪寒、倦怠感、不快感、食欲不振、嘔吐、筋肉痛、疲労衰弱や精神混濁を呈する[1][5]。主な症状は発熱、頭痛、嘔吐である[1]。皮膚のペスト菌が進入した箇所から一番近いリンパ節に腫れや痛みが発生する[5][2]。場合によっては腫れたリンパ節が破裂することがあり[5]、敗血症から肺ペストに移行する。
原因と診断
三種類のペストは感染経路の違いによるものであり、それらは:腺ペスト、敗血症型ペスト、 肺ペストである[1]。腺ペストは主にペスト菌に感染したノミや小動物によって拡散される[1]。また、感染した動物の死骸の体液からも感染する[6]。腺ペストはノミによる皮膚の咬傷からペスト菌が侵入しリンパ管を通ってリンパ節に感染し、リンパ節の腫れを引き起こす[1]。診断は、血液中の細菌検査、核痰検査、リンパ節の液体検査がある[1]。
疫学
ペストの予防対策は公衆衛生の一環としてペストが一般的に診られる地域では動物の死骸には触れないようにすることである[1]。ワクチンによる予防効果は確認されていない[1]。複数の抗生物質であるストレプトマイシン、ゲンタマイシン、ドキシサイクリンが治療に効果的である[3][4]。感染し治療をしなかった場合の死亡率は30%~90%である[1][3]。一般的に死亡する場合は感染してから10日以内に死亡する[7]。治療を行った場合の死亡リスクは10%程度である[3]。世界的に年間約650の事例が報告されている内、約120人が死亡している[1]。21世紀にペストが最も多く診られる地域はアフリカである[1]。
世界的な流行
ペストは14世紀にアジア、ヨーロッパ、アフリカで流行し推定5000万人が死亡した黒死病の原因であると信じられている[1]。この流行による死者数は当時のヨーロッパ人口の約25%~60%である[1][8]。死亡者の多くは労働人口だった故、労働力需要が上がると共に労働賃金も上昇した[8]。一部の歴史学者はこの出来事を欧州経済発展の転機だとしている[8]。”bubonic”はギリシャ語の βουβών、股という意味である[9]。また"buboes"は腫れたリンパ管という意味がある[10]。
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s “Plague Fact sheet N°267” (November 2014). 24 April 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。10 May 2015閲覧。
- ^ a b “Plague Symptoms” (Jun 13, 2012). 19 August 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。Aug 21, 2015閲覧。
- ^ a b c d e “Plague”. Lancet 369 (9568): 1196–207. (2007). doi:10.1016/S0140-6736(07)60566-2. PMID 17416264.
- ^ a b “Plague Resources for Clinicians” (Jun 13, 2012). 21 August 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。Aug 21, 2015閲覧。
- ^ a b c d ペストとは 国立感染症研究所
- ^ “Plague Ecology and Transmission” (Jun 13, 2012). 22 August 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。Aug 21, 2015閲覧。
- ^ Keyes, Daniel C. (2005). Medical response to terrorism : preparedness and clinical practice. Philadelphia [u.a.]: Lippincott Williams & Wilkins. p. 74. ISBN 9780781749862
- ^ a b c “Plague History” (Jun 13, 2012). 21 August 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。Aug 21, 2015閲覧。
- ^ LeRoux, Neil (2007). Martin Luther As Comforter: Writings on Death Volume 133 of Studies in the History of Christian Traditions. BRILL. p. 247. ISBN 9789004158801
- ^ Edman, Bruce F. Eldridge, John D. (2004). Medical Entomology a Textbook on Public Health and Veterinary Problems Caused by Arthropods (Rev.. ed.). Dordrecht: Springer Netherlands. p. 390. ISBN 9789400710092
参考文献
- ペストとは 国立感染症研究所
外部リンク
- ペストおよびその他のエルシニア-感染症 MSDマニュアル プロフェッショナル版
腺ペスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 02:23 UTC 版)
腺ペストの症状としては、38-41°Cの発熱、頭痛、関節痛、吐き気や嘔吐、倦怠感などがある。処置を受けずにいると、腺ペストを患った人達の80%が8日以内に死亡する。 当時のパンデミックの記述は多様であり、不正確なものも多い。最も一般的に指摘された症状は、鼠径部、首、腋に横痃(ペスト腺腫)が現れ、開くと膿がにじみ出て流血した。以下はボッカチオの記述である。 .mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}男女ともに、鼠径部や腋に明確な腫瘍が現れて初めてそれを打ち明ける。その幾つかは普通のリンゴと同程度の大きさに育ち、他は卵ほどである...身体の上述2か所からこの致命的な腺腫はすぐに増殖を始め、満遍なく全方向に広がっていった。その後は病状が変化していき、黒い斑点や青痣が腕や太腿その他様々な部位に発現し、その時は数こそ少ないが大きかったり、微細だが沢山あったりもする。この腺腫は死が近づいている絶対確実な前兆であった。 これに急性熱と吐血が続いた。罹患者の大半が最初の感染から2-7日後に死亡した。そばかす状の斑点と発疹はノミの咬傷によって引き起こされた可能性があり、ペストの可能性があるもう一つの徴候として同定された。
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